茗渓予備校通信KIRI

2017年 9月号

英語4技能をどう評価するのか?

先月号でも触れた2020年度から実施される新しい「共通テスト」の中の英語、とくに4技能を評価する民間試験とCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に絞って考えてみたい。それにしても、「共通テスト」とう一般名称は、センター試験以前に行われていた「共通一次」に先祖がえりしたような錯覚を覚える。

7月13日に公表された文科省の実施方針によると、
  • 英語の外部検定試験を活用し、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を評価。
  • センターが、試験の内容と実施体制を評価し、入学者選抜に適した試験を認定。
  • 共通テストの英語試験は、認定試験の実施・活用状況等を検証しつつ、各試験団体に、検定料の負担軽減方策を講じることを求めるとともに、各大学に、受検者の負担に配慮して、できるだけ多くの種類の認定試験の活用を求める。
とある※1。結局、大学任せか。

問題点(1)

センターが外部検定試験の認定を行うそうだが、英検は日本の高校のカリキュラムを踏まえたものであり、TOEICはビジネスの分野でのコミュニケーション力を測るものであり、TOEICは英語圏の大学への入学資格を得る試験である。それぞれ用途が異なり対象も別だ。学習指導要領との整合性も考えなければならない。とくに「話す」力は各テストによってかなり測定に差があるし、そもそもCEFR(参照枠)とTOEFLひとつとっても年度によりかなり変動している。たとえばTOEFLで見るとCEFRのB1基準は2008年度57以上、2014年度42以上と、わずか6年間でかなりの差がある(Educational testing service)。

問題点(2)

先日、NPO学校支援協議会の主宰する『新しい学習指導要領/新しい大学入試』というシンポジウムに出かけてみた。第1部でピアソン(辞書のロングマンで有名)のDirectorであるMike Mayer氏が「CEFRとは何か」を語っていた。ヨーロッパでもCEFRのことを知っている教師は少ないとか。実際には参照枠は6段階ではなく、A2+、B1+、B2+、それにtouristsという超基礎段階もいれると10段階になるという。多くの日本の大学が射程に入れているB2(英検準1級レベル)、B1(英検2級レベル)にしても、それぞれの段階で大きな幅がありそうだ(文科省の資料)。さらに、A1とA2に全国の高3生の97%から99%が入ってしまうという(文科省の「平成27年度英語力調査結果」)。私自身は、今回の4技能で英語の運用力を判定するという発想には賛成だが、教育現場の現実を見る必要がある。ほとんどの高校生がA1A2に入ってしまうCEFRを使う利点はあるのか。シンポ冒頭で後藤健夫氏(大学ジャーナル顧問)も言っていたように、この何年も高校生の英語力はあがらなければ、教師の力量もあがっていない現状をこそ変えていく必要がある。地に着いた教育現場の検証と実践が肝要だ。

今回のシンポで実に印象に残っていたのは、明治大学の副学長の大六野耕作教授(政治経済学部)の話だ。summer session など短期留学や長期留学で外の世界に触れさせることでグローバル世界に伍していく(英語でコミュニケーションが取れる)力をつけることが先決だ。話す内容(知識)がないのに話せるわけがない。明治大学の宣伝マンとして誠に個性豊かな人だ。要は、英語を使ってアジアの若者や英語圏の学生たちと語る場が必要という話※2。今のセンター英語を平成35年まで継続し、そのまま残ってしまわないことを願うばかりだ。

※1 各大学の判断で活用(高3時の2回まで)。

※2 平成35年度までは継続して実施。