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イスラエルの歴史(1)

これから暫く「イスラエルの歴史」について書く。「古典古代(ギリシャ・ローマ)」と「キリスト教」は、欧米世界の二本の柱だ。さらに昨今の中東情勢の激変に伴い、大学受験でも英語や世界史、小論文など、中東情勢を絡めた出題は当然予想される。世界に出て恥をかかないためにも、最低限の知識は蓄えておいた方がいいだろう。

古代ユダヤ人と現代ユダヤ人

エジプトの首都カイロでアラブ人のチンピラ十数人とストリート・ファイトを演じた筆者は、翌日傷だらけの体を引きずって長距離バスに飛び乗った。目指すはイスラエル。モーゼと古代イスラエルの民60万が目指した「約束の地・乳と蜜の流れる土地」である。「トンネルを抜けるとそこは雪国だった…」ならぬ「国境を越えるとそこは楽園だった」。アラブの真ん中に、なぜかヨーロッパがぽっかり浮いていた。だがちょっと様子がおかしい。ユダヤ人の顔つきが、どう見ても「北欧系」なのだ。「ユダヤ人とアラブ人は兄弟」である。こんなに皮膚の色や顔つきが違うのは、明らかに変なのだ。「現代ユダヤ人と古代ユダヤ人は別民族」という説を知ったのは、ずっと後のことである。9世紀に黒海の北、現在のウクライナあたりに「ハザール王国」というのがあった。南のイスラム帝国(アッバス朝)と西のビザンツ(東ローマ)帝国に挟まれて、苦しい立場にあった。「キリスト教に改宗せよ!」「いやイスラム教だ…!」と迫られ、国王の出した結論は、「じゃあユダヤ教にしまーす!」だったのだ。ユダヤ教からキリスト教が生まれ、イスラム教も生まれた。ユダヤ教は彼らの「親分」だ。文句は言えない。さらに「ユダヤ人の定義」の問題がある。「ユダヤ人」の定義とは、「ユダヤ教徒であること」だ。「ユダヤ教に改宗」すれば、あなたも今日から「ユダヤ人」になれるのだ。無論かなり高いハードルがあるが、理論的には可能である。もう一つの定義が「母親がユダヤ人であること」なのだがここでは深入りしない。いずれにしても、彼らハザール人が現代ユダヤ人になったと考えれば、筆者の感じた違和感も解消される。では古代ユダヤ人はどうなったのか? ローマ帝国に滅ぼされた(A.D.135)後、世界中に離散(ディアスポラ)。帰還した(1948)ものの、パレスチナ人(イスラエル在住のアラブ人)の中に混血してしまったと考えられる。何しろ同じ民族だ。全く見分けがつかない。無論アカデミズムは猛反発。「そんなの陰謀論だー! 遺伝子調査でちゃんと証明されてるんだー(この『調査』が曲者)!」と叫ぶ。諸君らはどう思われるだろう? 筆者は若き日に感じたあの強烈な違和感を、今でも拭えないでいる。

系図

聖書は「アダム」に始まり、古代イスラエル人の系譜を記録した書物。そして最後は「イエス・キリスト」にまでつながっている。以下ざっと主要人物と出来事を列挙する。誰でも一度は耳にしたことがあるはずだ。「天地創造」⇒「アダム(失楽園)」⇒「人類の堕落と神の怒り」⇒「ノア(大洪水)」⇒「セム・ハム・ヤぺテ(3人種の祖)」⇒「バベルの塔(言語がバラバラ)」⇒「アブラハム(神との契約)」⇒「イサク(アラブとイスラエル分岐)」⇒「ヤコブ(イスラエル12支族誕生)」⇒「ヨセフ(エジプト移住)」⇒「エジプトでの奴隷化」⇒「モーゼ(出エジプト・十戒)」⇒「ヨシュア(カナンに帰還)」⇒「ダビデ(王の誕生)」⇒「ソロモン(栄華を極める)」⇒「王国の分裂・滅亡」⇒「バビロン捕囚と帰還」⇒「ローマ帝国の属州に」⇒「イエス登場」

エルサレムを聖地とする三大宗教

エルサレムは「ユダヤ教」「キリスト教」「イスラム教」の聖地だが、この三者は「兄弟(親子?)宗教」である。まずユダヤ教が生まれる。これが腐敗すると内部から「宗教改革」が起こり、キリスト教が誕生する。従ってイエスはユダヤ人でありユダヤ教徒。ユダヤ教における「マーチン・ルター」だ。だがユダヤ人から見れば彼は「裏切者」。従って今でもイエスを「メシア(救世主:Χριστος[クリストス]<希>、Messiah[メサイア]<英>)」とは認めていない。映画「Deep Impact」に登場する宇宙船「メサイア」も、これである。いずれにしても、彼らにとって「イエス」は「キリスト」ではなく、単なる「ナザレのイエス」、「大工ヨセフの子イエス」に過ぎない。さてこのキリスト教も腐敗すると、これを批判する形でイスラム教が登場する。従ってイスラム教の聖典「コーラン」では、イエスも神ではないものの、「イース(イーサ)」として登場し「優れた預言者」として尊敬されている。つまり「折角イースが素晴らしい教えを残してくれたのに、キリスト教徒の馬鹿者どもがー!」と言うのだ。一方「モーゼ」は「ムーサ」として登場する。ジュベル・ムーサはアラビア語で「モーゼの山」。即ち「シナイ山」のことだ。モーゼが神から「十戒」を授かった場所である。将来チャンスがあったら是非登って欲しい。シナイ砂漠の中央に位置して不便だが、その分来訪客は敬虔なクリスチャンが中心だ。麓のセント・カタリーナ修道院に宿泊できるから心配ない(予約不要)。ベッドも食事も質素だが、古代の修道士たちの生活を偲ぶことができる。いずれにせよ、彼らは決して憎しみ合う関係ではない。事実中東一帯を600年の長きにわたって支配した「オスマン・トルコ帝国」内では、彼らは仲良く暮らしていたではないか。中東の戦火を「彼らは二千年間、これを続けてきたんですー!」などと評する専門家がいる。バカも休み休み言って欲しい。中東がおかしくなったのは「第一次世界大戦(1914-18)」からである。「フサイン・マクマホン協定(1915)」「サイクス・ピコ協定(1916)」「バルフォア宣言(1917)」という、所謂(いわゆる)イギリスの「三枚舌外交」だ。そして1948年の「イスラエル建国」で亀裂は決定的になる。この3大宗教に共通の聖典が「旧約聖書」だ。ユダヤ教ではこれに「タルムード(実はこいつが相当ヤバい代物)」が、キリスト教には「新約聖書」が、イスラム教には「コーラン」が加わる。故にイスラム教徒はキリスト教徒・ユダヤ教徒を「啓典の民(聖典を共有する人々)」と呼ぶ。「旧約聖書」は「キリスト以前」。「新約聖書」は「キリスト以降」だ。

イスラエル人とアラブ人

両者は「兄弟」である。イスラエル人の祖が「イサク(יִצְחָק『彼は笑う』が原義)」。アラブ人の祖が「イシュマエル(יִשְׁמָעֵאל『主は聞き入れる』が原義)」。父親の名は「アブラハム」。アブラハムと正妻サラの間には子供がなかった。そこでサラは側室(ハガル)を娶ることを薦める。そして生まれたのが「イシュマエル」だ。しかしその後サラにも「イサク」が生まれる。典型的な「お家騒動」のパターンだ。イシュマエルと母ハガルは砂漠に追放される。「しかし彼らの頭上にも、神の栄光は輝いた…」と旧約聖書・創世記は語る。このイシュマエルがアラブ人の祖となり、やがて「ムハンマド(マホメット)」と「イスラム教」を生み出すのだ。一方イサクの子「ヤコブ」から「イスラエル12支族」が生まれる。故に「イスラエル人とアラブ人は兄弟」なのだ。トランプ大統領仲介になる「アブラハム合意(2020)」の、「アブラハム」たる所以(ゆえん)がここにある。

ユダヤとイスラエル

イサクの子・ヤコブは「イスラエル」と名を変える。天使と格闘して勝ち(これが『相撲』の起源)、「神に勝ったのだから、これからはイスラエルと名乗りなさい」と言われたからだ。「サラ(שָׂרָה)」は「争う」。「エル(אֵל)」は「神」。「ヤ(יַ)」は主語が「三人称単数男性」の際、動詞に付ける接頭辞(「三単現のS」のようなもの)だ。「ヤ・サラ・エル」⇒「イスラエル(יִשְׂרָאֵל)」となった(『彼は神と争う』が原義・ヘブライ語の母音は千変万化)。彼は12人の息子に恵まれ、各々「イスラエル12支族」の祖となった。「ルベン」「シメオン」「レビ」「ユダ」「ダン」「ナフタリ」「ガド」「アシェル」「ゼブルン」「イッサカル」「ヨセフ」「ベンヤミン」[生誕順]である。その後レビ族は「祭祀担当」となり12支族を抜ける。「モーゼ」はこのレビ族の出身だ。その穴を埋める形でヨセフの子「マナセ」と「エフライム」が加わる。「ダビデ」「ソロモン」のもとで栄華を極めた後、イスラエルは「北イスラエル王国(10支族)」と「南ユダ王国(2支族・ユダとベンヤミン)」に分裂、「アッシリア」と「新バビロニア(カルデア)」にそれぞれ征服される。南ユダ王国の人々はバビロンに連行され辛酸を舐める(バビロン捕囚586B.C.~538B.C.)ものの、「アケメネス朝ペルシャ」の「キュロス2世」により解放され帰国する。だがアッシリアに連行された人々(アッシリア捕囚)は、アッシリア滅亡後も帰国した形跡がない。歴史の闇の彼方に消えてしまったのだ。これを「失われた10支族(Lost Ten Tribes)」と呼ぶ。つまり現在のイスラエルには、ユダとベンヤミンしかいないのだ。故にこの二者の名前だけが現代に残る。「ユダヤ(Iudaia[ユーダイア]<羅>)」の呼称もここに由来する。現在の国名も、本来なら「ユダ国(ユダヤ国)」とすべきだが、まさかイエスを売った男の名を国名とするわけにもいかず、「イスラエル国(State of Israel)」としているわけだ。キュロス2世は旧約聖書中にも「クロス王」として登場する。ペルシャ(イラン)は大恩人のハズである。足を向けては寝られないはずが、今回のこのイスラエルの仕打ちは何であろう。彼らは本当にユダヤ人なのか?因みにダビデもユダ族。イエスは「ダビデの子孫」ということになっているから無論ユダ族だ。

執筆:鈴木先生

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