茗渓予備校通信KIRI
2013年11月号
入試改革で何が変わるのか
本紙の読者には直接関係ないかもしれませんが、東京都の入試選抜のあり方が大きく変わりそうです。中学校と高校を入試を仲立ちとしてうまく接続し、選抜方法や尺度が①「基礎的・基本的な知識・技能」や②「課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等」を的確に問えているかどうかを、2極に軸を置いて見直そうとするものです。これまでいろいろ工夫してきた入試改革をここで出来るだけ共通化し簡素化を図ろうとしています。具体的には、学力検査の得点と調査書点の比率を大筋で7:3に統一し、専科(主要5教科以外の科目)を2倍にするなど、現在19名からなる検討委員会で議論している最中です。平成27年度からの実施を目指しています。
中高一貫教育校の創設で、進学実績においていくぶん失地を挽回した感のある都立高校が新たな改革に乗り出しています。上に書いたことはまだ公表されておらず、どのような結論が出るかは年末まで待たなければなりません。
さて、今度は新聞などでも大きく取り上げられているセンター試験に代わる新しい入試方法の導入に話を移しましょう。ここでも、都立高校の入試改革で謳われているのと同じように、今度は高校と大学を入試を仲立ちとしてうまく接続し、センター入試を①すべての高校生が共通に身につけるべき資質・能力の育成を図る試験(義務教育化している高校教育の基盤づくり、達成度テスト=基礎レベル)と②大学教育を受けるために必要な能力判定のためのもう一つの試験(達成度テスト=発展レベル)に2分割して衣替えしようとするものです。イメージとしては、前者は推薦入試やAO入試に活用する道を開き中堅下位の大学に利用してもらうのに対し、後者は一種の資格試験(かなり実現は困難)として各大学で多面的・総合的な評価にあたって選択を可能にできるとしています。ここでも2極化が図られています。
こうしてみると、都立の入試改革とその2分法においてとても似たものを感じます。新テストは、複数回受験できる仕組みを検討しており、多くの保護者の方々や生徒から歓迎されることでしょう。しかし、一部からは、教育再生実行会議の提言に反して、ますます中学・高校教育が試験試験でがんじがらめになるという懸念も聞かれます。いずれにしても具体的な実施方法や時期などについては、高校の実態に配慮しつつ関係者の意見も踏まえ、最終的には中教審などにおいて専門的かつ実務的な検討を待つとしています。文科省のある幹部は「合否判定の尺度を変える必要性は、この10年来ずっと感じてきた。教育問題を重視する安部政権が再登場したことで、トップダウンで一気にことを進める環境が整った」と明かしているとか。今後の展開に目が離せない局面をむかえています。