茗渓予備校通信KIRI
2014年8月号
日本の大学の教育力が問われている
先月号では「これからの日本の大学教育と理想のグローバル人材育成とは」に触れたが、今回は各大学がどんなことを行おうとしているのか一部をのぞいてみよう。
この夏休み、大学のオープンキャンパスに出かける人も多いことでしょう。私も、会合や研究会などで、昨年は京都大学、今年は東大(本郷キャンパス)、早稲田キャンパス、慶応三田キャンパス、上智大学などに出かけた。いずれの大学も、その内側では経済のグローバル化と知識基盤社会の世界規模の構造変化に伴い大きな変革を余儀なくされている。大学選びの際に、こうした変革の流れに各大学はどのように対処しているのかも参考にすべきではないだろうか。
京大は2016年度から「京大方式特色入試」を開始
10学部合計110名ほど募集する予定である。その意図は『京都から大学を変える』(松本紘総長著、祥伝社新書)に詳しく書いてある。京大の教育改革が具体的に見えてくる。
東大が7月28日ついに推薦入試の実施を発表
平成28年(2016年)より後期日程の募集人員を推薦入試に振り替えるとしている。各学部約10名だが、工学部は30名、医学部は5名(内3名は医学科)とし、多様な学生構成の実現と学部教育の活性化を目指している。
一橋大学は2018年度入学者から全員の4週間程度の短期留学を卒業に必要な必須科目とする方針
報道されるのはいずれも大学改革のほんの一例だが、ここには国際的な、大学の生き残り戦略が透けて見える。ここに朝日新聞と河合塾が共同で実施している「ひらく日本の大学」調査のデータベースがある。ここから5つぐらいの改革(=教育力の強化)の柱が抜き出せる。
- 教育課程の体系的な再編成(学部ごと講座ごとの教育内容を関連づける。学ぶ側を中心に据えた育てる視点を重視する。)
- 学生の主体的な学習や研究を支援(裏返せば志の乏しい意欲のない生徒をビルドアップする手立て。大学のユニバーサル化が主因)
- 学習成果の明確化(就職の際に企業側も、学歴だけでなく、学生が大学で何を身につけどう評価されたかもチェックすべきだ。)
- 教える側の大学教員の教育力の向上(教員自身の評価も問題にすべきという姿勢。京都大学は2020年までに外国人教員を現在の240人から500人に倍増する計画とか。注目したい。)
- キャリア教育の強化と就職支援(このテーマは昨年京都大学で行われたフォーラムの紹介で触れた。)