英語にはsoだのasだの、はたまたthatなど、やたらと多い。今回はその由来を尋ねて行こう。筆者は短気なので結論から書く。soasになったのだso ⇒ all + so ⇒ also ⇒ asと変わっていった。allは「全て」から「強調」を表すようになった。日本語でも「全く~だ!」と言うではないか。all rightは有名だが、他にもalways / almost / already / almighty / although (アクセントは後ろ! 間違えるな!) / aloneなど数多い。soI think so.「私もそう思う」から「そのように」「同じように」の意味であることが分かる。そこからalso「~もまた」も生まれた。assoの「強調形」なのだ。ではこれまで無機的に暗記してきた構文の意味を解析して行こう。くどいようだがso≒as「そのように・同じように」だ ......


接続詞と副詞の「呼応」

本題に入る前に確認すべき構文がある。「相関構文」と呼ばれ「接続詞に対して副詞が呼応」する。When S1+V1, (then) S2+V2.などという形を取り、「S1がV1した時は、(その時は) S2はV2する」となる。くどい言い方にはなるが、入れた方が誤解を招かず済む。「接続詞<when>」に「副詞<then>」が呼応しているわけだが、英文の至る所に見られる。


as A as B:Bと同じくらいAだ

  • He is as tall as I.
    「彼は私と同じくらい背が高い」
もとはHe is (1)as tall (2)as I ( am tall ).だった。「私は背が高いがそれと同じように< (2)as>、その様に<(1)as>彼は背が高い」の意味である。(1)のasが副詞、(2)のasが接続詞だ。


so A that S can V:SがVできるくらいAだ[程度] = so A as to do

  • He is so tall that he can touch the ceiling.
    「彼は天井に触れるような<that>そのような<so>長身だ」
言わずと知れた「so-that構文」だが、ここでthatの説明が要る。so A that S can V = so A as to doだから、thatasと同じ働きをしていることが分かる。so≒as≒that「~のように」なのだ。ただこのthatという奴。実はとんでもない「化け物単語」なのだ。従ってこの謎解きは「thattheの謎」と題して後日を期す。


so that S can/may/will V:SVするために[目的] = so as to do

sothatがくっついているだけで、「so-that構文」と瓜二つで紛らわしいが謎解きは簡単だ。
  • Please speak slowly so that I can understand your English.
「理解できるようにゆっくり話してね」⇒「私が理解できるように<that>、そんなように<so>ゆっくり話してね」となる。can/may/willは「そうしたら理解できる<can>・できるかも<may>・できるだろうに<will>」の意だ。

ここで2つの「~ように」に言及しなくてはならない。日本語で「~ように」は「様態」と同時に「目的」も意味する。「理解できるように」と言えば、「理解できるような方法で」[様態]とも取れるし「理解するために」[目的]とも解釈できる。「理解する」という「終着点(目的地)」に注目すれば「目的」となり、途中の「プロセス(過程)」に注目すれば「様態(手段・方法)」となる。どちらに重心を置くかの違いに過ぎない。「様態」がやがて「目的」でも使われるようになったものであろう。そしてこういった「人の考え方・感じ方」は万国共通であろう故、英語に於いても似たような進化を辿ったものと推察する。


in order that S may/can/will V:SVするために[目的] = in order to do

なぜorderが「目的」になるのか? orderは「命令」だが、「秩序」の意味もある。「秩序」の維持には「命令」が欠かせない。「秩序」とは早い話が「お膳立て」だ。He went to the US in order to study English.なら「英語の勉強のお膳立てとしてまずアメリカに飛んだ」ということだ。


asの「接続詞」としての5つの意味

(1)~のように[様態] (2)~につれて[比例] (3)~なので[理由] (4)~だけれども[譲歩] (5)~のとき[時]と、asは接続詞として以上の5つの意味を持つ。(1)(2)はこれまでの説明で類推可能であろう故(3)(4)(5)についてのみ解説する。


(4)~だけれども「譲歩」=though

  • Young as she is, she is wise.
    「若いけれども彼女は賢い」
「倒置構文で使わなくてはならない」と注釈のつく用法だ。だがたとえ「倒置」だとしても、どうして「~だけれども」の意味になるのか?まったく意味不明である。as自体に「~だけれども」も意味を求めても無駄である。ちょっとくどい表現だが、もとはこういった文だったのだ。
  • (Though she is) young as she is (young), she is wise.
    「彼女はほらご覧のように<as>若いでしょ。(若い)けれども<though>ね...」
何よりの証拠に(3)「~なので」の意味でもこの構文が使える。もとの文を復元してみる。
  • Young as she is, she is timid.
    「彼女はまだ若いので、臆病だ」

    = (Because she is) young as she is (young), she is timid.
    「ほら御覧のように<as>若いでしょう。若いので<because>ね...」
どうだろう。「~なので」なのか「~だけれども」なのかは後ろの文との関係で決まる。as自体の意味の違いではないことがここから分かる。なぜこんな大胆な仮説が立てられるかといえば、以下のような有名な例文があるからだ。
  • Living as I do in such a remote mountain, I seldom have visitors....
    「こんな離れた山の中に住んでいるので、訪問者も滅多にいないんです」
これも倒置構文ではない。Living as I amなら「倒置だ!」と強弁できないこともないがdoでは不可能だ。これは生成過程が明らかになっている。「ロイヤル英文法」には以下のような説明が載る。
  • Because I live as I live(=do) in this mountain, I seldom have visitors....
    「ほらご覧のように<as>山の中に住んでるでしょ。住んでるから<because>ね...」
この②を「分詞構文」にした形が①である。



(5)~のとき「時」

「~の時」とくればまずwhenが思い浮かぶ。ではasとニュアンスはどう違うのか。「asは同時性がより強い」と「ジーニアス英和辞典」にはある。とすれば以下の解釈しかあるまい。
  • As I entered the classroom, they applauded.
    「私が部屋に入ったとき、彼らは拍手した」
    =(As soon) as I entered the classroom, they....
rune どうだろう? 砂を噛むような英文法も、少しは味が出てきただろうか?「そんなの覚えりゃいい!」では「暗記脳(8月号参照)」の域を出ていない。それは即ち「幼児脳」でもある。「なぜ? どうして?」と問い続けることこそ「学究の基本」であろう。他にもso/as/that関連の表現は数多(あまた)ある。気になったらちょっと立ち止まって考えてみることをお薦めする。ところで「砂を噛むような...」で思い出した。昔「受験生ブルース」というフォーク・ソングがあった。コミカルな反面哀愁漂う良い曲だ。興味のある人は聞いてみるといい...と、ここまで書いたとき、シンガー・ソングライター「高石ともや」氏の訃報が飛び込んできた。不思議な偶然もあるものだ。享年82。とまれ、氏の冥福を祈る。合掌。


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