茗渓予備校通信KIRI

2021年 8月号

2021年度入試結果と今後の入試展望

共通テスト導入、コロナ禍での受験など受験生にとって過酷な状況のなかで行われた2021年度大学入試の実際を概観しておく。そのうえで、来年を含め今後の入試を展望してみよう。

人口減による競争緩和

2018年以降18歳人口の本格的な減少期に入り、大学志望者数は21年度63.6万人、24年度は56.8万人とかなり急激に減少していく。21年度の18歳人口は前年比2%減少し、大学志願者数は約4%減、既卒生も約2割減と、大学定員を下回る勢いである。

もう少し、詳しく見てみよう。国公立大の前期日程で見ると、志願者数は前年比97%の235,408名で、合格者数は前年比100%の91,032名で、倍率は前年の2.7倍が2.6倍に低下している。関東・甲信越地区でみると2.6倍が2.3倍に落ちている。前期日程の志願者数は前年比97%と減少したが、受験人口減を加味すると国公立人気は堅調といえる。しかし、前後期日程ではこの2年で1割減となっている。

学校推薦型入試や総合型選抜(従来のAO入試)の状況の方はどうなっていたか。学校推薦型は国公立大の場合、志願者数は前年比98%の65,737名、合格者数は前年比106%の25,861名で、倍率は2.7倍から2.5倍に低下している。因みに私立の場合、志願者数は前年比93%の426,030名、合格者数は前年比106%の221,145名で倍率は2.2倍から1.9倍に低下している。首都圏もほぼ同じ傾向で、倍率は1.8倍から1.6倍に低下している。国公立も私立大もともに志願者数が減少し、合格者数が増加することで倍率がダウンしている。

以下、具体的に代表的な国立大と私立大学をいくつかピックアップしながら、今年の入試状況を垣間見てみよう。

  • 東京大学/志願者数は、文低理高となっている。文科類では文一、文二で1割減となったが、文三では昨春まで4年連続で志願者が減少したことに加え、第1段階選抜ラインが6割台と低かったことで志願者が2%ほど高くなりチャレンジ層が増えた。理科類では理一理二は前年並みだったが、理三は7%減少で、志願者数が400人を割り込んだのは2003年度入試以来18年ぶりとなった。合格者の現役率が年々高くなり、来年以降もこの傾向は続くだろう。
  • 京都大学/大学全体の志願者数は前年比96%、2013年度をピークに8年連続減少となっている。また、今年は東海以東の志願者が減少している。学部別に見ると、文系学部で志願者数が前年比100%以上は教育学部と総合人間学部、理系学部では理学部、医学部(医)、薬学部である。全国的に見ても、遠隔地を避け、理系・資格系を選好する傾向が目立つ。
  • 早稲田大学/大学全体の志願者数は3年連続の減少。合格者数は前年並みだったが、募集枠が縮小されているため、実質的には合格者増となった。大規模な入試改革を実施した国際教養、政経、スポーツ科学で志願者の減少率が高い。
  • 慶応大学/前年と同じ形での入試で併願が難しい(共通テストを課さないことや小論文を課す学部が多いことなど)こともあり、今春の減少率は低かった。一方、合格者数は1割近く増加している。正規合格者は前年並みだったが、文学部、経済学部では補欠候補者全員が繰り上げ合格となり、大学全体で前年の倍近い1,283人が合格となった。慶応に限らず大規模大学で合格者数を増やしているのは、併願数が減り、それが志願者数の減少につながったことも影響しているのでは。

上述のように、受験人口の減少に伴い競争が緩和されていく様子がみてとれるが、志望校を選択する際には、自分に合った、人生をかけられる分野を早めに見極めることが大切だ。目先の動向だけに振り回されないで、5年後10年後の世の中の動きを見通し、最終的には自分の判断で学部や大学を選ぶべきである。

センター試験から共通テストへ

  • 知識や解法の暗記のみで解答できる問題は減少している。より理解の質が問われ思考力・判断力を発揮して解くことが求められる問題が重視された。しかし、問題作成者の間では、思考力・判断力に沿った問題の作成に苦労しているという話も聞く。
  • 授業における学習場面、日常生活の中から課題を発見・解決方法を考える場面、資料やデータをもとに考察する場面など、学習過程を想定した出題形式が多かった。
  • 解答マーク数が減少した科目が多かった一方、全科目でグラフ、地図、写真、文章など読み取る資料の増加とともに会話文を導入したため、問題冊子のページ数が増加した科目が多い。とくに、英語、数学ⅠA、倫理政治のページ数の増加が目立つ。

受験生は、何よりも模試などで形式に慣れておくことである。必要な情報を時間内に整理し思考する力が求められるとともに、基礎をしっかり理解しておかないと正解に辿りつけない場合があることに注意したい。

今春の平均点は7科目文系型が555点で昨年比8点アップ、7科目理系型が571点で昨年比19点アップとそれぞれ高くなっている。これは大方の予想を覆した形になったが、配点の妙にもよる。来春は、難度の高い設問の配点が高くなることが予測され、平均点は低くなるのでは。注意したいところだ。 

(注)河合塾による入試結果調査データ417,550人分を参照した。