茗渓予備校通信KIRI
2014年1月号
文科省の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を読んで
昨年の暮れに文部科学省は上記のような英語教育改革に関する「実施計画」を発表した。文科省のホームページからはいって、この7ページにおよぶ文面にぜひ目を通していただきたい。高校段階(昨年の高1から)において英語の授業は英語で行うことを基本とすることとしたが、この計画では、①小学校中学年段階で週1〜2コマ程度の授業を、小学校高学年段階で週3コマ程度の授業を行うとしている。さらに、中学校では「授業を英語で行うことを基本」とし、すでに導入している高等学校では「言語活動を高度化」(発表、討論、交渉等)するとしている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて英語教育の改革を加速している。
昨年の大晦日のmsn産経ニュースによれば、英語教育で国内外から評価の高い国際教養大学(秋田市)が実施している取り組みを参考に、例えば高校在学中にTOEFL(iBT)71点以上、同(PBT)530点以上、TOEIC780点以上、英検準1級以上の得点や資格を取得すれば、センター試験の英語科目を満点と換算する案が浮上している(関係者)という。ただし「点数や導入時期などは中教審で議論される」 らしい。
秘密保護法案を成立させた安倍政権は「もうだれにも止められない」かのように、下村博文文科大臣率いる文科省の英語教育改革は勢いをいやましている。博文さんは、板橋区で塾を開いて以来多少の面識もあり、都議時代には東京都の教育委員会と「進路研」(町塾の団体)との取り持ちもしていただいた縁がある。早稲田の雄弁会の副会長としての経歴もあり、森元首相(やはり雄弁会出身)や安倍晋三首相(森派)の覚えがめでたい関係にある。
政治の世界はさておき、今回のこの改革に果たして死角はないだろうか。昨年10月のこのコラムでも触れたように、グローバリゼーションは今後の日本にとって乗り越えていかなければならない課題であり、その中で英語教育とどう向きあっていくかは、高校教育を含めた義務教育のあり方として、国や地方行政の姿勢が問われるのは当然のことである。国際語としての英語リテラシーをどの程度、どんな教育システムの中で育てていくのか、ここは慎重にことを運んだ方がいい。現場で教えているものとして、英検準1級は、普通の高校生にとってはかなり高いハードルである。しかも、英検1級をとっていても、英語が十分に話せないという辛口の英語話者は少なくない。英語を使って何を伝えるのかというもっと大切な側面も看過できない。また、小学校教員の確保やATL(ネーティブ教員)の増員など予算の問題もある。ここは、秘密保護法案同様に徹底して議論を深めてもらいたいところだ。