茗渓予備校通信KIRI

2019年 3月号

大学入学者選抜における英語試験のあり方をめぐって(第2部)

受験生の皆さん、合格おめでとうございます。長い受験勉強、本当にご苦労様でした。この経験はこれからの人生において、さまざまな局面でおおいに役立つはずです。

茗渓予備校は3月から新学年の指導に入ります。新旧入れ替わりの時期となります。

先月の2月10日に、東大本郷キャンパスにおいて、昨年同時期に続き2024年度以降も存続させるべきかどうか検討されている英語の「共通テスト」(センター後継)について、作成・実施体制からテストの評価、高等学校におけるテスト対策の実態までを振り返りました。同時に間近に迫った民間試験導入の課題や、高等学校による英語運用能力の評価についても発表されました。(詳細な資料は、東京大学高大接続研究開発センターのホームページに掲載されています。当日配布された資料よりも詳しい部分もあります。)

今回のシンポジウムも参加者が殺到し、2日で満員となり、約420名が詰めかけました。私もその中の一人です。以下、シンポジウムの内容はセンター掲載の資料に任せて、少し斜め目線から私見を交えた感想を書いておきます。

冒頭、高大接続センター長の南風原朝和氏から、英語入試改革の現状と論点が多面的に、文科省・国立大学協会・高校現場・新聞や著作などジャーナリズム・政界などの主張・意見を織り交ぜて語られていました。(ア)民間試験を共通テストで使用する際の課題の検証、(イ)高等学校における英語運用能力の評価のあり方、(ウ)2024年度以降の共通テスト「英語」の存続か廃止かを決める前にしっかりセンター試験「英語」の検証をしてほしいというのが、学者としての南風原教授の真意とみました。

国(文科省)は、共通テストの英語試験については、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テスと民間試験(英検やGTECなど)のいずれか、又は双方を選択利用することを可能としているのに対して、国立大学協会は、一歩踏み込んで民間試験と共通テストの両方を合わせ課すことを基本方針としています。文科省への立ち位置が影響しているのでしょうか。続々と公表されている各大学の民間試験利用にもその影が見えかくれします。

休み時間にロビーへ出ていると、スタッフらしき人物が「成功ですね。この熱を絶やさないようにしないと」といった声が耳に入ってきました。今度は、3月23日に東大駒場キャンパスで「学術から考える英語教育問題 ―CEFR、入試改革、高大接続」というテーマでシンポジウムが開催されます。残念ながら春期講習の最中で私は出席できませんが、ここには『英語教育の危機』(ちくま新書)の著者である鳥飼玖美子氏が「複言語複文化主義からうまれたCEFR ―その目的と理念」という視点でパネラーを務められるという。これも、熱を絶やさない戦術でしょうか。

来年1月で、大学入試センター試験が終了します。2人目の登壇者の大塚雄作氏(京都大学名誉教授、前入試センター試験・研究統括官)は、『センター試験という文化遺産』という目線で、大学入試センター試験はどのように作成・実施されてきたかを、かなり踏み込んで説明されていました。大学入試センターの山本理事長から、大塚先生の前の統括官である荒井克弘氏(東北大名誉教授)と二人で「センター試験」の歴史と総括を依頼されているとか、期待しております。