茗渓予備校通信KIRI

2021年 2月号

共通テストの結果(中間集計)

1月16日、17日に実施された大学入学共通テストの平均点(中間集計)が発表された。採点が終了した25万5267人(受験者数53万5267人中)の平均点である。

当初予想されていたより平均点はかなり高くなっている。以下、出題の特徴を簡潔にまとめてみる。

全体

知識や解法の暗記のみで解答できる問題は減少。理解の質が問われる「思考力」を発揮して解くことが求められている。平均点が概ね前年度並みになっているのは、設問の仕方によるものと思われる。問題作成者の腕の見せどころか。

解答マーク数が減少した科目が多いが、全科目でグラフ、地図、写真、文章などを読み取る資料の分量が増加している。複数資料から必要な情報を試験時間内に読み取る情報処理能力が必要である。この点では、旧来のセンター試験と変わらない。

授業における学習場面、日常生活の中から課題を発見し解決方法を考える場面、データをもとに判断する場面など、学習過程を問う出題も目立った。今後、入試センター内で、各種解析を進めたり、高校側の教員の意見を集約する作業が行われる。

文科省では、2019年12月に新入試制度を検討する「大学入試のあり方に関する検討会議」を立ち上げた(2020年12月で20回目)が、会議の提言を踏まえて、今年の夏までには制度改革の内容を公表する予定である。それに合わせ、高校3年間を新指導要領で学ぶ、今の中学2年生が大学受験を迎える2024年度以降の入試制度に関し、今回のテスト結果も参考にして年度内にも文科省へ提言する。注意深くウオッチしていきたい。

英語 昨年のセンター試験 ⇒ 今年の共通テスト

配点 筆記 200点 リスニング 50点 ⇒ リーディング100点 リスニング100点 

リーディング
平均点(100点に換算) 58.15点 ⇒ 60.35点 試験時間は変更なし(80分)
語彙数は、約2800語 ⇒ 約3900語  解答数 54個 ⇒ 47個
※すべて読解問題。SNS、ホームページ、プレゼンテーションなど実用的な言語活動を意識した場面設定や複数情報の整理比較

リスニング
平均点(100点に換算) 57.56点 ⇒ 57.23点 試験時間に変更なし(60分、内解答時間30分) 総語数 約1150語 ⇒ 1450語以上 解答数 25個 ⇒ 37個
音声は2回流れる ⇒ 6問中4問が1回読み 日本人話者を含む英米話者
注)問題の解答解説は、茗渓予備校HPブログを参照(斎藤収一先生)

数学

数学ⅠA 平均点 51.88点 ⇒ 59.20点 
数学ⅡB 平均点 49.03点 ⇒ 62.85点

日常の事象を題材とした問題、数学的な問題解決の過程を問う問題など、問題作成方針に沿った出題だった。会話形式の問題も出題されている。

試験時間が伸びた数①(60分⇒70分)は問題の分量が増加。誘導のない問題もあり、思考力を問う問題も多かった。なお、茗渓予備校の月刊紙「JUKEN2021-2月号」で問題の分析(目時伸哉先生)を行っている。
国語

平均点 119.33点 ⇒ 116.05点

近代以降の論理的文章と文学的文章。生徒が学習過程で作成したノートを用いる新傾向の問題も見られたが、センター試験の出題形式を踏襲した読解問題も多かった。設問数は減少しているが、解答数は増加。

古文・漢文は問題文に複数の素材が使われた。多面的・多角的な視点という出題方針に沿っていた。

理科

教科書では扱われていない初見の内容、複数分野の内容を含む問題などがある。

解答形式では数値を直接マークする形式、正解の数が不明な問題が出される。

地歴公民

問題文量の増加が目立った一方で、解答マーク数が減った。各科目とも資料の読解が必要で、思考力が試された。授業や旅行、生徒の会話といった場面設定での出題も見られた。

※中間集計段階では、生物や倫理の平均点は過去最高に、政治・経済は過去最低となった。

※センターは21日までに採点が終わった約48万人の受験者の各科目の平均点を比較。得点調整の対象となる公民の「倫理」(71,96点)と政治・経済(49.87点)、理科の「生物」(72.65点)と化学(51.06点)でそれぞれ20点以上の差が開いたため、平均点差が15点になるように調整する。中間にある現代社会と物理もそれに応じて加点する。

※難しいと予想されていた大学入学共通テストで手応えがあったとして、旧7帝大や医学部医学科などを志望する受験生が増えているという報道(朝日新聞1月22日)があるが、河合塾の国公立医学科の得点分布表を見ると、得点率の高い部分では昨年のほうが高くなっている。今回の共通テストは、医学科志望者でも高得点が取りづらかった様子がうかがえる。個々の難関校で子細に判断する必要がある。

(河合塾およびベネッセコーポレーション・駿台予備校共催「データネット実行委員会」の分析などを参考にした。)