茗渓予備校通信KIRI

2017年 3月号

次期学習指導要領の要点と各紙の取りあげ方

2月14日、文科省は次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめを公表した。小学校は2020年度から、中学校は2021年度から全面実施、高校は2022年度から年次進行される。つまり、2020年から実施される「新共通テスト」は現行課程からの出題であり、2024年度からこの新指導要領対応のテストになる。各紙は次のような見出しで大きく報道し、社説ではさまざまに問題点を指摘している。

読売新聞
(一面)英語小5から文法、竹島・尖閣「領土」明記;(社説)主体的に学ぶ授業への転換を。

産経新聞
(二面)「深い学び」姿勢はぐくむ;(社説)日本の良さ学べる授業に(領土の件を第一に評価)。

朝日新聞
(一面)小3から英語授業時間増質も量も鮮明、竹島・尖閣「領土」明記;(社説)現場の創意を大切に。

日経新聞
(一面)英語は小3から小5・6で正式科目に;(社説)二兎を追う授業改革は可能か。

毎日新聞
(一面)英語小3からプログラミング必修;(社説)がんじがらめは避けよ。

東京新聞
(一面トップ)小5・6英語教科化小3から親しむ授業;(社説)量と質二兎を追えるか。

「審議のまとめ」の冒頭に改定の基本方針が述べられている。「生きる力」を以下の資質・能力の三つの柱に沿って、教育課程の枠組みを分かりやすく再整理するといっている。

①生きて働く「知識・技能」の習得

②未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成

③学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間力」の涵養

これらは先月号で説明した高大接続の3つの柱と同じものである。①は学習する内容を減らさないということであり、②は知識偏重ではなく、問題解決型の学びを目指すということであり、③は「主体的で対話的な深い学び」の実現を目指すものである。

②と③は、「アクティブ・ラーニング」の視点から、授業改善の取り組みを活性化することを教師に要請するものである。また、各学校の管理職層には「カリキュラム・マネージメント」の実践を強く促している。平たく言えば、学校全体で学年別に達成目標を明確にして教職員が協働して学校教育の改善と充実を図ろうとするものである。

答申では「アクティブ・ラーニング」という言葉はまだ一般的でないとして使用を避けるそうであるが、実態は同じものである。新しく小3から英語に親しむ時間を増やし、小5.6では英語を教科化し、新たにプログラミング教育を必修としている。竹島・尖閣の日本「領土」を明確にし、高校では新科目として「公共(仮称)」を新設するなど自民党政権の影響も感じられる。

各紙の指摘にもあるように、学習内容の量を増やし、かつ質的にも応用力の高いものを目指してうまくいくのかどうか。学習量が減っていないのに時間がかかる方法論を導入したら教育現場に「ごまかし」が増えるのではないかという心配も出ている。二兎を追う教育改革は果たして可能なのだろうか。