茗渓予備校通信KIRI

2017年 2月号

これからの教師像

受験の季節がやってきた。すでに、中学入試は終わり今度は高校入試、大学入試が行われる。

首都圏の中入試ではなんと95校が英語を試験科目に取り入れ、2020年の新共通テストを意識した「思考力」重視の入試も増えている。首都圏ではこうした思考力をみる入試は120校が実施予定で、昨年より34校増えているという。中入試の模試業者のなかには、果たして看板通りの趣旨に応えられる受験生はどれだけいるのか首をかしげる向きもあるが。

こうした傾向は、小池都政が世帯年収760万未満の都内在住の私立高校生に対し、実質無償化する方針を固めたことで、今後ますます私立志向が高まることが予想される(茗渓予備校ホームページの「お役立ち情報」を参照)。自民党がアベノミクスの破たんから世論の目をそらすために、大学無償化へ数兆円に上る「教育国債」発行の検討に着手しているという話がある。憲法第26条の「教育を受ける権利」とからめた改憲論議まで出ている(元文部大臣下村博文氏のテレビ対談)。ともあれ、先進国で教育費の比率の極めて低い日本の文教予算の大幅な見直しを考える機会になれば、大いに歓迎したい。

2020年から始まる新共通テストについてはこの欄でも再三扱ってきたが、文科省は①高校教育、②大学教育(高大接続の課題)、③それらを結ぶ大学入試を三位一体のものとして大きな教育改革を考えている。グローバルな時代の荒波のなかで身に付けるべき学力の3要素を以下の3項目にまとめている。

  1. 十分な知識・技能
  2. 問題解決型の思考力・判断力・表現力
  3. 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

したがって、今までの客観式のセンターテストではなく、どうしても記述式の問題群を入れなくては済まないわけだ。

こうした達成目標はおおむね間違っていないと思うが、こうした力をつける体制(教育行政の支援)や教師の質の問題を問わなければ絵に描いた餅になりかねない。

例えば、英語を英語で教えるとして、果たしてどれだけ今の体制や人材で可能なのか。英語を勉強できる時間が多忙ないまの教師に保障されているのか。教師は絶えず技量を磨き、新たな知識をインプットしてはじめていい授業ができるようになる(教師の働き方の問題)。本物の英語を直に教えるにはもっとネイティブの枠を増やす必要がある(予算の問題)。などなど、理念を裏付ける教育環境の整備が必要だ。

上記の学力の3要素を保証するには、指導者である教師の在り方を考えなければならない。この1月に石川一郎氏が『2020年からの教師問題』(ベスト新書)を出版され、すでに3刷まで販売数を伸ばしている。学校教育は「知識の習得」から「知識の活用」に軸を移す必要があり、その際、教師が最大の懸念材料であると述べている。この視点は、「知識注入型」から主体的な「学び方」の問題として昔から課題とされてきた。手前味噌ながら茗渓予備校では、教師は生徒の伴走者という位置づけで長年学習指導を続けてきた。生徒との関わりは教え教えられる関係であり、教師の側も主体性を持ってほかの教員と協働する態度が強く求められると思う。