茗渓予備校通信KIRI
2007年9月号
心と頭を耕す
フランス語で畑を耕すことを cultiver といいます。英語のカルチャーと同根の言葉です。フランス語でもcultureといい、農法、耕作、栽培、耕地、修養、練磨、教養といった意味があります。
私は、コーチングへの心がけとして、この言葉をいつも念頭においています。いろいろな生徒がいます。でも、みんな親から与えられた畑をもらっています。これをどのように耕していくかは自分しだい、生徒しだい。その耕作の方法を伝授していくのが教師の仕事だと考えています。
私の知人に中井浩一という人がいます。彼が昨年大修館から『脱マニュアル小論文—作文と論文をつなぐ指導法』という本を出版しました。30代にはヘーゲル哲学研究に没頭し、95年〜97年にドイツに留学、当地で作文教育を学んできたと言っています。中公新書で何冊も教育評論を出版しているのでご存知の方もおられるかもしれません。
彼の主催する読書会にときどき出席させてもらいましたが、読書の方法として、絶えず個人の体験と付き合わせる思考法を見せられました。私自身も生徒に作文・論文の指導をする際に、自分の経験と書籍などに語られる大きな体験(分析、概念、思想など)とを重ね合わせる方法を勧めてきました。こうした作業を通して、自分を客観的に見直し、心と頭を耕しながら成長していきたいと考えてきました。
この秋はいろいろな本を読んでみよう。時には、テーマを決めて文章を書いてみることを勧めます。中学生なら、今一番悩んでいることを見つめるのもいいでしょう。高校生なら、進路のことでもいいでしょう。