茗渓予備校通信KIRI

2014年10月号

受験界のいまを読む

先日、教育関連企業の「受験通」の3人を囲んで、都内の私立中高の先生方や私のような塾・予備校の関係者と、首都圏を中心にいまの受験界をあれこれ話し合った。以下、その時に、そうだったのかと膝を打った話や、私なりの感想を思いつくまま書いてみる。

中学入試に関しては、合同説明会から見ると男子校に活気が見られるのに女子校が低迷しているという。ただし、女子は堅実に学校選びをしているのに対して、男子校は開成の独壇場という。NHKのニュス番組のなかでゲストの亀井信明氏(高等教育総合研究所代表、元河合塾教務本部長)は、いまの大学入試実績はもう中学入試で勝負がついてしまい、鉢巻をしてまでの熱気が予備校や高校現場で希薄になっていると話していた。たしかに、東京に限定して言えば、東大・京大合格者数は公立181人に対し、国立私立は1078人と圧倒的に中高一貫校に集中している(2013年度春)。これでも都立がすこし勢いを盛り返してきたとは思うが。しかし、静岡県は公立102人に対して、国私立は9名である。全国的に見ると、公立が2674名であるのに対して、国私立が3186名で、その差はぐんと狭まっている。

先ほどのNHKの番組は、実は代ゼミが全国の教室を次々に閉鎖していることから大学受験を考えてみたもので、亀井氏は地方と首都圏を中心とする大都市圏の教育格差と現役中心の受験傾向から、代ゼミが規模を縮小しなければならなかったと指摘していた。代ゼミは札幌・新潟・名古屋・大阪南・福岡、そして東京本部校と造形学校だけを残すことにしている。今回の集まりでは、代ゼミは現役主体の受験の趨勢に合わせ、クラス指導・個別指導・ネット指導の3つの柱を軸にYサッピクスも含め企業体質を強靭なものにしようとしているいう説明に説得力があった。4100億もの資産を有効に活用しようという腹だ。

高校入試で面白い話があった(都内最大の模擬試験会社の話)。2011年の震災の年に小6だった生徒のなかに中入試をスキップし、来春高校入試を迎える生徒がかなりいるという。そうした生徒や保護者が説明会への参加者数を押し上げているらしい。こんなところにも2011年3月の体験は影響を及ぼしているとは。

全体的に、最近の受験生の保護者は塾や予備校の煽りでそれほど踊ることはない。父親が子供の進学に今まで以上に関心を示し、口コミや経済系の記事に載る学校情報・入試情報に耳を傾けているという。それだけ目が肥えてきた証だと思う。

現役合格を目指す受験生諸君、いまやっている受験勉強を試錬として前向きにとらえ、強靭な国土ではないが強靭な知性を育んでもらいたい。