茗渓予備校通信KIRI
今年の中学入試説明会では、どの学校でも「グローバル教育(世界基準の学力、世界で活躍できる人材の養成など)、「アクティブラーニング」、「ICT(=Information and Communication Technologyの略字)教育」、そして「2020年入試改革を含む大学改革」に触れた画一的な話であふれているといいます。この世界でも相変わらずの横並びが踊っています。
先日、「2020年からの大学入試」(モヤ感?自分軸?)というテーマで元かえつ有明中・高等学校校長の石川一郎先生のお話を伺ってきました。先生は2000年代からアクティブラーニングを研究し、実践されてこられたという。今年の2月に講談社現代新書で『2020年の大学入試問題』を出版されています。講演はアクティブラーニングを教育関係者を生徒に見立てる形で進行し、かなり盛りあがりました。著作や今回の話をごく簡単にまとめると、本欄でも扱った『高大接続システム会議-最終報告』(文科省)のいう①知識・技能(高等学校基礎学力テストで測定)、さらに②思考力・判断力・表現力(大学入試希望者学力評価テストで判定)、②に加えて③主体性・多様性・協働性(各大学の個別入試で選抜)、いわゆる学力の3要素のなかの、③の能力・資質を問う問題系が2020年入試の大きなうねりになると主張されていました。
文科省の官僚がこの本を読んで、とかく批判の多い『最終報告』に対してこんなにも評価をもらって大喜びという声が届けられたということです。もちろん、15年におよぶ石川先生の実践はこんな文科省の賛辞におもねるものではいささかもないのですが、三つほど疑問点や課題を提示させていただきたい。
ひとつは、今回の文科省の問題意識や、とりわけ石川先生の現場での実践は、理念的には賛同できる部分が多くありますが、コンピュータを使った採点など技術的な問題を含め現行の入試制度からの移行があと4年ほどで実現可能かどうか。
二つ目は、学力の3要素のうちの③の能力・資質を問う問題系の実例はそのほとんどがトップクラスの大学であり帰国生入試や医学部の小論文であることです。「知識は人間だけで作られていくであろうか?」(慶応経済)「永遠に生きられれば人は幸せだろうか」(早稲田政経英語)東大の各類の外国学校卒業生特別選考小論文の数々。ちなみに今回の改革案のモデルとなったというイギリスの例:「火星人に人間をどう説明しますか」(ケンブリッジ大学口頭試問)
三つ目は、目の前の生徒の指導に当たり、その生徒の実情に合わせた指導が可能かどうかという視点。どの生徒も③の能力を見つけ育てていくことはできるといわれているが、その辺は先生と一緒に考えていきたいと思っています。