そろそろ高3になって最初の模試の結果がお手元に返却される時期だと思います。希望に胸膨らませているはずの受験生諸君を出迎えたものは、おそらく「E判定のオンパレード」であったはず。しかし落胆するには及びません。敗北の原因は「浪人生の参戦」です。高2までと違って、今回からは1年先輩たちとやりあわないといけません。英数ならばいざ知らず、理社はまだまだ勝負になりませんからE判定は「当然」です。D判定で「大喜び」。A判定なら「そんな大学行ってもしょうがないですよ!」ということです。

英語ができるようになる方法...単語編②:決して忘れないために...

「一気に閾値(しきいち)を越えてしまえ!」というのが前号までの結論でした。「重力圏を振り切ってしまえ!」とも...。そのために必要なのは「毎日10分」の原則です。人間は記憶したと思っても次の瞬間から忘れ始めます。そこで翌日間髪を入れず「畳み掛ける」わけです。これを何日も繰り返してゆくうちにやがて「大気圏を離脱」できます。こう言うと「毎日なんて無理!こう見えても色々忙しいの!」という声が聞こえてきそうです。しかし「10分の時間すら取れない」など、到底信じられるものではありません。「時間がない」は「言い訳」にしか過ぎないのです。相手はたかだか「単語の暗記」ですから10分でも集中すれば十分効果的ですし、実際に始めれば10分でテキストを閉じる受験生はいないでしょう。要は「とっかかり」の問題です。実際英語のできる生徒さんに聞いてみると、単語の暗記や読解問題などはバスや電車の中でほとんど済ませているようです。雑音といえば車内のアナウンスくらいですから、勉強には願ってもない環境といえるでしょう。「先生はどうせ頭がいいからそんなことが言えるのよ!」というのもよく聞く反論です。そこで私事で恐縮ですが、筆者の体験を述べさせていただこうと思います。「頭がいい」などとんでもない誤解であることがお分かりいただけるはずです。

かれこれ7~8年も昔になるでしょうか。ひょんなことからラテン語を勉強しようと思いたちました。大学時代に一度やろうとしたのですが、結局海外への旅に明け暮れて機会を逸してしまったものです。用いたテキストの名前は何と「ラテン語四週間!」。随分ふっかけたものです。一日12時間くらいやれば確かに1ヶ月で終わる計算ですが...。しかしいざ始めてみるとまったく先へ進みません。覚えるそばからどんどん忘れてゆくのです。開いたページに全く心当たりがないのに自分自身の字で何やら書き込みがあるのですからこれ以上不気味な体験はありません。ちょっとした「怪談」です。「ひょっとして脳に障害でも...」と考えると背筋が寒くなったこともありました。しかし毎日の生活では何の異状も見られないのですから、原因が「ラテン語四週間」にあることは明らかでした。そこで学生時代の英語の勉強法と比較して相違点を考えました。「毎日やること」という結論に至るのに、さして時間はかかりませんでした。それまでは仕事の多忙を理由に1週間、下手すると2週間もの間隔を空けていたのです。これでは新しい言語など覚えられる道理はありません。あとは「毎日10分」の原則を適応するだけでした。会社までは特急でも30分。往復で1時間の勉強時間はそれこそお釣りがくるほどでした。やがてにっちもさっちもいかなかった暗記作業は除々に前へと進み始め、テキストを無事終了(とは言え丸1年は優に要しましたが...)。3年後にはユリウス・カエサルの名著「ガリア戦記」を、辞書を片手に四苦八苦しながらも読み進んでいけるようになりました。現在は「古代ギリシャ語」を格闘中です。ラテン語が子供だましに思えるほどの奇怪至極な言語(サンスクリット語・日本語とともに世界三大難解言語と称されるとか...)ですが、ここでも「毎日10分」の原則が大いに助けになっていることは言うまでもありません。「単語を覚えられない人」・「覚えてもすぐに忘れてしまう人」は、是非トライしてみてください。効果絶大です。因みに「発音しながら覚えること」を最後に付け加えておきます。音声機器とともに育った受験生諸君に対しては「釈迦に説法か...」とも思いますが。

英語ができるようになる方法...単語編③:難解そうな単語ほど覚えやすい!

毎日10分」が単語暗記の原則であることはすでに述べたとおりです。しかしそれだけでは対処しきれない「ある壁」が存在することもまた確かです。人と人との間に「相性」があるように、人と単語との相性も厳として存在します。「あの単語は一発で覚えたのに、この単語は何度やっても...」というやつです。そこで「論理的に覚える・意味付けして覚える」という工夫が必要となってきます。いわゆる「語源を遡って覚える」方法です。たとえばcompany「カンパニー(仲間・会社)」という単語があります。これを「魚をさばく」要領で、頭と尻尾を切り落とすとpan「パン」という単語が見えてきます。「アンパンマン」のあの「パン」です。「パン」はれっきとしたラテン語です。また頭の部分に当たるcomはやはりラテン語のcum「クム(~と一緒に)= with」に由来します。最後のy「イー」はラテン語の名詞の屈折(格変化)語尾ですからあまり気にしなくていいでしょう。つまり「一緒にパンを食べて頑張った仲間」」がカンパニーの原義です。「仲間」が集まって作ったのが「会社」。まさに「同じ釜の飯を食った仲間」、「亀山社中」、「海援隊」です。ですから会社は会社でもcompanyは「会社組織」を意味します。「建物」を指すのであればofficeがいいでしょう。詳しくは拙著「ターゲット1900の暗記を楽しむ人のために...」「医歯薬系英単語の暗記を楽しむ人のために...」に譲りたいと思いますが、「ターゲット1900」中の「スペルの長い単語」・「難解そうに見える単語」はそのほとんどがラテン語・ギリシャ語由来でした。語源不明のものもありましたがその数はごく僅かだったと記憶しています。この方法をマスターしてしまえば怖い単語が存在しなくなるのみならず、知らない単語に出会うと嬉しくなってきます。大学入試では未知の単語が出題されることも珍しくありませんし、注釈が付くとも限りません。そんな時でもギブ・アップは禁物。精一杯類推能力を駆使して難局を乗り切らなくてはなりません。そういったときにこの手法は、何がしかの指針を受験生諸君に与えてくれるでしょう。


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