茗渓予備校通信KIRI
2020年 11月号
Zoomママたちの井戸端会議
アメリカの大統領選挙は、これが憲法で正義を高らかに謳う民主国家の現実かと目を疑うほどだ。都市部郊外の中上流階層のご婦人方が、ビデオ会議用のツールZoomを日常的に使っておしゃべりをしている様子を先日テレビで見た。黒人問題などで暴動を懸念する郊外族も、こんどばかりはトランプ離れが起きているという基調報道になっていたが、実際はどうだろうか。コロナ禍でスマートに使いこなしていた。この記事が届くころにはアメリカの大統領選は決着がついていることでしょう。
わたしも、10月には2つのZoom体験をした。ひとつは、「朝日地球会議2020」(この内容は、11月4日5日の朝日新聞で詳しく報告される。)5日間にわたり、いろいろなセクションに分かれ、パネリストたちが討議していたが、教育関連は「オンライン教育のあした」のみ。登壇者のひとりは、2018年に民間出身として初めて広島県の教育長に就任した平川絵里氏。もうひとりは、ドコモ育ての親の夏野剛氏(慶応大学招聘教授)で、いま話題のN高(通信教育制)を運営している。こんどは、茨城つくば市にS高を申請中である。今年は慶応に2桁合格者を出したり、東大・京大にも合格者を送り出している。どちらもICTを存分に利活用しているところが特徴だ。
実は、私も10月から仲間内で立ち上げた「オンライン・シニア塾」に参加した。月に2回ほど、海外から日本に留学した大学生や院生を招き、おじさん・おばさんが様々な話題を取り上げて話し合う集いだ。第8回目のミーティングは、シエラレオネのイジキエル・カイネシさんを招いた。彼は、2018年に「あしなが育英会」の「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」の奨学生として選ばれ、2020年4月から東京国際大学に進学、デジタル・ビジネス&イノベーション専攻中。第9回目は、中国南京市出身のショウ・ヨウレイ(焦燁泠)さん。北京大学で経済の第二学位を取得。2019年秋に来日し、東大経済学部大学院研究科で農業経済学やジェンダー労働経済学を専攻中。趣味の話におよび、k-popはアメリカ産、j-popは日本産、c-popはそれらの真似と指摘していた。(笑)
もはや、オンライン・コミュニケーションは生活に不可欠となり、教育界でもうまく利活用せざるを得なくなってきている。こうしたデジタル手段がなかったら、われわれはコロナ禍の状況をどう切り抜けられるのだろうか。
「日本学術会議」任命問題 その後
先月号を書いている最中に、推薦した6人の任命を総理が拒否してから1カ月が経過しようとしているが、いまだ任命拒否の理由はきちんと説明されていない。しかし、身内の自民党議員である船田元氏は、この措置に対して菅政権を明確に批判している。<6名に共通することは、安倍内閣として進めようとしていた組織犯罪処罰法や平和安全法制、特定秘密保護法など、国の重要政策に反対の意思表示を行なったことだ。任命拒否の背景が透けて見える。><反対するとこういうことになると、抑止効果を狙ったものとしか思えない。><日本学術会議は「学者の国会」であり、政府(内閣府)の一機関ではあるが、政府からは独立した合議体である。政府の諮問に応じて答申を出すほか、会議の総意により政府に意見具申することができる。アカデミアの意見を具体的に率直に表現するためには、「独立」していることが極めて重要である。>(船田議員の公式HPより)きわめて常識的で健全な判断である。
この1カ月いろいろな人の意見を見聞きしてきたが、前学術会議会長の山際寿一氏(前京都大学総長)のものが一番説得力があった。<私はそもそも民主主義の問題だと思う。・・・日本学術会議も民主主義を基本として議論を展開する学術の場だ。いわば学者の国会のようなものだ。・・・全国87万人の研究者を代表する日本国籍を持つ210人の会員と2千人近い連携会員からなる。公務員だが給与はなく、会議に出席する際に日当と交通費が支払われるだけのボランティアだ。・・・(首相が推薦に基づいて会員を任命しているが)これは憲法第6条の「天皇は、国会の指名にも基づいて、内閣総理大臣を任命する」に倣ったもので、形式的なものであるのは明白だ。>(朝日新聞「科学季評」より) 菅首相、批判を恐れてはいけません。科学者の意見に謙虚に耳を傾け、民主主義国家として粛々と政権運営をしてください。