茗渓予備校通信KIRI
2008年9月号
ゼミの窓 その3
伸びる生徒の条件
前回は、伸びる生徒をできるだけ多く作り出していくのが学校も含めて塾や予備校の役目であることを指摘しておきました。
では、伸びる生徒とはどのような生徒でしょうか。
「優秀な先生とは?」と問われて、1に、学力があること。いつも研究する姿勢を持っていること。2に、人格者であること。生徒との約束はきちんと果たしていくなど当たり前のことを必ず実行する誠実さを持つこと。3に、忍耐強いこと。生徒の目線で、生徒の成長を少しずつ促していくこと。この3条件を兼ね備えた教師が人を教えられる人材であると考えています。
では、「理想の生徒」とはどんな生徒でしょうか。「理想の生徒」という言葉よりも、「伸びる生徒」と言い換えたほうがいいでしょう。
最近は、義務教育までが豊かな消費社会の影響を受けていると指摘されています。小学生が「先生の授業を聞くのも聞かないのも私の権利」まがいの発言をすると聞きます。まるで、コンビニで品物を選別するように学校の授業も消費社会の商品のように扱う感性が蔓延しているといいます。授業料を払っているのだから、授業を聞くも聞かないも、おしゃべるするのも指導中に携帯を使うのも自由だという気配が感じられます。学校などだと、出席してやっているから先生を困らせることはないだろう、と言うのだそうです。生徒が我慢して授業を受ける苦痛が強ければ強いほど、指導料金が高いのももっともだと考える倒錯した意識を持つ生徒さえいると指摘する学者さえいます。
私たち塾や予備校の場合は、文字通り自由な市場原理に従うなかで仕事をしていますので、生徒がいやになればやめるだけでいいのです。その意味では、公教育(私立を含む)の息苦しさはないと思います。しかし、事情はそんなに簡単なものではありません。伸びない、成績が上がらないのに、惰性で通塾するケースが皆無とは言えませんから。
私は、こんな今の生徒の置かれた状況の中で、なにを生徒に与えられるのか折々考えてきました。1に、なんのために通塾しているのか。生徒の年齢相応に意識し、意識させる。目標は定期試験でも、英検でも、模試の成績でもいい。2に、ゼミは自分だけのものではない。人の迷惑も考える。利己的な生徒は伸びません。3に、「聞く耳をもつ」。自分を客観的にチェックする訓練につながります。生徒が、今の自分の状況をつかめたとき次への手が打てるはずです。確かに、そこには素直さ(指導者側の誠実さに通じるもの)が必要です。生徒と指導者との信頼関係が大切です。4は、継続は力の意味を実際に体感することです。