茗渓予備校通信KIRI
2015年5月号
受験の風を読む—大学入試編
早いもので、もう風薫る5月を迎えました。連休をはさんで、いよいよ新しい年度が確かな歩みを踏み出しました。茗渓予備校では、5月24日(日)には調布校で、5月31日(日)には吉祥寺校で大学受験セミナー『第一志望現役合格へ向けて—いつ、なにを、どうするのか?』を開催いたします。高校生とその保護者の方を対象としていますが、それ以外の学年でもご関心のある方はぜひ参加ください。今年は、東大の中村教授(システム科学系)をゲストにお迎えして、主に大学側から見た受験生及び新入生についてお話しいただきます。また、恒例となっている今年の受験生を交えた合格体験談も企画しています。別途案内を参照願います。
センター試験廃止問題の現状
なんといっても、大学受験を語る場合に2013年6月に教育再生実行会議がセンター試験の廃止と新テスト導入を持ち出したことを素通りするわけにはいかないでしょう。その後、2014年12月には中教審が、達成度テストの「発展」を「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」として、また「基礎」を「高校基礎学力テスト(仮称)」と変更して答申しています。すでに文科省は実施へ向け行程表まで発表し、実現へ向けてやる気満々といった様子です。しかし、果たしてここで提案されている内容がどこまで実現されるのかおぼつかないのが現状です。
理念はともあれ実現が非常に難しい問題を2点だけ取り上げておきます。第一に、マークシート方式の問題があります。2013年にはマークシートを廃止すると言っていたのが、中教審は「選択式(つまりマークシート)と記述式の併用」や「CBT方式の活用(コンピューターによる試験)」の活用を持ち出してきました。教育再生会議の委員はほとんど受験現場を知らない識者集団ですが、さすが中教審は現場の実情を聞かされており、55万名に及ぶセンター利用者のテスト処理の難しさに気付いたのでしょう。私も、とある大学の推薦入試で入学した受験生たちの学力判定テストの作成から採点・評価までお手伝いしたことがあり、記述問題の処理には大変な時間と経費がかかることはよく知っています。55万名の解答を処理するには何十年もかかることでしょう。第二に、教科型に加えて合科目・総合型問題を課するという。現在の教育課程はすべて教科別の学会を基盤に組み上げられており、これをどう処理するのか多くの人には謎のままです。文科省は16年度中に問題例を公表、17年度中に試行テストをおこなうとしています。これも、当初は教科型を廃止すると言っていたのが、一歩後退と言ったところです。理念は現実に阻まれ、名称だけが変わって実質的には変わらない可能性もありそうです。今後を見とどけましょう。