私立大学入試制度
私立大学は1つの大学・学部に複数の受験方式が存在する場合が多く、従来の3教科型に加え、2教科だけで受験できる方式や、特定の科目の配点を高く設定する方式(受験生が得意教科を生かせる)、センター試験を利用して受験する方式などがあります。学内併願ができるよう入試日をたくさん設けている大学・学部も増えています。
複雑に見える現在の私立大入試ですが、選抜方法は大きくわけると
- 大学独自の試験で選抜
- センター試験で選抜
- センター試験と個別試験の結果を総合して選抜
受験科目数について
多くの私立大では3教科型の他1、2教科型など多様な入試方式による選抜を実施しています。受験生の中には「勉強の負担が少ないから」と1、2教科型の入試に注目する人もいますが、この方式を採用する大学だけを受験するとなると、競争率が高くなるうえ進路の選択肢が少なくなることもあります。私立大志望といえども高1・2のうちは5教科型の学習をベースとし、安易に教科を切り捨てないことが良策でしょう。志望大がはっきりと決まれば、私立大入試では一般的な3教科型に合わせた対策を、高3秋からは志望大の出題傾向に合わせた対策へとシフトしていくことになります。
英語長文問題は常に入試英語の首座を占めてきました。英語は理数系・文科系いずれにおいても重視されており他教科に比べて配点も高い場合が多く、英語の長文問題の出来は入試の合否に大きな影響を与えます。特に難関大である早慶上智の英語では長文問題の攻略が不可欠です。膨大な量の英文を素早く読むことが求められます。また、速読力とともに設問に手際よく答える力も要求されます。問題量に対しての制限時間が十分とはいえず、全文を丁寧に読んでいては時間切れになってしまうかもしれません。できる限り無駄を省き、短時間で確実に解く方法を身につけておくことが求められます。早慶の長文問題の最近の特徴として以下の3点が挙げられます。
テーマの多様性
現在の大学で扱う諸問題が極めて今日的であることを反映して、大学入試で出題される英語長文問題のテーマは極めて多岐にわたります。環境論やゲノム(遺伝子)論、携帯電話、思考法そしてビジネスモデルに至るまでありとあらゆる話題が取り上げられています。茗渓予備校の指導の中でも、代表的なテーマに関しては過去問や長文読解テキストの演習を行うことで一通り慣れてもらうようにしています。また、日頃からTVニュースや報道番組、新聞等で現代社会の諸問題の背景を知っておくようにとアドバイスもしています。しかし、決め手となるのはやはり英語力です。あまり馴染みのない話題が扱われたとしても、文章を素早くきちんと理解する英語力(語彙力・文法力・読解力)を身につけることが最も重要でしょう。早慶上智の入学試験の語彙・文法は英検準1級レベルとほぼ同等です。英検準1級の語彙は短大卒業レベルとされているので、高校生にとってはかなりの難関レベルと言えます。
出題形式の多様性
早慶では一部の学部を除き、①内容真偽問題、②内容一致完成問題、③語句空所補充問題、④1~3の複合総合問題、⑤1,000語を超える超長文問題1~2問がほぼ例年共通した出題形式です。設問も英文で書かれている学部もあります(早稲田政経、理工、慶応法など)。ちなみに早慶と並ぶ難関大学である上智大学は、早慶のような「超長文」はまず出題されません。ストレートに文法・語彙熟語の知識を問う出題がされます。また、内容一致の選択肢が紛らわしくない問題も多いです。しかし、出題される英文のトピックは特殊なもの(詩やこなれたエッセイ、ドラマの脚本など)や、口語的な表現(これは帰国子女の生徒さんが有利です)を問われることも多いので注意が必要です。
文章の長文化
前回、国公立大入試についてお話しした中でも、文章の長大化について触れました。従来の書籍・新聞だけでなくインターネットによる情報が多くを占めるようになってきたことと、様々な業種において海外との交信・打ち合わせが英語で行われるケースが格段に増えてきたこと、またプレゼンテーションの場において英文資料をもとに進める必要性が高まってきていること、こうした実社会での変化や要請を受けて、大学で身につけるべきものとして一般教養と専門知識だけでなく実務的コミュニケーション能力が加わってきているものと考えられます。
まとめ
センター試験や国公立2次試験と比べると、早慶上智の英語問題量は総じて多く、長文を一字一句読んでいると時間切れになってしまうかもしれません。文章のポイントを全体の流れの中で的確に判断する速読力・情報処理能力をしっかり練習して身につけておく必要があるでしょう。ただし質問に精読を要するものが含まれている場合もあります。ですから全体は速読法で大事なポイントを浮かび上がらせ、設問がらみの部分は精読法で処理するという複合的な読み方も必要になります。