茗渓予備校通信KIRI
2014年6月号
反転授業体験記
今年の2月号で「反転授業」のことに触れましたが、これは、学習者が、ビデオやネット配信によってあらかじめ学習内容を自宅で予習し、対面授業ではその内容に基づいて学習内容を深めたり、ディスカッションを行うものです。言ってみれば、教師は「壇上の賢人から寄り添う案内人へ」(アリソン・キング)降りていく、「学びの大転換」です。
実は、この反転授業を4月から5月にかけて、私自身体験してみました。東京大学大学院情報学環が主催する反転学習社会連携講座(FLIT)がはじめて手がけた『日本中世の自由と平等』という講座です。
この講座は、本郷和人氏(東大教授)が担当し、教室をあげてサポートしていました。本郷先生はNHKの大河ドラマ「平清盛」の時代考証も手掛けた日本中世史の専門家です。4週間にわたり、インターネットで配信されてくる講義を視聴して、毎週課題に答え(ネットでアップする)、2回ほど本郷の校舎でじかに授業を受けるという段取りです。5月末に800字前後のレポートを提出して、めでたく合格点(6割以上)を獲得しました。なかには100点を確保した元気なシニアもいたそうです。
第2週の講座内容は9部に分かれています。(1)6代将軍足利義教(ウラをとるということ)(2)御前落居記録(3)小笠原持長・犬追物・小笠原流(4)『荘園分布図』、『日本の地名』(5)判決の典拠として 親子の相続が原則(6)判決はまとはずれ(7)ザインとゾッレン(8)日本は1つであるべきだ(権門体制論)(9)日本は1つだったのか(東国国家論)という構成です。本郷教授の講義を聞きながら、画面の右隣りにあるスクリプトを静止画像にして確認することもありました。洋画で外国語のセリフを追うようなものを想像していただければいいでしょう。繰り返し動画を見直すこともできます。なかなか時間の取れない私は、対面授業のある前日金曜日に1週間分をまとめてみることもありました。だいたい1週間分で3時間ほどかかります。
この学びの特徴は、日本のトップクラスの研究者の講義を自宅でじっくり視聴したあと(私は駆け足でしたが)、大学へ出かけてじかに講義を受け、討議ができるというところでしょうか。第1回目の対面授業では本郷先生、張り切りすぎて大学院の授業レベルを超えてしまったと反省されていました。日本では初めての試みであり、今後の展開が期待されます。関西や東北からの参加者もあり、下は中学生から上は80代のおじいちゃんまで多彩な面々です。この講座を切盛りしている
gaccoをのぞいていただければ、6月中ぐらいは参加者の集合写真が見られます。私は左の後列にいます。
「学びのかたち」はどんどん変化しています。里山資本主義といい、こうした反転授業といい、日本の美しい国土をどんどん豊かにしていきたいと考えているこのごろです。