前回からの続き...2年以上前なので何の続きかすっかり忘れてしまいましたが)

SVOCのCは、厳密には「predicative complement(叙述補)」と言います。素の「complement(補)」は、叙述補語以外にも各種節や句を構成するのに必須の要素(例えば「前置詞の目的語(「with him」のhim)」なども一種のcomplementです)をも包含するため、その他complementと区別するためにそう呼ばれます(日本語の場合「補」と「補」で使い分けられるようですが)。

叙述補語(C)は、文の主語(S)や目的語(O)に付与された属性を表す、つまりそれがどんなものであるかを「叙述」するものです。

[A] predicative complement characteristically denotes a property that is ascribed to the referent of the subject or object.

(CaGEL, p. 53)


主格(叙述)補語(subjective predicative complement)の場合、主語になっている名詞の属性を表します(例:「Mary is pretty.」)。目的格(叙述)補語(objective predicative complement)の場合、目的語になっている名詞の属性を表す形になります(例:「Tom made Mary happy.」)。

基本、叙述補語は形容詞句または名詞句(例:「Mary is a doctor.」)になります。形容詞句や名詞句ではないけれども、Vの構成要素として必須になる副詞句(例:「I have been in the garden all the time since lunch.」「You must put all the toys upstairs immediately.」)は、「副詞的補語(adverbial complement、A)」または「前置詞句補語(pp complement)」として別分類にされることもあります。

叙述補語がなぜ「叙述補語(predicative complement)」と呼ばれるかと言うと、意味的(semantically)に「述語(predicate)」と同等だからです。例えば「Heis a good speaker.」と「He speaks well.」は、動詞以降の意味がほぼ同じです。

[A]lthough a good speaker is syntactically an NP (名詞句) complement, it is semantically comparable to a predicate like spoke well. This is the basis for the term 'predicative complement': the complement typically represents what is predi­cated of the subject-referent in a way that is similar to that in which a whole predicate does.

(A Student's Introduction to English Grammar, pp. 73-74)


ということで、SVOCの文のOとCに当たる語は主述の関係にあり、それぞれ取り出して文を作ることもできます(例:「Tom made Mary happy.」→「Mary was happy.」)⋯が、ややこしいことに、実はVの後に来る2語間において主述の関係が成立しうるものが全て「SVOC」の文型になるわけではないようです。

QuirkのCGELの場合

Quirkの『Comprehensive Grammar of the English Language』(1985年)では以下のように分類しています(2002年の『Cambridge Grammar of the English Language』の解説はその後に見ていきます):


  • SVO(O=to不定詞)
    They want us to help.(彼らは私たちに助けて欲しい。)
  • SVO(O=現在分詞)
    I hate the children quarrelling.(私は子供たちが口論しているのが嫌いだ。)
  • SVOC(C=to不定詞)
    They knew him to be a spy.(彼らは彼がスパイだと知っていた。)
    My contract allows me to take one month's leave.(私の雇用契約は私が1ヶ月の休暇を取ることを許している。)
  • SVOC(C=原形不定詞)
    I saw her leave the room.(私が彼女がその部屋を去るのを見た。)
  • SVOC(C=現在分詞)
    I heard someone shouting.(私は誰かが叫んでいるのを聞いた。)
  • SVOC(C=過去分詞)
    I got the watch repaired.(私はその腕時計を直してもらった)
  • SVOO(O=to不定詞)
    I advised Mark to see a doctor.(私はマークに医者に行くことを勧めた)
(CGEL, p. 1171)

知覚動詞や使役動詞がSVOCの文型を取るという記述は日本の英語参考書でもよく見かけます。いずれも原形不定詞をCに取ることができますが、であれば目的語の後にto不定詞を取る他の動詞wantやadviseも同文型でいいような気がします...が、残念ながらそのような類推は成立しないようです。上述の通り、不定詞を含む文形はSVO、SVOC、SVOOの3パターンあります。あらためてto不定詞を用いるもののみ取り上げると:


  • SVO(O=to不定詞):We like all parents to visit the school.
  • SVOC(C=to不定詞):They expected James to win the race.
  • SVOO(O=to不定詞):We asked the students to attend a lecture.
(CGEL, p. 1216)

という構造になります。

SVO(O=to不定詞)

SVOの場合、不定詞句の前にある名詞句は、不定詞句の動詞の意味上の主語になっています。例えば「I want you to study English.」であれば、studyをするのはyouです。そして「you to study English(あなたが英語を勉強すること)」全体がOになります。youの無い「I want to study English.」であれば「to study English」はOですから、まぁわからなくはありません。動名詞で書けば、所有格で意味上の主語を表して「your studying English」になりますし(無論、この文においては直接動名詞に書き換えはできませんが)。 youが単独ではOにならないのは、この文を受動態にすることができないことからも分かります:
  • × You are not wanted to study English by me.
この形を取る動詞は、好き、または欲することを意味する(can't) bear、desire、hate、like、love、prefer、want、wishなどの少数に限られます。これらの動詞はそもそも目的語を一つしかとらない「単一他動詞(monotransitive verb)」でもあります。preferの場合、前置詞forで意味上の主語を表すことができます:
  • Jack prefers his wife to drive the truck.
  • Jack prefers for his wife to drive the truck.
(CGEL, p. 1193)

このことからも、SVOの文型であることがわかります。

SVOC(C=to不定詞)

SVOC(C=to不定詞)の形は、以下の動詞が取ることができます:
  1. announce, declare, proclaim, pronounce, report, repute, rumour, say, tip
  2. assume, believe, conceive,consider, expect, feel, find, imagine, know, presume, reckon, see, suppose, take, think, understand
  3. intend, mean
  4. appoint, elect, name, vote
  5. cause, drive, force, get, lead, prompt
  6. allow, authorize, compel, constrain, enable, entitle, equip, fit, oblige, permit, require
  7. assist, bother, bribe, condemn, dare, defy, encourage, help, induce, inspire, press, summon
これらの動詞は、全てではありませんが、受動態やthat節を用いた文に書き換えることができます:
  1. John believed the stranger to be a policeman.
  2. John believed that the stranger was a policeman.
  3. The stranger was believed to be a policeman.
動詞sayなどの場合は、受動態の形のみが可能です:
  • ○ The field marshal was said to be planning a new strategy.
  • × Someone said the field marshal to be planning a new strategy.
「John believed the stranger to be a policeman.」という文において、the strangerは不定詞句内の動詞beの意味上(semantically)の主語ですが、構文的(syntactically)には主節の動詞believeの目的語にもなっています。このように、内包する不定動詞「節」内(不定詞句や分詞句は厳密には「節」扱いになります)の主語を主節の目的語に持ってくることを「繰り上げ(raising)」と言います。これは原形不定詞や現在分詞、過去分詞と共に用いる使役動詞や知覚動詞についても同様になります。

SVOO(O=to不定詞)

SVOO(O=to不定詞)の形は、以下の動詞が取ることができます:
  1. advise, command, entreat, instruct, remind, teach, ask, counsel, exhort, invite, request, tell, beg, detail, forbid, order, recommend, urge, beseech, direct, implore, persuade, challenge, enjoin, incite, pray
いずれも目的語を二つとる「二重他動詞(ditransitive verb)」になります。この文型も上述の2つ同様、動詞の後ろに「人を表す名詞」と不定詞句の2つが続きますが、この「人を表す名詞」が間接目的語(indirect object、「〜に」)になる点が違います:
  1. I told/advised/persuaded Mark to see a doctor.(マークに、医者にかかるるよう、言った/勧めた/説得した。)
  2. Mark was told/advised/persuaded to see a doctor.


(続く)


にほんブログ村 英語ブログ 英語講師・教師へ