茗渓予備校通信KIRI
2019年 9月号
夏期講習が終わりました。有効に活用できましたか。2学期の学習にぜひ、新たな変化がみられることを期待しています。
ちょっと気になること
『AIvs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著、東洋経済新報社)という本のことを覚えておられるでしょうか。著者は、いわゆる「東ロボくん」(ロボットは東大に入れるか)という人工知能プロジェクトを主導してこられた研究者です。
東ロボくんが苦手の教科は、国語と英語だという(因みに数学は偏差値76ぐらいまでは到達している)。新井教授によれば、AIは「文節分け」「係り受け」(主述関係や修飾関係)や「照応解決」(指示語が何を受けているかなど)はかなり得意だが、「同義文判定」「推論」「イメージ同定」(文章と図形やグラフを比べて内容を読み取る能力)「具体例同定」(定義を読んでそれと合致する具体例を認識する能力)はきわめて不得意だそうです。意味を理解しないAIでは後者の3項目はまったく歯が立たないといいます。 上記の6項目にわたって調査した結果、中学生の半数は教科書レベルの文章が読めていないそうです。また、中3生と高1生の平均読解能力値に有意な差はみられないし、アンケートで答えた、家庭での学習時間とも相関関係がなかったそうです。
最近、生徒たちを指導していて、気になることがあります。英文読解などの最中に文法事項の理解が不十分な箇所が見つかり、学校で渡された英文法の参考書で該当箇所を参照するように促すのですが、最初のうちは見つけ方もわからない生徒が多い。やっと慣れてくるのですが、該当する参考書の説明と問題となっている文法事項とがどう関係するのかなかなか同定できない。これなど、まさに「具体例同定」不全と言えます。
私は、日ごろ生徒たちに、英語をものにするには英語の文法体系を頭の中に、いわばパソコンのOSのように構築する必要性を繰り返し強調しています。文法書は読むものではなく、引くものだともいっています。それに対し、辞書は読むものとも付け加えています。学校でも、英文法の参考書を渡すだけで、その使い方を指導することはほとんどないように見受けます。
学校訪問
夏期に入る前に、次の2校を訪問してきました。どちらも、塾向けの学校説明会を行っていない学校で、なかなか様子がつかめないところでしたが、『進路研』の求めに応じていただきました。
東京学芸大学附属国際中等学校(練馬区東大泉)
平成19年創立の学校(共学)で、中高6年間の一貫したカリキュラムのもと、国際理解・人間理解・理数探求を3本の柱とした教育を行っています。生の授業視察(2時間余り)を中心とした学校訪問でしたが、そのあと荻野校長(前都立国際校長)をはじめ、学校幹部との意見交換も有益なものでした。
2016年度から日本語と英語によるディプロマプログラムを実施、国内初の国公立6年一貫の国際バカロレア認定校になっています。多くが英語で行われており、とくに国語(日本語)の授業には啓発されました。進学実績は東大をはじめ首都圏の有名大学だけでなく、イエール大学、ロンドン大学など数多くの海外の大学にも進学しています。こんなところからも優秀な国際人が育っているなと実感できました。
早稲田実業学校(国分寺)
早実からは、我が茗渓予備校にも通ってきている生徒がいます。学部選択の必要性からと思われます。一部医学部志望者を除き、ほとんどが早稲田大学に進学しています。3年間の平常点、2回の実力テスト、人物評価(校長評価)により、学部が決まるそうです。
海外留学・研修・語学プログラムなど充実しています。ただし、こちらの学校は授業参観は一切できませんでした。清潔感にあふれるといった印象です。