茗渓予備校通信KIRI

2016年4月号

大学入試改革の方向が見えてきた

先月末31日に、「高大接続システム改革会議」の最終報告が発表された。

冒頭、「検討の背景と狙い」で、今日の混沌とした世界情勢や大きな社会変動に対応するために、「学力の三要素」(①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③主体的な取り組み)を身につけた生徒を世に送り出すことを基本に据えている。この報告書は、その理念・理想を実現するために、①高等学校教育改革、②大学教育改革、③大学入学者選抜改革を同時に進め、日本の教育システムを見直し、今後の国の教育方針の大転換を図ろうというものである。ぜひ一読されたい。

話が多岐にわたるので、ここではⅢ−3−(3)に出てくる「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)に絞って論点整理をしておきたい。

現在の大学センター(学法)を抜本的に改組した新たなセンターが実施主体になって、現行のセンター試験に代わるテストを作成していく。平成31年度からの施行実施に向け、平成29年度初頭には「新テストの実施方針」(対象教科・科目の出題内容や範囲、記述式及び英語の実施方法と実施時期、プレテストの実施内容、正式実施までのスケジュール等)を策定・公表するとともに、平成30年度初頭を目途に、より具体的な実施内容を示す「実施大綱」を策定・公表する、としている。

数学・理科を統合する「数理探求」(仮称)、国語の記述式問題の導入、4つの技能を総合的にとらえ外部の民間機関のテストの活用も視野に入れている英語など、新たな展開が始まろうとしている。知識・技能を評価しつつ、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価するものにしたいと何度も力説している。さらに、受験生が主体的に思考・判断する能力まで評価しようという。どんなテストになるのだろうか。若干のサンプルも発表されている。

「高等学校基礎学力テスト」、そしてこの「大学入学希望者学力評価テスト」、さらに各大学の「個別選抜入試」と三層構造で生徒の学力を評価し、これからのグローバル世界に生き残れる人材育成を図るつもりだ。すでに中教審のなかの各教科別ワーキンググループに検討を委ね、次期学習指導要領と新テストの作問との連携を検討中である。理想と現実の狭間でどんな回答が出てくるのか、期待と不安を感じながら経緯を注意深く見ていきたい。