茗渓予備校通信KIRI
2021年 3月号
共通テストの結果(最終集計)
大学入試センターは、2月18日、二つの日程で実施された初の大学入学共通テストの実施結果の概要を発表した。出願者数が53万5243人に対し受験者数は48万4114人(全教科欠席者数は5万1131人)となり、出願して実際に受験した人の割合(受験率)は90.45%で、90年開始のセンター試験時代も含めて最低となった。コロナ禍での共通テストということで、総合型選抜や学校推薦型選抜などで進学先が決まった出願者が受験を控えたことが要因となっている。
先月号で初の共通テストの特徴をまとめてみたので、今回は、現在進行中の大学入試の動向をスポット的に報告しておきます。
2021年度入試の動き
① 共通テストの成績利用の広がり
英語のリーディングとリスニングの配点比(首都圏に絞った国公立大学の大学別設定状況):
- 1対1)お茶の水女子大学、東京外国語大学、東京工業大学、一橋大学など
- 4対1)筑波大学、千葉大学、東京芸術大学など
- 3対1)東京電気通信大学、東京医科歯科大学、宇都宮大学など
- 7対3)東京大学など
※各大学の考え方や立ち位置に規定されている。私立大では約7割が1対1で利用している。全体的に私立大はリスニングの成績利用が増加。リスニングを利用しない大学は、センター試験時の32%から18%に減少している。
高まる共通テストの比重
共通テストだけで受験できる首都圏の大学
茨城大学(教育学部、理系学部、農学部)、宇都宮大学(工学部、地域デザイン学部、農学部)、お茶の水女子大学(後期日程の理学部)、横浜国立大学(全学部、但し一部の学部では出願時に課題の提出を求めている)など、コロナ禍における処置だけだと言えるだろうか。今後、共通テストがどのように軌道修正を行っていくかを年度ごとに見ていく必要がある。特に、新指導要領で高校3年間を学習してきた生徒が受験する2024年度には大きな変化が想定される。また、英語の民間資格試験の活用や共通テストにおける国語・数学などの記述式問題が、どの程度、またどんな形で実施されるかにも目が離せない。
② 実際の実施例からみた入試動向(データは河合塾)
- 東大:文科類の共通テスト得点率92%以上の出願予定者の前年比が文一で64%と激減しているのに対して、文二が117%と対照的な動き。理科類は、得点率92%以上の出願予定者の前年比が、理一は79%、理二は74%、理三は93%と上位層が減少傾向。高得点がなかなか取れなかった様子。
- 横浜国立大:コロナ禍で今年は個別試験を実施せず共通テストの成績を用いる方式に切り替えた。大学全体の出願予定者は前期3876名(前年比101%)、後期2913名(同83%)であった。前期日程は、経済学部全体で487名(前年比85%)、経営学部全体で1021名(同144%)と、対照的な動きである。
- 東京工業大学:模試の段階でも志望者が減少していた環境理工学院だが、共通テストリサーチでも減少となった。しかし、多くの難関大学がそうであるように2次の個別試験での勝負がカギとなる。
- 早稲田大学(共通テスト利用方式) 出願予定者は前年比150%と大幅な増加。文、文化構想では、センター試験のみ利用する方式が廃止となったためか、出願予定者が増加。昨年に引き続きハイレベルな入試になりそうだ。共通テストのみ利用する方式も増加傾向。ただし、ボーダー以下の層での増加となっており、成績上位層では減少もみられる。難易度に大きな差はないだろう。
- 青山学院大学:今年度から新設された共通テスト併用入試は、共通テスト単独入試と比べると成績上位者が集まっていない。ただし、共通テスト後の出願が可能なので変化はあるだろう。
③ 国公立医学科の動向
近年、国公立医学科は志願者の減少が続いており、2020年度入試では、前期日程の志願者は1.5万人を割り込み、倍率(志願者÷合格者)は4.0倍まで落ち着いていた。ところが、今年度前期日程全体では前年比115%と大幅に増加。競争緩和が見込まれたことや、共通テストの平均点が施行調査から予想された平均点よりもかなり高かったことが影響していると思われる。ただし、成績分布をみると医学科志望者でも高得点が取りづらかったことに注意したい。この原稿が発行される頃には、前期日程の結果が出ています。茗渓予備校でも各校舎で合格者の短冊を張り出します。後期日程も含め、茗渓では最後まで受験生に寄り添った指導を行っています。