茗渓予備校通信KIRI

2008年11月号

2008年度プログレスワークショップ

去る10月25日、全国のプログレス使用校の先生方を中心に200名以上の英語教師が東京に集結しました。プログレスを発行するエデック社が折々行う企画です。

今年は、プログレスの監修者のロバート・キエサ先生、プログレス21の執筆を担当した栄光学園の小池教諭、聖心女子学院の高瀬教諭、プログレスを日々実際に使っている多摩大聖ヶ丘や鎌倉女学院の諸先生方が教育現場の実践の数々を発表されました。私も招待を受け、出席させていただきました。

英語教育の現場の課題に触れられただけでなく、今回は『脳の仕組みから見た英語教育』という、たいへん面白い本に出会いました。

この本の著者は植村研一(浜松医大名誉教授)という脳神経外科の先生です。植村先生は、「日本における英語教育は明らかに失敗である。それは単に教材や教育技法の問題ではなく、英語は脳で学習するのに、脳の仕組みをまったく無視したためであろう」と断じておられます。

では、英語学習における「脳の仕組み」の正しい使い方とはどんなものでしょうか。脳神経の専門家でない私なりの理解では、第2言語の習得に当っても、出発点はやはり母語と同じように、耳から「聞くこと」からはじめるという大前提です。そうすれば、次期アメリカ大統領に選出されたBarack Obama の勝利演説:
It's been a long time coming, but tonight, because of what we did on this day, in this election, at this defining moment, change has come to America.
の最後のフレーズ「change has come to America」は中学生でもしっかり聞き取れるはずです。

脳神経学者の言葉を借りれば、「日本の中学・高校・大学の英語教育の失敗の最大の原因は、脳の仕組みをまったく無視して、ウエルニッケ感覚性言語野に英語の言語野を独立させなかったことにある」そうです。最新の研究によれば、聞く学習から開始すると、日本語をつかさどる場所(野=フィールド)とは別の場所に英語をつかさどるフィールドが新生(新しく生まれる)され、それが長期記憶になるという。そのためには、「毎日英語を15分、できれば60分聞かなければならない。」英語教育の先進的な学校では、これくらいの時間は確保できているはずですが、定期試験や受験勉強で無理やり押し込まれた英語は、定期試験では2週間ぐらい、受験英語では最長2年ほどでほとんど消滅するそうです。

英語の回路と日本語の回路のスイッチの切り替えは相当英語が出来るようになってからでしょう。同時通訳のレベルとは言いませんが、英語らしい、うまい英語(comfortable English)、自然な英語は、中1から訓練することができると思います。プログレス21はそのようにして編集してあると著者たちは言っています。