三省堂Crown Communication I
①仮定法過去「もし〜なら...だろうに」
現在の事実と反対のことを仮定する。形は過去形だが、現在のことを表す。
- How would you feel if these were photos of your own family?
- If I knew her number, I would phone her.
- I wish I were there with you.
- She is crying as if she were a little baby.
まず最初にif条件文の形の仮定法(過去)を習い、直接法と比較して違いを確認する、というのが定番です。
- 仮定法:If it were fine today, we would go on a picnic.
- 直接法:If it is fine tomorrow, we will go on a picnic.
その後に、仮定法現在という表現を学びます。ここに来て「...ん?」と少し戸惑うことになるわけです。
三省堂Crown Communication II
①仮定法現在:提案・要求・命令を表す動詞+that節
that節の中は動詞は原形(仮定法現在)。shouldを使う場合もある。
- Benyus suggests that we put what is good for the whole earth first.
- Our leader requested that we (should) work together.
- We insist that the problem (should) be solved immediately.
- The rule requires that this form (should) be written in English.
「現実とは異なる仮の話」という、何かを仮定するような要素が仮定法現在の文には見当たらず、「なんでこれも『仮定法』の分類に入るのだろう?」と不思議に感じる人も少なくないのではないかと思います。
仮定法は、英語で「subjunctive mood」と言います。
Longman Dictionary of Contemporary English
subjunctive:a verb form or a set of verb forms in grammar, used in some languages to express doubt, wishes etc. For example, in 'if I were you', the verb 'to be' is in the subjunctive.
mood:one of the sets of verb forms in grammar: the indicative (=expressing a fact or action), the imperative (=expressing a command), the interrogative (=expressing a question), or the subjunctive (=expressing a doubt or wish).
ブリタニカ国際大百科事典
法:文法範疇の一つ。定動詞の語形替変として現れ、文の内容に対する話者の心的態度を示す。ギリシア語などの古典文法に由来する概念で、たとえばギリシア語には、直説法、接続法、希求法、命令法の4つの法があった。近代のインド=ヨーロッパ語族の諸言語では、動詞の活用組織が簡略になったり、助動詞を用いる分析的表現が多くなったりして、動詞の替変形から定義されるものとは必ずしもいえない言語もある。たとえば、英語ではI am rich.は事実として述べる形で直説法、If I were rich! は非現実のことを想像していて仮定法、Be rich.は命令法と説かれる。
つまり、仮定法の要諦は、単にif節を用いて「仮」の話をすることではなくて、①動詞を語形変化させて、②ある事柄を、事実としてではなく、想像・仮定・願望などの心的態度を表すこととして述べるということなわけです。仮定法は純粋に仮定の話をする際にも用いられますが、多くの場合、願望などの心的態度が介在した上での「現実とは異なる仮の話」になります。
動詞の形態が「仮定形(subjunctive form、または非現実形、irrealis form)」になった文が、仮定法の文になります。仮定法過去における「仮定形」は過去形とほぼ同じ、仮定法現在における仮定形は現在形または原形不定詞とほぼ同じになります。いずれも形がほぼ同じになるだけで、これらは仮定形であって厳密には過去形でも現在形でも原形不定詞でもありません。英語という言語においては独立した「仮定形」が存在しないため、このようなことになっているわけです(主語が三人称単数の場合のbe動詞などは純粋な仮定形になります。例:「I suggest that he be removed.(現在形はis)」「If he were rich....(過去形はwas)」)。
「仮定法...」の後に続く「...過去」「...過去完了」「...現在」などの呼称は、動詞の形態を表しています。だから未来形の存在しない英語では、仮定法未来は存在しません。
三省堂Crown Communication II
③未来に関する仮定法:if S were to 〜「仮に〜するならば」/if S should 〜「万一〜するようなことがあれば」
were to 〜は単なる仮定や実現性の極めて低いことがらについて使う。should〜は実現性が低いことがらについて使う。
- If we were to live in harmony with nature, could we maintain our comfortable way of living?
- If I were to live again, I would like to be a singer.
- If it should rain tomorrow, there will be no baseball game.
- If the project should fail, what would happen to the company?
ただ上のような仮定法の分類を示す簡潔な用語がないので、「仮定法『未来』」という語が便宜上使われることが偶(たま)にあります。(wereはbe動詞の過去形、shouldはshallの過去形なので、文法上の分類ではいずれも仮定法過去になります。)
ちなみに英語で単に「subjunctive」と言う場合、もっぱら仮定法現在の方を意味することが多かったりします。「仮定法過去」の方は、英語で書かれた文法書や教科書では、単に実現可能性が低い類のif条件文(remote conditional)という扱いになっていたりします。
英語のsubjunctiveは古代ギリシャ語の「hypotaktike enklisis」から来ています。これは英語だと「subordinated」を意味します。ギリシャ語で仮定法がほぼ従属節内(subordinate clause)でのみしか使われないからこの名前がついたようです。これを直訳すれば「仮定法」は「従属法」ということになりますが...これもまぁあまり良い呼称ではないですかね。
Online Etymology Dictionary
subjunctive (n.)
"mood employed to denote an action or state as conceived and not as a fact," 1620s, from earlier adjectival use of subjunctive (1520s), from Late Latin subiunctivus "serving to join, connecting," from subiunct-, past participle stem of Latin subiungere "to append, add at the end, place under," from sub "under" (see sub-) + iungere "to join together" (from nasalized form of PIE root *yeug- "to join"). The Latin modus subiunctivus probably is a loan-translation by the grammarians of Greek hypotaktike enklisis "subordinated," so called because the Greek subjunctive mood is used almost exclusively in subordinate clauses.
叙想法