茗渓予備校通信KIRI

2014年7月号

大学におけるグローバル人材育成とは?

先日、八丁堀の内田洋行本社ビルで行われた日経主催の「これからの日本の大学教育と理想のグローバル人材育成とは」というフォーラムに出席してきた。日本の大学におけるグローバル人材の養成の実態にすこしでも触れたいと思ったからである。

司会はテレビでおなじみの池上彰氏(現在東京工大リベラルアーツセンター教授)が務め、内田勝一氏(早稲田大学副総長)、佐々木加奈子氏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科MBAキャリアサービス)、柴崎洋平氏(フォースバレー・コンシエルジュ代表取締役、世界の最優秀学生を日本のトップ企業へ獲得するなどの業務を取り扱っている。上智大学英語学科卒業後ソニーに入社の経歴あり)、ウエンノア氏(現在ボストンコンサルティンググループ・アソシエイト、東大公共政策大学院修士、中国重慶出身)、フェルナンドシルヴィエラ氏(横浜国立大学大学院国際社会科学部在籍中、ブラジル生まれ)の5人がパネリストとして登壇している。
内田氏によれば、大学における国際化の発展段階は、限られた分野での出島的段階から早大生の海外派遣や留学生の積極的受け入れの第2ステージ(教育研究の国際化)に移り、現在は国籍を問わず多様な国・地域からさまざまな価値観を持つ優秀な学生・教職員が集まり交流する『ウインブルドン化』の第3ステージに到っているという。

留学生が8割を占める一橋のICSで国内外の企業と卒業生の採用に関する交渉業務を専門に担当する佐々木氏によれば、現実には、なかなか就職先を見つけるのが難しいということだ。大学院では日本語のリテラシーは問題にしないが、日本の企業は日本語が出来ることを条件にする場合が多いという。出島状況を脱していない日本企業もまだまだ多そうだ。

東大で勉強した中国人のウエン氏やブラジル人のフェルナンド氏は、日本の学生に志や動機の希薄さを感じると指摘するのが気にかかった。産能大の新入社員のグローバル意識調査によると、年々海外で働くことに意欲を感じない割合が増えているという。内向きの若者が増えているのだろうか。ある調査によれば、自分の語学力に自信がないと答えたものが65%に上っている。

一方で、柴崎氏は、欧米では職を得にくくなったアジアの優秀な若者たちが、いずれ大挙して日本に流れてくるのは間違いないと指摘していた。人口減少傾向の日本の人材不足を見越したうえでの指摘である。現在、日本語学校の生徒数が数年前の4.5倍になっていることもその根拠に挙げていた。いずれにしても、刻々とグローバリゼーションの大波が日本国内に押し寄せてきていることは間違いない。