正の整数$x, \, y, \, z$を用いて
\[ N=9z^2=x^6+y^4 \]
と表される正の整数$N$の最小値を求めよ。
問題自体はいたってシンプルですが、解いてみるとなかなか歯ごたえのある問題です。
とりあえず中核の方程式に着目しましょう。
\[ 9z^2=x^6+y^4 \cdots\star\]
左辺が$9$の倍数なので、$9$を法にした合同式で表してみると
\[0 \equiv x^6+y^4 \pmod 9\]
一旦、見やすくするために左辺と右辺の位置を変えます。
\[x^6+y^4 \equiv 0 \pmod 9\]
整数を$9$で割った余りは$0$から$8$の$9$通りありますが、大元(おおもと)の$x$と$y$について、$9$で割った余りが$0$から$8$のとき、それぞれ$x^6$と$y^4$を$9$で割った余りを調べると次の表のような結果になります。
\[
\begin{array}{|r|r||r|r|}
\hline
x\equiv 0 & x^6\equiv 0 & y\equiv 0 & y^4\equiv 0 \\ \hline
1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
2 & 1 & 2 & -2 \\ \hline
3 & 0 & 3 & 0 \\ \hline
4 & 1 & 4 & 4 \\ \hline
5 & 1 & 5 & 4 \\ \hline
6 & 0 & 6 & 0 \\ \hline
7 & 1 & 7 & -2 \\ \hline
8 & 1 & 8 & 1 \\ \hline
\end{array}
\]
この結果、$x^6+y^4 \equiv 0$とできるのは、「$x\equiv 0$または$3$または$6$」かつ「$y\equiv 0$または$3$または$6$」のときに限ります。
$9$で割った余りが$ 0$または$3$または$6$ってことは、結局、$x$や$y$自身が$3$の倍数であるってことです。(結局、最初から$\mod 3$でやっておけば、もっと楽でした。)
そこで改めて、$x=3X$、$y=3Y$($X$も$Y$も正の整数)と書き直して、冒頭の$\star$の式に代入すると
\[ 9z^2=(3X)^6+(3Y)^4
\Longleftrightarrow
9z^2=729{X}^6+81{Y}^4
\Longleftrightarrow
z^2=81{X}^6+9{Y}^4
\]
右辺の$81{X}^6+9{Y}^4$は$3$の倍数ですから、今度は$z$自身も$3$の倍数である必要があります。
そこで改めて$z=3Z$($Z$は正の整数)と書き直して、この式に代入すると
\[ (3Z)^2=81{X}^6+9{Y}^4
\Longleftrightarrow
9{Z}^2=81{X}^6+9{Y}^4
\Longleftrightarrow
{Z}^2=9{X}^6+{Y}^4
\]
\[{Z}^2=9{X}^6+{Y}^4\cdots\star\star\]
この式を満たす正の整数$X$, $Y$, $Z$を求めればよいのですが、足掛かりを掴むためにちょっと移項して、因数分解しましょう。
\[{Z}^2=9{X}^6+{Y}^4
\Longleftrightarrow
{Z}^2-9{X}^6={Y}^4
\Longleftrightarrow
({Z}-3{X}^3)({Z}+3{X}^3)={Y}^4
\]
強引ですが、仮に$Y$が素数だと仮定すると、$({Z}-3{X}^3)({Z}+3{X}^3)={1}\times{Y}^4$か$({Z}-3{X}^3)({Z}+3{X}^3)={Y}\times{Y}^3$
\[
\left\{
\begin{array}{l}
{Z}-3{X}^3=1\\
{Z}+3{X}^3={Y}^4
\end{array}\right.
\makebox{または}
\left\{
\begin{array}{l}
{Z}-3{X}^3={Y}\\
{Z}+3{X}^3={Y}^3
\end{array}\right.
\]
辺々、下から上を引くと
\[
6{X}^3={Y}^4-1\makebox{または}6{X}^3={Y}^3-{Y}
\]
仮に同じ$Y$の値だとして、後者の方が$X$の値が小さくて済みます。$N=(3X)^6+(3Y)^4$も小さくて済みます。とりあえず後者$6{X}^3={Y}^3-{Y}$で探しましょう。
\[6{X}^3={Y}^3-{Y}
\Longleftrightarrow
6{X}^3={Y}({Y}^2-1)
\Longleftrightarrow
6{X}^3=({Y}-1){Y}({Y}+1)
\]
はっと、ここで閃きます! 右辺の$({Y}-1){Y}({Y}+1)$って「連続する$3$つの自然数の積」です。つまり$6$の倍数です。しかも、最小になるのは$({Y}-1){Y}({Y}+1)=1\times 2 \times 3=6$になる$Y=2$ときで、
そのときの$X$の値も最小の$X=1$。
$Y=2$は最小の素数です。結局、数行上の強引に見えた仮定が功を奏しました。これより小さい$Y$延いては$X$も望めないので、
これが最小の$N$を与える$X$と$Y$です。このとき
\[{Z}^2=9\times{1}^6+{2}^4\Longleftrightarrow
{Z}^2=9+16
\Longleftrightarrow
{Z}^2=25\]
から$Z=5$も求まって結局
\[X=1\mbox{,}Y=2\mbox{,}Z=5
\Longrightarrow
x=3\mbox{,}y=6\mbox{,}z=15
\Longrightarrow
N=9\times 15^2=9\times 225=2025
\]
なんと今年の西暦$N=2025$が正解でした。
ちなみに、捜査対象から外れた$6{X}^3={Y}^4-1$のパターンは、$W={Y}^2$とした$6{X}^3={W}^2-1$でさえ、$X=2$, $W=7$しか正の整数解がないことが示せますので、$X$, $Y$としては正の整数解はありません。
結局$9z^2=x^6+y^4 \cdots\star$も${Z}^2=9{X}^6+{Y}^4\cdots\star\star$も似たような式ですが、前者のまま同様の変形(移項して因数分解)を進めた後、$(3z-x^3)(3z+x^3)=y^4$の右辺を$(3z-x^3)(3z+x^3)=3y\times\df{y^3}{3}$と見抜く眼力が必要で、これはちょっと無理があります。
執筆:目時先生(JUKEN9月号掲載)