茗渓予備校通信KIRI
2011年5月号
ゼミの窓:失敗から学ぶ
歴史学者のジョン・ダワー教授(『敗戦を抱きしめての』の著者)が、東日本大震災に触れてこんなふうに語っていました。
個人の人生においてもそうですが、国や社会の歴史においても、突然の事故や災害で、何が重要なのか気づく瞬間があります。すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができるスペースが生まれるのです。関東大震災、敗戦といった歴史的瞬間は、こうしたスペースを広げました。そしていま、それが再び起きています。しかし、もたもたしているうちに、スペースはやがて閉じてしまうのです。(朝日新聞4月29日)いろいろ考えさせます。
中学受験のカリスマ的存在である金廣志氏は『落ちたって、いいじゃん!』(角川書店)で「ノートをとるな!忘れろ!早く寝ろ!」と逆転発想で難関中学合格の秘訣を披歴しています。これも、彼の過酷な人生から紡ぎだされたスペースの活用例ではないでしょうか。一読に値します。
私の大先輩である外山滋比古氏の『失敗の効用』(みずず書房)も読んでみたい本です。人間失敗して初めてわかることがいくつもある。・・・人の行く裏に道あり花の山
先月は、思わぬ先輩の来訪を受けました。その先輩から頂いた本に、桐蔭学園を一躍有名にした英語のF先生の話が載っていました。彼は教科書を持たないで授業に臨み、教科書の内容はおろかページから行まで正確に覚えてくるらしく、即座に生徒の読み間違いを指摘したそうです。まるで小沢征爾が楽譜を完璧に暗記しているようですね。謙虚に、日々是勉強。