茗渓予備校通信KIRI
2020年 5月号
コロナ禍のなかの学びの現場
コロナ禍による緊急事態宣言は全国的な感染数の鈍化にもかかわらず、5月末まで延長されそうです。(5月1日時点)
世界第一次大戦も終わろうとする1918年に流行したスペイン風邪は、戦死者が1500万名ぐらいであったのに対して約2000万人の人がこの病の犠牲になったという。いろいろな国の兵士たちがウイルスをあちこち運んだのであろう。終焉したのが1920年で、その間に第2波第3波と何回も流行が起こっています。今回の新型コロナウイルスも予想以上に長引くことを覚悟しておく必要があります。とにかく早めにワクチンと特効薬ができることを願うばかりです。来年に延期されたオリンピックの開催も難しくなるかもしれません。
そんな中、学びの現場はどうすればいいでしょうか。
一番最初に考えられるのは、オンライン指導です。茗渓予備校では、宣言が解除されるまでの一定期間、一律オンライン上での個別対応指導を行います。これまでの茗渓予備校の良さを残し、家庭での学習を全面的にサポートします。問題の提供・解説・質問等の受け答えは、チャット・画像・映像で対応します。
オンライン指導=遠隔教育(distance education)に関して三つの貴重な個人的体験があります。一つはオーストラリアのとある大学の研究室と日本にいながらにして5年間にわたって行った大学院のゼミ授業。二つ目は、生徒たちの家庭と吉祥寺教室や調布教室をネットで結んで行ったイマージョン教育(算数や理科などを英語だけでネーティブが行う授業)。三つめは、トップクラスの研究者(本郷和人東大教授 日本中世史)の講義を自宅でじっくり視聴したあと(わたしは駆け足でしたが)、おりおり直に大学の講義に出かけ討論する。第1回目の対面授業で本郷先生、張り切りすぎて大学院の授業レベルを超えてしまったと反省されていました。日本で初めての試みであり、今では伝説にもなっています。gaccoで検索してください。
この間、生徒からチャットでいろいろ質問を受けましたが、的確な答えを無駄なく答える難しさを痛感しています。5月連休明けからは、どうやら本格的なオンライン指導が始まりそうですが、対面指導に勝るとも劣らない工夫をスタッフ各様にこらしてみます。
三番目の指導法は『反転授業』ともいいます。ビデオやネット配信によってあらかじめ学習内容を自宅で予習し、対面授業ではその内容に基づいて学習内容を深めたりディスカッションを行うものです。アリソン・キングは、教師が壇上の賢人から寄り添う案内人に降りていく、「学びの大転換」と言っています。短い間になることを願いますが、これからの学びの、新しい発見があればと考えています。 名著『敗北を抱きしめて』を書いた歴史学者ジョン・ダワーは、東日本大震災の直後に、震災と原発事故の後の日本の社会に表れた大きな裂け目を直視し、その記憶が薄れないうちに社会変革に着手すべき旨の発言をしていたことが思い出されます。
とにかく行政の打つ手が遅すぎることに日々イライラさせられています。無駄の多さ、文書の煩瑣さ、リーダーの優柔不断さなど枚挙にいとまがありません。
そうした中で、「9月新学期」という提案が浮上してきました。
ネット上の高校3年生は、こう書いています。「少しずつ学校開始が延ばされ、本来の学校生活を送れないまま3月に卒業となるよりは、まだ学校生活を全うするチャンスが生まれる」「『受験生』の立場からすれば、外部検定の受験機会減少、地域格差や情報格差、一般入試より早く始まる推薦入試実施の可否などの不安も、学校自体の始まりを遅らせることでいくぶんかは解消されます」国際化のチャンスかもしれません。
皆さんは、どう思われますか。