茗渓予備校通信KIRI

2016年 10月号

アクティブラーニングとは何か?

文部科学省は本年度中に学習指導要領を見直し、2020年度の実施に向けてアクティブラーニングをその基軸に据えるとしています。「教育の強靭化に向けて」という文科大臣のメッセージ(2016年5月10日)で、以下のような報告がなされました。

▼「アクティブラーニング」の視点(註①対話的、②主体的で、③深い学び)は、知識が生きて働くものとして習得され、必要な力が身に付くことを目指すもの。知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善を行う。

都立の国立や私立桐蔭などが積極的にこのアクティブラーニングを取り入れています。先日、この方面の第一人者である溝上慎一教授(京都大学高等教育研究開発推進センター/教育学研究科)に半日にわたって「なぜアクティブラーニングなのか?」について、多忙ななか詳しくレクチャーを受けました。溝上先生の定義は、

▼一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表する等の活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化が伴う。(http://smizok.netで溝口教授の全容が分かる。趣味に注目。)

学者の定義ですので厳密化が要求され、解釈が難しいのですが、講義⇒ゼミ的演習、個⇒協働⇒個といったサイクルをイメージすればいいのではないでしょうか。従来の講義型授業を否定するものではないとも強調されていました。茗渓予備校の指導形式に引きつけて言えば、学校の講義⇒茗渓の個別指導⇒家庭学習(復習、知識の定着)⇒茗渓での確認作業・・・といったサイクルをイメージさせます。ただし、ここで見過ごしてはならないのは、書く・話す・発表するという生徒の認知プロセスをどう作動させるかです。私は、茗渓予備校のなかでは、個別教材と対話型指導(問いかけと応答)に留意しています。今回の話でも触れられたことですが、もう一つ重要な教育的課題があります。出口の問題、言い換えれば学校をでて社会人となりキャリアを重ねていくうえでの学ぶ力・生きる力をどう身につけていくかという課題です。生々しい資料を見せていただいた。20年間教員として働いてこられた京都大学の学生の就職希望者の就活の結果に関する資料です。ある年のデータ(学部4年生の11月調査)によれば、内定をとり就活を終了したもの66.1%、現在も就活中7.6%、就活を断念・中止・延期したもの26.5%(2013年3月報告)という。現在は就職環境が改善していますからこれほどではないと思いますが、どうでしょう。

キャリア教育にも強い関心を持っておられる溝上教授は、河合塾と京大の共同研究(通称10年トランジション調査、高校から大学1年までの資質・能力の変化をみるもの)において、変化のない比率は47.6%、成長群は23.4%と総括しておられる。半数は高校から大学にかけて資質・能力に変わりはないことを示しています。先日の新聞報道によると、大学1年1学期の成績(必ずしも入試の成績と一致しない)が、その後の4年間の成績を予測させると多くの大学関係者が発言していたのを考え合わせると、高校2年までぐらいが勝負だと思います。

自分の頭で考え、自ら発言し表現する力こそ、受験を越えて問われなければならない問題だと確信した一日でした。