茗渓予備校通信KIRI

2013年9月号

キャリア教育

京都大学で開催された「大学生研究フォーラム」に参加するため、京都在住の同窓生は暑い京都を避けて長野の山荘へ避暑に出かけているのに、ひときわ暑い京都に8月3日4日と出かけました。

「学研教育みらい」の主催、京都大学高等教育研究開発推進センターの協賛で、今回は高校教育の「キャリア教育」に関して大学の先生たちと現場の高校教諭が一堂に会し、議論を深めようというものでした。

北は北海道から南は沖縄まで高校関係者が188名、大学関係者・企業・団体関係者が72名、総勢260名の参加者がありました。東京の高校からも25名ほどの参加がありました。

最初に京都大学の溝上慎一准教授からおよそ次のようなメッセージが高校現場の先生たちに投げかけられました。
昨年末の調査で、京大生4年次の11月に就職活動を諦めた学生が約4分の1いること、内定者の約4割は第一志望企業ではないことなどを具体的な数字を交えながら報告し、大学生のキャリア意識が低い現実を指摘しました。正直なところ、天下の京大生でもこうなのかと驚かされます。

溝上先生は、「大学に入ってからでは学生はなかなか変われない。高校現場でのキャリア教育にもっと本気で取り組んでほしい」と檄を飛ばしていましたが、その後の高校の先生方からの報告との落差を感じたのは私だけだろうか。2日目の総括で原島東大名誉教授は、「総括(溝上)で、それまでの報告を否定するフォーラムもめずらしい」と、いさかか皮肉をこめた発言をしていました。
大学法人化のあと、国立大学は数字のうえで成果を上げることを強く要求されています。予算を牛耳る文科省は、論文の数など、とにかく確かな数字・根拠をもとめています。溝上先生は、大学はここまでがんばっている、これからは高校と大学の連携が課題として残っていると力説していましたが・・・。

文科省のキャリア教育は、「今、子供たちには、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力が求められています。この視点に立って日々の教育活動を展開することこそが、キャリア教育の実践の姿です。」と美しい言葉で表現されています。しかし、現実は複雑で課題が山積みしています。企業は、学歴や偏差値の高さだけでなく、行動力・判断力・リーダー性・人間力などを求めています。世界で活躍できる人材を求めているのです。教育界全体で若者たちの教育をどうするのか、目先のことだけでなく、それこそ100年の計で考えるときがきています。