「現在分詞」とくれば次は「過去分詞」だ。過去分詞には謎が多い。まず「過去と何の関係もないのになぜ過去分詞と呼ぶのか?」という謎だ。これはネット上で多くの方が答えておられる。「過去形と形がそっくりだから過去分詞と呼ぶのだー!」と。しかしこれでは答えになっていない。「ではなぜ過去形と過去分詞はそっくりなの?」と、次なる問いが飛んでくるからだ。さらに「現在分詞」は「現在形」とは似ても似つかぬ形をしているが、こちらも「現在分詞」と呼んでいる。この問いに関してネット上では「一方の分詞に『過去』という名前を使ってしまったので、もう一方の分詞は仕方なく『現在』としたのだー!」と言うのだ。ここまで来ると最早「落語」である......










英語には2種類の〜ingが存在する。「現在分詞(〜している)」と「動名詞(〜すること)」だ。確かに紛らわしい。そしてこの2つは「全く別物」と説明される。本当にそうなのか? 以下の文を見て欲しい......






まず聞こう。Wake up, Tom.「起きなさい! トム!」という文がある。このTomは「何格」か? 英語には「格変化 (以下『曲用』)」というものがある。I--my--me--mineというアレである。英語はその曲用をほぼすべて捨て去ってきた「のっぺらぼう言語」である。従ってはっきりと曲用が残っているのはこの「人称代名詞」だけなのであるが、 普通の名詞にも痕跡らしきものは残っている。Tomで言えばTom--Tom's--Tom--Tom'sとなる。とすれば上の文のTomは「主格」か「目的格」のはずであるが、このいずれでもないことは中1生にもわかる。これは「呼格:vocativus[ウォカーティーウス]」という曲用なのだ。文字通り「人に呼び掛けるときに使う格」である。「呼格」は徐々に「主格」に吸収されてゆき、今では呼格を持たない「印欧(インド・ヨーロッパ)語族」の言語も多い。文から独立して存在するが故に、文中での役割を明示するための曲用をさせる必要がないからだ。ただこのTomを「主格」と教えるには流石に無理がある。「昔は『呼格』ってのがあってね...」と説明くらいはできるように、英語の先生ならしておきたい......