茗渓予備校通信KIRI

2016年 8月号

2020年の入試改革は舶来ものか?

みなさん、夏期講習がんばっていますか。暑い中、はっきりした目標をもって学習に臨みましょう。

文科省の考えている「2020年入試改革」は、相変わらず外国のまねではないかという批判があります。ここでごく簡単にドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、日本の大学選抜方法 (2012年OECDなど、原則)を比較してみましょう。

  • ドイツアピトゥーア取得者は希望する大学・専攻に入学可能(定員を上回る場合は、大学入学財団がその40%を得点や資格取得後の期間で選考し、あとの60%は各高等機関がアピトゥーアの成績と面談等で選考)。記述式+口述式。年1回。大学進学率36%。
  • フランスバカロレア取得者は希望する大学の第1期課程に無試験で入学できる。記述式+口述式。年1回。ただし、グランゼコールを除く。進学率45%。
  • イギリスGCE・Aレベル試験の成績により決定。中等学校からの内申書や面接結果も考慮。記述式。年2回(最近1回に変更)。進学率41%。
  • アメリカ
    • 開放型:ハイスクール卒業資格を持つものは全員入学可能(短期大学等)。
    • 基準以上入学型:ハイスクールの成績とSATACTの成績に基づき入学可能(多くの州立大学)。
    • 競争型:上記基準に加え、小論文や面接などを課す(有名私立大学等)。
    SAT…年7回、マークシート+記述(エッセイ)。ACT…年4回、マークシート+記述(エッセイ、オプション)。進学率74%。
  • 日本大学入試センター試験。年1回。マークシート。進学率51%。私大は原則大学別に選抜。

注目点は①記述中心かマークシート方式か、②高校の成績を選抜に加えるかどうか、③資格試験の作成主体が民間か国か、④大学教育が無償かどうか、などです。それぞれ国ごとに伝統が重んじられている感想を持ちます。

この原稿を書くにあたってイギリスなど諸外国の教育改革や大学入試制度に詳しい方々にも取材しました。偏差値による進路指導は日本独自のもので外国では見られないとか、イギリスのGCSEとGCE-Aレベルの二段階の資格試験制度と評価が得点ではなくバンドで表示されている点などが、今回の日本の入試改革で影響を受けている可能性がある、などなど貴重な指摘を受けました。今後の研究に生かしていきます。

最近「ル・モンド」紙で、『21世紀の資本』で有名なトマ・ピケティがフランスの入試改革で格差の問題を取り上げていました。入試制度を考える場合、初等中等教育の在り方や就職問題とのからみ、教育費の問題(国民の負担)など多角的にとらえる必要性を強く感じています。