茗渓予備校通信KIRI

2014年5月号

センター試験はなくなるのか?

4月22日中央大学駿河台記念会館において、「センター試験はなくなるか?」というテーマで学研教育未来の大堀精一氏が報告(『進路研』主催)を行った。氏はここ数年、京都大学を会場にした「高校教育フォーラム」を主宰する中心人物であり、全国の高校を一年中講演行脚している熱血漢である。

大堀氏は、「教育再生実行会議の提案は具体性に欠け、現実化する可能性はほとんどない」と言い切っている。昨年の6月から10月にかけて三大新聞をはじめ多くの報道がどう変わったのか。そこに大きな疑問点があると指摘していた。(→は6月から10月へかけての変化)
  1. 高校2年生以上の希望者を対象に年2〜3回実施する。フランスのバカロレアを参考に3種類の試験を導入する。複数受験で高得点を提出する。→これらは、すべて消えている。(なぜか突っ込んだ取材がない。私も最近の教育記事の取材の甘さを感じている一人だ。)
  2. センター試験廃止→センター試験の衣替えという表現に。
  3. 新テストの「発展」はセンターの衣替えのことなのか。素案では6教科マークと報じられているが、現行のセンターとどこが違うのか。
  4. 新テストの「基礎」は、大学全入時代に突入し、大学生の学力のはなはだしい低下を見かね、AOや推薦入試の代替えテストとして想定されているようだが、はたしてどれくらいの受験生が見込めるのか(この「基礎」でも足切りされかねない受験生が相当数存在する)。そもそも応募者の少ない大学がこのテストを利用するかどうか大いに疑問。
今回の集まりには、塾や予備校など業界の関係者以外に、高校の教諭や校長、出版界、それに教育担当の大手新聞社の編集委員も参加していた。大堀氏はメディアの安易な報道姿勢を激しく追及していた。地方の高校の先生たちは、日々の新聞報道にこれからの受験指導をどうしたらいいのか振り回されっぱなしだと憤っていた。

ここで昨年の10月に提言された内容をかいつまんで整理してみよう。①一般入試に利用する「発展」と推薦・AOに利用する「基礎」の二本立て。②「発展」は1点刻みの点数化を改め、段階評価方式を導入する。③「基礎」は高校での基礎学力確認が目的で、一般入試には利用しない。希望参加とする。④5年後の実施をメドにする。⑤各大学が行う2次試験は、面接・論文などを重視する内容で行うことを要望する。⑥今後は、中教審で具体的な議論をする。

まだ、素人の集まりのような「教育再生会議」の提言の段階であり、はたして中教審や国大協がどのような判断を下すか不明なので、何とも言えないが、肝心なことは、生徒を教え送りだす高校側がどう考えるか、受験生を迎える大学側が、この提言をどう受けとめるかである。⑤一つとっても、大学側の作業は途方もなく大きく、とても実施できる余裕はないだろう。