役に立つ教育関連ニュース

入試情報総まとめ
茗渓予備校大学受験部で編纂した2022年度大学入試情報のまとめです:クリック


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南風原朝和氏の意見
南風原朝和氏の、大学共通テストの日程などに関する意見です。副学長として東大に所属する間は文科省の大学入学改革に関して反対派の理論的支柱として論陣を張り、現在は都内の私立中高の校長として発言を続けておられる。今回の『大学入学共通テスト』の第1日程第2日程などの設定に関して大いに疑問を感じられ急遽メモ的に意見を発表されています。いずれどこかのメディアに発表されるでしょうが、取り急ぎリンクを貼らさせていただきます(高木):


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大学入学者選抜における英語試験のあり方をめぐって(2019年3月6日)
2月10日にセンター主催でシンポジウム「大学入学者選抜における英語試験のあり方をめぐって(2)」が開催されました。

概要は、3月号の「代表から」に掲載されています。
※講演資料は講演タイトルをクリックするとダウンロードできます。


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日本テスト学会第16回大会:大学入試改革―テスト学の観点からのふり返りと展望(2018年10月4日)
9月8日、東京家政大学において上記のテーマで公開シンポジウムが開かれた。企画は南風原朝和氏(東京大学教授・高大接続研究開発センター長、元文科省高大接続システム計画会議委員)で、登壇者は以下の3名である。それぞれの立場からコメントを行い、そのあと全体討論を行った。司会に立った南風原氏は、今後文科省からお声がかかることはないだろうと、得意のジョークでしめくくった。
大塚雄作氏―京都大学名誉教授・大学入試センター客員教授、元文科省英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会委員。

前川眞一氏―東京工業大学名誉教授・大学入試センター特任教授、文科省「高校生のための学びの基礎診断」検討WG委員。

木村拓也氏―九州大学准教授、元国立大学協会入試委員会国立大学の入学者選抜に関する検討WG委員。

●大学入学共通テストの三つの改変点と課題(大塚氏)
大塚氏は、今年の3月まで大学入試センター副所長(試験・研究統括官)としてセンター試験を主導されてきた。(1)記述式問題の導入に伴う課題、(2)マーク式問題の工夫・改善の必要性、(3)英語の4技能評価の問題点、この3点について「ふり返りと展望」を行う。問題点は広範囲に及び、概ねマスコミ等で触れられた範囲での話であったが、重要な要点や新情報を拾ってみる。

(1)導入するなら、質の高い問題でなければならないが、それをおいても、採点の信頼性とフィージビリティ(実行可能性)の観点からみて疑問を感じる。例えばベネッセに依頼した2017年度の試行調査によれば、1000人規模の採点者で国語3題(6.5万人)・数学3題(5.5万人)の答案を10日で採点完了、検収による再確認と再検収で1週間程度かかっている。大学入試センターで一部(それぞれの問題ごとに4000件から9000件)を検収したところ、国語問3で25件、数学問(あ)で31件、問(う)で23件の採点基準の明確化にともなう補正があった。50万人規模のセンター試験では無視できない数である。

(2)2017年7月の文科省による、マーク式問題の作問の工夫・改善の求めにゼロ回答を出した大塚氏は、「正解が一つに限らない問題」に絞って反論した。例えば、CEFRのA1レベルとされた問4(9番 You may choose more than one opinion.)の問題の正答率が14.0%だった。「適当なものを選べ」という解答形式が目立ち、より深い思考を求めていると誤解されるが、実際には1つ1つの選択肢について適否の二者択一をしているに過ぎない。結局、こうした設問形式は、単に正答率を低下させ、識別力を低下させる機能しかなく、採点上のトラブルにつながる可能性もある。

(3)東大WGが提示した以下の課題を支持している論調と見受けた。①高等学校学習指導要領との整合性に対する疑問、②CEFR換算表の信頼性と妥当性、③スピーキングテストの実施体制や採点体制。※因みに、CEFR補足版によれば、6段階から、7領域=(音声+文字)×(理解+産出+やりとり)+仲介、11レベル=preA,A1,A2,A2+,B1,B1+,B2,B2+,C1,C2,aboveC2に改正されている。

⇒これに対し、2番目に登板した前川氏は、新テストへの非専門家からの要請に対して、テスト学会のような専門家集団はいかにして応えるかを考えるべきだとしている。

●南風原氏の呪い(2014)から抜け出そう(前川氏)。
呪いの内実は、段階表示をすると情報量が減るから、テスト理論的に悪であるということらしい。前川氏は、「推定の標準誤差SEで言い換えると:段階化されたテスト得点からθを推定する際の推定の標準誤差は、元のテスト得点からθを推定する際の推定の標準誤差より大きくなる」との説明だが、高等数学に疎い私にはまるで分らない。

日本テスト学会は、これまでのところ、きわめて保守的で、新テストに対する(オーナーの)全ての要望を頑なに否定してきた。旧来のセンター試験を擁護するだけだ。これでよかったのか。要は、こうした懸念を諸論文で理論的に説明されてこられたようだ。南風原氏は、それでも呪いは解けないと発言。対立する人を登壇させ、バランスをとる企画者の手腕に改めて感心した。

テスト開発の役割分担に関する議論は興味深かった。A)オーナー(発注者)、B)開発者1(問題作成者)、C)開発者2(統計分析者、設計者)、D)管理者(実施担当者)、E)ユーザー(テスト結果を利用する者)。前川氏は、自分はC)の立場(現在は存在しない)だという。最後の全体討論の場では、A)が大学であったり、文科省であったり、研究者の立ち位置で変わるのが面白い。さて、受験生はどこに位置付けられるのか。

●危機に立つテスト TEST at RISK(木村氏)
「テスト学」の「メタ理論」を展開。テストの現状に肯定的か、否定的か。保守的か革新的か。この二軸が作り出す4つの次元にわれわれ研究者は分類されるのではないか。歴史的な観点を踏まえて自己をふり返りたい。

久々に、学会なるものに出席した。門外漢なので理解困難な部分が多々あったが、政治に振り回される一面が垣間見えた。オーナー(ボス)は、やはり金と権限をもつ政府・文科省だと確信した。(報告者 高木春彦)


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東大が英検など民間英語試験(認定試験)の成績提出を必須にしない方針を決定(2018年9月27日)
大学関係者の話では、言語能力の尺度に使われているCEFR(セファール)の6段階で下から2番目のA2以上を受験生に求めると決定。その確認方法として、①民間試験でA2以上の成績、②高校側がA2以上の英語力があると認めた調査書など、③障害や病気などによって受けられない事情を明記した理由書――のいずれかを提出してもらうという。東大は「アドミッション・ポリシー」で「国際的な広い視野と外国語(英語に限らない)によるコミュニケーション能力」を入学志願者に求めており、現に英語でのライティングとプレゼンテーションを中心にした英語による授業(理科生対象のALESSと文科生対象のALESA)、スピーキング授業としてFLOWが1年次の必修として設けられている。2018年度からは「国際総合力認定制度」(Go Global Gateway)を開始し、海外大学との連携による交換留学や海外研修プログラムを数多く取り入れている。受講条件としてCEFRのB1・B2レベル相当以上の英語力を要求しているものもある。

※詳しい内容は、以下のPDFファイルを参照ください:クリック


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東大WG答申他(2018年9月6日)


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運用に不安、再検討を 入試改革で英語民間活用(2018年7月5日)
茗渓予備校広報誌『KIRI 7月号』の冒頭記事「共通テストはどこまで来ているか」で触れた①「共通テストと民間の資格・検定試験の活用との関係」と②「記述問題に関して」とに関する、東大高大接続研究開発センター長南風原朝和氏と大学入試センター理事長山本廣基氏のやり取りです。
  • 入試センターへの質問(南風原氏より):クリック
  • 入試センターからの回答(山本氏より):クリック
  • 入試センターへの意見 (南風原氏より):クリック


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運用に不安、再検討を 入試改革で英語民間活用(2018年4月19日)
日本経済新聞電子版2018/4/16:リンク


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東大高大接続研究開発(2018年2月20日)
2月10日の日曜日に東大(本郷)で開催された「大学入学者選抜における英語試験のあり方をめぐって」(東大高大接続研究開発センター主催)というシンポジウムに出かけた。いま大きな注目を集めている大学入試改革における英語試験のあり方について理解を深め、各大学における今後の方向性の検討に役立てるとう趣旨で開かれた。
司会を務められた南風原朝和教授(センター長)の力によるのか、賛成派から反対派までうまく人選された現時点での問題点を見事に浮き彫りにしたシンポジウムであった。当初予定の200人の枠が2日ほどで満杯になり、別の2教室にモニターを設置した会場を設置して400人を収容した。

以下、参考になるサイトや新聞報道にリンクを貼っておきます。参考にしてください。いずれ私(高木)なりに、簡単にまとめてみます。

①東大ウエッブサイト:リンク
 高大接続研究開発センターから当日配布された冊子(120ページ強)が掲載

②当日のシンポジウムに参加した東大英文科の生徒による実況記事:リンク
 力作です。

③日経の記事 2月10日速報:リンク
 取材が浅すぎる。

④毎日新聞の「教育の森」2月19日朝刊:リンク
 要点をうまく再現できている。


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「共通テスト」の施行調査(プレテスト)(2018年2月22日)
河合塾が2021年1月から実施される「共通テスト」の施行調査(プレテスト)の分析を全教科にわたって行っております。このページからプレテストの問題も取り出せます。ぜひ参考にされることを勧めます。

河合塾:リンク


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共通テストに関して(2018年1月20日)
日本テスト学会から、大学入試共通テスト導入に向けた試行調査テストについての意見書が提出されました。国民各位から広範な議論が起こることを期待します。

ホームページ:リンク


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都立高校入試で英語の「スピーキング」 中学入試でも英語導入急増(2018年1月20日)
東京都教委は12月14日、都立高校入試の英語に「スピーキング」を導入し、約5万人の受験生全員に課す方向で検討に入った。出題内容を学習指導要領の範囲に絞った独自のテストを、民間団体と協力して作り、通常の入試とは別日程で実施する予定で、2019年度以降に試行テストを実施して導入時期を決めるとしている。
都教委は大学教授や中高教諭らで作る検討委員会を7月に設け、入試に「話す」試験を導入する方法を議論してきた。採点に時間がかかるため通常の入試とは別日程で行い、1回のみ受験できるようにすることを想定、英語の試験に占めるスピーキングの配点や受験料などは今後検討するとしている。 ほとんどの中3生がスピーキング対策を取るようになるのであるから、今後、私立高校入試でも導入を始めるものと考えられる。今春の首都圏・近畿圏の私立中学入試で英語を導入する中学の数が約3割、137校に上るという(朝日新聞1月19日付)。4年前の7倍である。いままでは中堅以下の学校が多かったが、今後は上位校でも英語の導入が始まりそうだ。


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私立等志望者数の増大 無償化の影響か(2018年1月20日)
都内の中学校から私立等を志望するものが、昨年より男女計1,535人増加した。私立等志望者の卒業予定者に占める割合は、男子が22.7%→25.0%、女子は18.7%→21.0%と上昇した。
この調査は、11月下旬から12月上旬にかけて、3者面談で受験生・保護者から聞き取るなどして行ったもの。その時点で、都立を第一志望とせず、私立を選んだ者が多くいるのは、私立の授業料無償化が影響しているようだ。 今年は私立の説明会で無償化について具体的な説明を行うケースが増えた。公私合同の進学相談会などでも、私立高校の長い列が目立った。 現時点では私立の単願推薦の利用者が増えたかどうか、私立側からの資料がないため分からないが、都立志望者数のレンジ別の増減など、今回の調査結果からみると無償化によって志望者が大きく動いたことは間違いなさそうだ。(安田教育研究所)


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南風原朝和氏(東大教授)「大学入学共通テストの課題」をおおいに語る(2017年9月19日)
フェイス・ブックでお知り合いになっている先生の意見です。現場の貴重な意見です。

NHK解説委員室より:リンク


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来春の入試センター試験の受験案内が公表される(2017年9月19日)
※以下の各項目では、「平成30年度大学入試センター試験受験案内」の該当ページをご案内しています。受験案内の内容もあわせて確認してください(リンク)。



◆出願資格を証明する書類の入手

<P.6~P.10>

◎現役生

・学校長から一括して証明されるため、個人では必要なし。

◎高卒生

・「卒業証明書(原本)」※出身高校に請求し入手する。

◆志願票の記入

<P.18~P.21>

受験案内の記入方法をよく読んで、間違えないように記入しましょう。

受験教科の選択記入欄においては、全ての教科について該当する選択肢を記入する必要があります。選択記入欄に正しく記入されていない場合(未記入など)、その教科は「受験しない」教科として登録されます。

登録を正しく行わないと、希望する教科・科目を受験することができませんので注意が必要です。

◆検定料の払込み

<P.24~P.25>

使用する払込書は払込金額により異なります。

▼払込金額

◎3教科以上

・成績通知を希望する場合… 18,800円

・成績通知を希望しない場合…18,000円

◎2教科以下

・成績通知を希望する場合… 12,800円

・成績通知を希望しない場合… 12,000円

▼払込期間

2017年9月1日(金)から10月6日(金)まで

▼払込場所

「ゆうちょ銀行・郵便局の受付窓口」または「払込書裏面記載の銀行の受付窓口」

※ATM(現金自動預払機)は使用できません。必ず受付窓口で払い込む必要があります。

◆出願(出願期間と出願方法)

<P.11~P.12> 大学入試センターのページを記載

▼出願期間

2017年9月26日(火)~10月6日(金)(10月6日消印有効)

▼出願方法

◎現役生

・出願書類…志願票、検定料受付証明書

・提出方法…学校経由で出願

◎高卒生

・出願書類…志願票、検定料受付証明書、出願資格を証明する書類

・提出方法…個人で直接出願(簡易書留郵便で郵送)


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「キッズウィーク」導入へ 来年度から 学校の休み柔軟に(2017年9月19日)
政府の教育再生実行会議は9月8日、自治体が学校の夏休みなど、長期休業日の一部を別の時期に移行し、大型連休を独自に作る学校休業日の分散化をはかる、いわゆる「キッズウィーク」の導入に向け、学校教育施行令の一部を改正する政令を決定した。
教育再生実行会議の第10次提言などにおいて、大人と子どもが触れ合いながら充実した時間を過ごせるよう、学校休業日の分散化が盛り込まれたことによる。キッズウィークの導入は平成30年度(2018年度)から。 林芳正文部科学大臣は9月8日、記者会見で学校休業日の分散化について言及。導入の促進と定着には、保護者の有給休暇取得の促進や、休業日における多様な活動機会の確保、推進が不可欠であると述べた。 文部科学省は今後、休業日の日数や時期は児童生徒や地域実態をふまえ判断するよう、具体例も交えながら各自治体に周知していく予定だ。(安田教育研究所)


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国立大入学定員5年連続減少 医学部でも(2017年9月19日)
文部科学省は9月4日までに明らかになった来年度の国立大学の入学定員を発表した。学部の入学定員の総計は、前年度より43人減の9万5650人で、2014年から5年連続の減少となった。
医師確保のため臨時で定員を増やしていた医学部では、旭川医科大など3大学が定員を戻しているほか、工学部系の技術革新に伴う改組による減員が目立っている。 学部を新設するのは、富山大(都市デザイン学部…140人)、広島大(情報科学部…80人)、九州大(共創学部…105人)の3大学だが、3大学とも既存の学部の定員を削減し、全体の定員枠では、富山大は17年度よりやや減少させ、広島大と九州大は維持している。大学院の定員は前年より167人増えて、5万9200人となった。(安田教育研究所)


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東大、世界大学ランク過去最低46位に 京都大は74位に浮上 (2017年9月19日)
英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)は、今年の「世界大学ランキング」を発表、日本の大学で最も順位が高い東京大が昨年の39位から順位を下げて過去最低の46位となった。
THEは東大の順位下落は資金不足や中国などの大学が急速に順位を上げていることが主な原因と分析。フィル・バティ編集長は、近年東大の順位が下落傾向にあることに懸念を示し「資金の調達方法を多様化する必要がある」と指摘。全体の中に日本の大学は71校が入ったものの、上位200校は東大と74位の京都大(昨年91位)のみ。400位内には大阪大、東北大、東京工業大、名古屋大、九州大が入った。(安田教育研究所)


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「国立大附属校は多様な入学者選考を実施すべき」有識者会議が提言(2017年9月19日)
文部科学省の「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」は8月29日報告書をまとめた。
この会議は、教員需要の減少期到来を見据え、国立教員養成大学・学部に関わる機能を見直し、教育全体の質の向上に資するために設置されたもの。その中で、「国立大学附属学校についての対応策」として、次の2つの提言を行っている。 ① すべての国立大学附属学校は、附属学校の本来の使命・役割に立ち返り、多様な入学者選考の方法を実施すべきである。選考にあたっては、例えば、学力テスト等を課さず、抽選と教育実習の実施校かつ研究・実験校であることに賛同する保護者の事前同意の組み合わせのみで選考する方法や、学力テスト等を課す場合であっても、選考に占める学力テスト等の割合を下げることなど、各学校の特色に応じつつ、多様性の確保に配慮し、そのために必要な教育環境の整備も検討されるべきである。 ② 同一の国立大学の附属学校間で、無試験ないしそれに近い形で進学が可能となる、いわゆる連絡進学あるいは内部進学と呼ばれる仕組みについても、各大学及び附属学校において、多様性及び公平性等の観点からの見直しが検討されるべきである。        ★10年に一度ぐらいにペースで起こる議論だが、教員養成系大学の付属校では、かなり深刻な受け止めが広がっている。7月には、いじめ事件などで課題噴出の学芸大附属高校が初の塾対象説明会を開いて、募集のテコ入れを図っている。(安田教育研究所)


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来春の英語4技能入試情報が一望できます(2017年9月19日)。
英語の外部資格試験を利用する大学の様子が分かります。

ぜひご利用ください。 9月の「KIRI9月号」の冒頭記事でも触れました明治大学・法政大学のほか、早稲田大学などの4技能入試の実施状況に関する情報が入手できます。

英語4技能試験情報サイト:http://4skills.jp/index.html


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都立高校の進学実績競争を見る(2017年8月19日)
※以下の原稿は『安田研通信』6月下旬号の原稿(平松副代表執筆)を転載したものです。都立高校の進学実績は近年目を見張るほど向上しています。その裏には、各都立高校の熾烈な競争があるようです。以下、その実態を見てみましょう。
◆八王子東と立川は基準下回る
 都立高校の「進学指導重点校」や「進学指導特別推進校」などの指定期限が迫ってきた。現在の指定は2013年からの4年間、17年度末まで。来年度からは新しい指定期間が始まることになる。「進学指導重点校」の場合、前回の指定が発表されたのは、前年の6月だったことから、18年度以降の指定は間もなく発表されるのではないかと思われる。今回は、各校がHPなどで公表している大学合格実績をまとめ、新たな指定の可能性について調べた。

都では大学進学にとくに力を入れる学校を、次の4つのグループに分けて指定している。
  • 進学指導重点校(進学重点校)…日比谷、西、国立、戸山、八王子東、青山、立川の7校。
  • 進学指導特別推進校(特進校)…小山台、駒場、町田、新宿、国分寺、国際の6校。
  • 進学指導推進校(推進校)…三田、豊多摩、竹早、北園、墨田川、小松川、城東、江北、江戸川、日野台、武蔵野北、小金井北、調布北の13校。
  • 中高一貫六年制教育校…桜修館、小石川、南多摩、立川国際、三鷹(以上中等教育学校)、白鷗、両国、武蔵、富士、大泉(以上併設型)の10校。
一方、都では、東大、京大、一橋大、東工大および国公立大学医学部医学科(防衛医科大学校を含む)を「難関大学」と位置付け、これらの大学に合格することを、都立の進学校の目標に掲げている。

とくに進学重点校には、「難関大学」に現役で合格した人数を評価基準のひとつとし、最低15人以上の合格を求めている。

「難関大学」現役合格者の推移 左のグラフは、最近3年間の進学重点校の「難関大学」現役合格者の推移を示した。赤い横線が15人のラインだが、今年これを超えたのは、日比谷(56人)、西(35人)、国立(36人)、戸山(29人)、青山(16人)の5校のみ。八王子東(10名)と立川(11名)は、最低15人の基準に届いていない。

◆進学重点校の合格実績
新しい指定がどうなるか注目されるが、ここで、今年までの進学重点校の大学合格実績についてまとめておく。

下のグラフでは、2010年からの進学重点校の難関大合格者数(7校計)を、現役と浪人の合計(棒の下部が現役、上部が浪人)で示した。

7校計 日比谷・西・国立


棒の長さからも着実に増えていることが分かるが、とくに、棒の下部、現役の伸びを見ると、10年→11年と13年→14年に大きくなり、それぞれ新しいステージに上っているように見える。

10年→11年には、日比谷が前年より8人増やして49人に、西も14人増の38人に、国立は15人増やして34人にと、3校で合計37人を増加させた。

11年の3校計は121人で、初の100人(現浪計では200人)超えをマーク、3校が重点校をけん引する形を作った(2段目のグラフ。棒の下部が現役、上部が浪人)。

13年→14年には、陥落寸前の青山が前年の6人から17人と急増して、奇跡のV字回復を遂げている。

その後、14年→15年には、戸山が10人増、15年→16年には日比谷が23人増など、次々に伸長する学校が現れて、高いステージを保っている。最近3年間、7校合計の合格者は200人の目前まで来ている。

一方、ここへきて八王子東と立川の停滞が目立つようになった。14年からの4年間では、八王子東が15人→14人→7人→10人、立川は14人→16人→9人→11人と、八王子東が3年連続、立川は2年連続して、基準ライン(15人)を割り込んでいる。とくに八王子東は、昨年今年と東大、京大への現役合格者がゼロ。かなり深刻な状況だ。

八王子東 立川


今春の大学別の合格者数

上の表では、今春の大学別の合格者数を示した(カッコ内は現役の人数、医学部には防衛医科大学校を含む)。

昨年日比谷は、現浪計53人と44年ぶりに50人を超える東大合格者を出した。今年は、現浪計では45人にとどまったが、現役合格33人は近年で最多。難関大合計の現役合格56人は、これまでで2番目に多い数。重点校全体の実績は、昨年に続いて、日比谷を頂点とする富士山型の分布を描いている。

日比谷 国立


西 富山


◆指定を勝ち取った青山
ところで、現在の指定があった12年に、青山は指定されていない。都教委が発表した文書では次のような扱いになっていた(2012年6月14日発表)。

進学指導重点校の新たな指定

① 日比谷、西、国立、八王子東、戸山、立川の6校を、平成25年度から29年度までの5年間、進学指導重点校に指定する。

② 現在指定している青山高校は、進学指導重点校として満たすべき水準に達していないが、在校生のための特例措置として平成25・26年度の2年間に限り、進学指導重点校に指定する。

※なお、平成25年度及び平成26年度入試の大学合格実績において選定基準に適合もしくはそれに準じた顕著な実績向上が見られたときは、平成29年度まで新たに進学指導重点校として指定する。



平成24年春(2012年)の青山の合格実績は、難関大現役合格者数が8人(浪人2人合計10人)というまさに危機的状況だった。

「難関大学」現役合格者の推移 さらに上記のような特例措置を受けるが、顕著な実績向上を促されたはずの25年(13年)も、現役6人(浪人9人計15人)という無残な結果に終わり、まさに命運尽きかけた翌26年(14年)、17人(浪人7人計24人)という奇跡的な回復を見せ、重点校指定を勝ち取っている。

この学年には、筆者の教え子がいたが、その子の言葉では、「自分たちの学年で重点校の指定を奪われるのは絶対イヤだ。みんなで何とかして合格しよう」という気合が、3年生全員にあふれていたのだという。

選定の基準は合格者数だけではない。センター試験の結果が、「①5教科7科目で受験する者の在籍者に占める割合…おおむね6割以上。②難関国立大学等に合格可能な得点水準以上の者の割合…おおむね1割以上」が必要とされる。筆者の手元にそのデータはなく、八王子東や立川の陥落を断定できないが、可能性は高いと考える。

ただし、その場合でも青山と同様に、18年度から2年間の猶予が与えられるだろう。2校の生徒が、青山同様の意気込みを持つことができるかどうか…。

ところで、格上げはないのか?新宿が昨年9人、今年12人と伸ばしているが、これまで15人のラインを超えたことがない。奥の手としては、前回の指定の折、「進学指導重点校と同様に難関国立大学等への進学希望に応える進学指導を行う必要がある」とされた中高一貫校からの指定が有力だ。昨年→今年の実績は、小石川…19人→31人、武蔵…23人→17人と、指定に十分な資格を持っている。


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共通テストの制度設計 現行のセンター試験の再検証を(2017年8月19日)
以下の原稿は、ある会でお会いした県立掛川西高校の国語科の駒形教諭が、2020年度に施行される「大学入試共通テスト」に関して寄稿された提案です。高校現場からの示唆に富む貴重な意見です。(日本経済新聞 8月14日付)
 今回の入試改革の特徴の一つが、大学入学共通テストの国語と数学における記述式問題導入である。国語に関して言えば、背景には大学入試センター試験受験者を数多く抱える高校の国語の授業が読解偏重になっていて、改革が主唱する「学力の3要素」が示す「表現力」を軽視しているという批判がある。

国語の試験時間  そこで、生徒の表現力を養うために共通テストに「条件付き記述式」を導入し、高校の国語の授業を変えようというのが改革の筋書きである。とはいえ、50万人以上が受験する大規模テストでマークシート方式の全廃は現実的ではなく、マーク式と記述式を併用する。  実施方針で気になるのは、100分の試験時間内にマーク式大問4題と記述式大問1題を課すことだ。現行のセンター試験を十分に検証していれば、この形態はない。センター試験・国語の最大の問題は80分という時間の短さ、慌ただしさにあるからだ。時間内に問題文を読みきれないまま、解いている受験者も少なくない。その上に、記述式大問1題を20分で解かせれば慌ただしさは増すばかりだ。  そもそもマーク式と記述式という異なる解答方法を求め、素点と段階値という異なる評価方法を用いるならば、センター試験・英語の筆記とリスニングのように、それぞれ異なる時間帯を設定するのが自然である。本気で表現力を重視するならば、推敲(すいこう)の時間も含めせめて30分程度の別枠設定は必須だ。

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 評価についても疑問を抱く。3段階から5段階の段階評価となるようだが、結局のところ各大学はこの段階評価を数値化して選抜材料とするはずだ。そうでないと傾斜配点の機能が失われる。文部科学省が強く独自性を求めている各大学の入学者受け入れ方針は、この傾斜配点の比率にこそ具現化されるはずだが、それに支障を来すようでは本末転倒である。

 複数の国立大学関係者と話をすると、共通テストが導入される20年度を待たずに各大学独自の2次試験(個別試験)の配点を高くする動きを感じる。いまだ全体像がつかめない共通テストに対する大学の不信感は強い。

 逆に言えば、基礎学力の測定という点でセンター試験への信頼度は非常に高いということだ。前身の共通1次試験も含めれば40年にも及ぼうとする蓄積のもと、センター試験は年ごとに改善を重ね、作問から実施・採点・結果通知に至るまで、大規模共通試験としての完成度は極めて高い。  日常の高校の授業で定着させることが可能で、なおかつセンター試験で測れていた基礎学力の成果が、共通テストの導入で測りにくくなってしまっては元も子もない。少なくない高校・大学が共通テストの制度設計にある程度の関心は持っても半ば冷めた目で見ていることは、ここまでの議論があまりに迷走していたからにほかならない。

 今回、実施方針とともに示された「思考力・判断力・表現力を重視した作問となるよう見直しを図る」とされたマークシート式問題のモデル問題例にも、一部に著しい難化が見られる。各科目の平均点を6割に置く現行センター試験でも、最上位層・最下位層では、問題が易しすぎるあるいは難しすぎるために、識別機能が働いていない。

 示された方向で共通テストの制度設計がされると、識別機能の一層の低下は必至だろう。識別機能の低い共通テストに入学者選抜試験としての価値はなく、受験者数の想定も難しくなる。受験者数を想定できなければ受験者層も特定できず、平均点管理も危うくなるという悪循環に陥る可能性も決して低くはない。

□ □ □

 これは、共通テストに、入学者選抜という本来の機能以外の目的を詰め込もうとしたことに由来するのではないか。  共通テストの国語のモデル問題例は、学習指導要領が重視する「言語活動」(討論や対談)の形をとった作問となっているが、共通テストで出題されるからといって、日常の授業が言語活動に重きを置くようになると考えるのは短絡的だ。すでに多様化した大学入試で、センター試験が果たしてきた役割についても十分な検証がされているようには思えない。

 大学入試を変えれば、高校教育も大学教育も変わるはずだ、とする考え方は一面的なものにすぎない。高校も大学も、両者の関係も、現場の地道な営みでひと昔前では考えられないほどに着実に変化してきた。選抜を伴う大規模共通試験に、高校教育、大学教育を改善する機能まで持たせることが、真の高大接続改革ではないはずだ。

 今回の改革も、当初は複雑化しすぎたセンター試験の簡素化を目ざしたのではなかったか。それ自体は高校現場も望んでいることだが、実際に出てきた共通テストの制度設計は、それとは逆の方向に進もうとしている。

 繰り返しになるが、共通テストのよりよい制度設計にはセンター試験の検証が不可欠だ。どこが優れていて、改善点は何なのか、それぞれを分析することで共通テストの姿も決まってくる。

 今年度、来年度のプレテストは5万人規模、10万人規模で実施される。高校現場の協力を得ずして、これらの実施は不可能だ。主催者側にとって必要なデータを集め、検証の材料とするだけでなく、生徒とともに協力する現場教員の声にも積極的に耳を傾け、最終的な制度設計にいかそうとする姿勢を切に望みたい。


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東京の私立高校無償化、年収760万円未満、新年度から(2017年1月26日)
1月16日、小池都政は世帯年収760万円未満の都内在住の私立高校生に対し、実質無償化する方針を決めた。2017年度の予算に、前年度比で2倍超の138億円を計上している。2月の都議会で可決されれば、新年度から支給されることになる。公明党などの主張にも合致し、自民党としてもなかなか反対できないのではないか。
対象は、都内に住む都内外の私立高校に通う生徒約16万7千人のうち約5万1千人がその恩恵に預かることになる。昨夏の都知事選で「給付型奨学金」を公約した小池百合子知事は、当初は「910万円未満」の世帯を対象に検討していたが、予算枠や他の施策とのバランスを考え、都内の平均世帯収入約650万円が含まれる「760万円」で決着した。(各種新聞等の記事をもとに要約)

この決断は、今後の国やほかの地方公共団体の教育予算にも大きな影響を与えるものと思う。日本の教育予算は先進国でもかなり見劣りする現状を考えれば、大いに歓迎したいところであり、大学生にも給付型奨学金を大幅に増額することを期待したい。

今回の小池都政の決定には裏の事情もありそうだ。以下は「日刊ゲンダイDIGITAL」の記事の概要である。

小池氏の狙いは、夏の都議選で憎き自民都連の「集票マシン」を分断することだ。私立高校の授業料の実質無償化は、「公私格差の解消」を要望してきた私立中高協会としては大喜びだが、今まで自民党都連の後押しをしてきた同協会としては悩ましい決断が迫られている。私立中高協会の担当者は「満額以上の回答です」と大歓迎だが、来る都議選で小池サイドに反旗を翻すわけにはいかなくなる。

あまつさえ、小池都知事はすでに200億円に上る「政党復活予算」を廃止し、利益供与を受けてきた業界団体に対し、その要望を公開ヒヤリングという手法で対処した。トップバッターに選ばれたのが私立中高協会だった。近藤会長(八雲学園理事長兼校長)は欠席したが、2人の副会長は授業料の公私格差を要望している。

小池知事、恐るべし、といったところである。


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早稲田大学学生部学生生活調査報告(2016年10月25日)
早稲田大学学生部では、毎年大規模な「学生生活調査」を実施して学生生活の実態と傾向を把握し、その結果を学生生活支援の施策を検討する際の基礎資料として活用しています。早稲田大学の学生の実情はどうなのか。大変興味深い内容が満載です。
外部リンク(早稲田大学):クリック


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英語「話す力」も評価を…都立高入試(2016年10月20日)
都独自の英語教育の推進策を検討してきた有識者らによる「都英語教育戦略会議」の報告書がまとまった。
使える英語力の育成に向け、都立高校の入試に「話す力」を評価するスピーキングテストの導入を検討することなどを都教育委員会に提言した。都教委は課題などを整理し、来年一月をめどに今後の取り組み方をまとめる。

中学校の学習指導要領では「読む・書く・聞く・話す」の四つの技能を身に付け、コミュニケーション能力の基礎を養うと明記されている。都立高校入試では一九九七年度からリスニングテストが導入されているが、スピーキングテストは採用されていない。

報告書では「今後、四つの技能を測る試験が大学入試に一層多く活用されることが予想される。四技能をバランスよく評価することが重要」と指摘した。都教委によると、スピーキングテストは大阪府などが高校入試への導入を検討中。実用英語技能検定(英検)など、外部検定の結果を入試の得点に換算する案などが出ている。

この会議は大学教授や学校関係者らで構成し、二〇一三年から議論を続けてきた。提言は二十八項目あり、都立高の上位10%程度の生徒に英検準一級程度の英語力を身に付けさせるなどの目標も掲げた。

(東京新聞2016年9月10日から)


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「留年は破滅ではない」京大メッセージに反響(2016年10月20日)
京都大学が、留年に悩む学生向けにWebサイトで公表しているメッセージが、「優しい」「社会人にも共通する話だ」とネットユーザーの反響を呼んでいる。
もしあなたが「留年したら終わりだ」とか「中退したら破滅だ」とか、悲壮な思いで考えているとしたら、冷静になって欲しい――京都大学が、留年に悩む学生向けにWebサイトで公表しているメッセージ「留年について」が、ネットで注目を浴びている。

「留年は単に個人の失敗としてとらえられるべきものではない」と指摘した上で、留年の悪循環から脱出するための工夫や、留年や中退は「破滅」ではないことなどを語りかける内容で、「優しい」「社会人にも共通する話だ」とネットユーザーの反響を呼んでいる。

京大全体の留年率は、ほかの大学と同等の約2割と説明。「これだけの人が留年したり退学するということは、留年や退学は、単に個人の失敗としてのみ捉えられるべきものではない。現在の日本の社会において大学というシステムは、一定数の留年や退学を生み出すようにできているものだ」と指摘する。

留年を繰り返させる行動パターンとして、留年を家族や友人に隠そうとしたり、限界まで履修登録して一挙に挽回しようとしたり、「留年している自分には日々の生活を楽しむ権利などない」と考え、勉強だけに専念しようとしたり、「卒業しなければ生きていけない」と考える、時期尚早に「来年からがんばろう」と考える――などを挙げる。

留年脱出のための工夫として、朝出かけるのがつらい人は、近所の自販機まで行って缶コーヒーを買って飲むなどの習慣を作ること、教室に知人がおらず、欠席時に授業関連情報を入手できない人は、京大生向けコミュニティーサイトやSNSなどを活用し、情報をもらうことなどを提案している。

「留年したら終わりだ」「中退したら破滅だ」など悲壮な思いを持っている人には、「冷静になってほしい」と諭し、高校入学者100人のうち、53人はどこかで留年、中退または退職しているという研究を紹介。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、孫正義、タモリ、秋元康、堺雅人など大学を中退して社会で活躍している人も多数おり、「著名人に限らず、当たり前に普通に働いてこの社会を支えている大学中退者はいくらでもいる。留年経験者なら、なおのこと、たくさんいる」と解説する。

退学したいと考えているが、退学したら「人生破滅」という恐怖のイメージから退学はできないという考えに傾いている人には、「一度、やめるという選択肢を落ち着いて現実的に考えてみてはどうでしょうか」と提案。「やめるという選択肢を十分に検討することで、続けるという選択は、より積極的で能動的なものになる」と指摘する。

人生の岐路では「絶対に失敗のない完璧な決断などありえない。迷って当たり前、たじろいで当たり前」とし、「必要ならば一緒に考えていきましょう」と寄り添うとともに、「大学における進路変更がより自由に安心してできるような社会をみんなで実現していきたいものです」と締めくくっている。

(ITmedia2016年10月18日から)


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東大副学長 南風原朝和理事に聞く(高校生新聞)(2016年9月5日)
──記述式が中心の一般入試は、変えない方針でしょうか。
南風原 現時点では変えることは考えていません。東大の入試の在り方について否定的な声は学外からも学内からも聞こえてきません。高校の各教科で習う内容を「本わかり」、つまり本当に深く理解すれば解けるように、難しい用語は出題しないなど、高校教育に配慮しながら作問をし、そして時間をかけて採点をしています。

──「本わかり」とはどのようなものですか。
南風原 本質的な理解を示します。「要するに何なのか」ということを自問して答えられることです。  「知識」という言葉は矮小化されがちですが、機械的な暗記は知識ともいえないものです。「本わかり」を伴う知識は、高く深いレベルのものです。それは、探究活動を通じて身に付くこともあるし、本やネットで、ということもある。知識を深めるにも多様な方法があります。

──東大の一般入試でも「本わかり」を問うているのですね。
南風原 東大のアドミッションポリシーに、入試の基本方針として「知識を詰め込むことよりも、持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視」するとあります。これは、高校の学習を「本わかり」するように取り組んでいれば解ける、ということです。加えて、(15年に就任した)五神真総長は、「自ら原理に立ち戻って考える力」「考え続ける忍耐力」「自ら新しいアイディアや発想を生む力」の3つの基礎力を鍛えることを求めています。これらは、高校での学びにも通じることだと思います。
答案と向き合う中で採点基準が決まる

──五神総長が文部科学省の会議に出した意見書には、「記述式試験は受験生との対話」とあります。どういう意味でしょうか。
南風原 2つの意味があります。まず、出題が大学からのメッセージであり、それに解答するという対話です。格闘しがいのある問題を出し、それにチャレンジしたいという生徒を歓迎するということです。入試で問われている力は、大学の学習で必要なものです。入試を通じて、高校と大学は接続しているのです。

 もう一つ、採点の過程が対話なのです。私が授業で実施する統計の試験でも、いくつかの解を想定して作問したとしても、採点を始めると、より良いスマートな解が学生から出たり、逆に思ってもいない誤りが出たりすることもあります。完全な正解ではない解を比較して、「どちらが良い解か」を決める中で順番付けがはっきりしていきます。こうして、採点するうちに基準がより明確になっていき、何を測っているのかが確定していくのです。

 (一般入試では)その作業が、何千人かの受験生の答案を通してのやりとりになります。もちろん初めから基準はあるのですが、採点をするうちに「さっきの答案は、良いじゃないか」と戻って見直すこともある。こうして基準が洗練されていく過程が、受験生との対話のようなやり方になっているのです。 センター試験があるから安心して記述式を出題できる

──アドミッションセンターを設置することを計画していますね。何に取り組むのでしょうか。
南風原 高大接続センター(仮称)を設置します。これまで入試の追跡調査は、入学後の学業成績を定量的に見ていましたが、推薦入試での入学者の追跡の物差しは多様にしたい。学業成績だけでなく、面接も含めて定性的な追跡を丁寧にして、今後の入試や教育の企画に生かします。

 また、国や国立大学全体の入試改革の動きをふまえてどうするか。東大の個別試験の評価は高いですが、(外部の)状況が変化したら、今のままでいいのかという検討はしないといけない。そのための専門的な人材を置くことを考えています。

──委員を務めた、文科省の高大接続システム改革会議の最終報告はどう見ていますか。会議に総長が出された意見書からは、「センター試験廃止」への懸念が感じられました。
南風原 高大接続改革が今後どう動いていくのかが、最終報告でもはっきりしていません。新しいテストの科目をどうするか、という議論すら十分にはされなかった。新しいテストは、目的と手段が乖離している部分があり、この最終報告に納得している人はほとんどいないのではないか。心配です。

 センター試験が、50万人以上が受験する規模で構築・運用されながら、問題内容への批判がほとんどないのは上出来だと思います。今は「センター試験廃止」という言葉が一人歩きしている。総長が言うように、センター試験の「資産価値」を大事にして改善すべきところを改善するという慎重姿勢が必要です。

 (センター試験の後継とされる)「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は、記述式を入れるとしていますが、東大入試のような「深い記述式」とはだいぶ違い、設問条件を満たしているかどうかの表面的・機械的な採点を想定している。にもかかわらず、「深い記述式」であるかのように、「思考力・判断力・表現力」を評価すると言っている。これも乖離です。

 選択式には、幅広く、多くの内容について効率的に試験できるという良さがあります。東大は、選択式のセンター試験を一次試験にしているから、安心して二次試験で内容を絞った「深い記述式」を出題できているのです。



(高校生新聞 2016年5月号から)


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記述式問題 大学が採点か 新テスト案(2016年9月5日)
新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の記述式問題の採点を、出願した大学が行う案を、国大協入試委員会が検討していることが分かった。

19日公表された論点整理では、国語の採点を例に、新テストをセンター試験と同様の1月中旬に行い、マークシート式の採点は新テストの実施主体が担い、記述式の採点は2月の出願後に各大学が実施すれば時間的余裕ができ、大学独自の採点基準の採用も可能になるとまとめている。同時に、大学の負担軽減策が不可欠とも指摘している。

一方、新テストの実施主体が記述式も採点する場合として、試験の実施時期を12月中旬などに前倒しする案も検討しているが、高校側の理解を得るのは困難と指摘。現行日程で試験を実施する場合は、採点の時間が十分に取れなくなるなど問題点も挙げている。文科省は17年度初めまでに新テストの実施方法などを決める予定だ。(安田教育研)


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新テストの試行 来年度から5万人規模で(2016年9月5日)
新テストの2020年度からの導入に向け、文部科学省は来年度、5万人規模の試行テストを実施する方針を決めた。同省は17年度予算の概算要求に試行テストの費用として11億円を盛り込む。

試行テストは来年11月、高校3年生を対象に国語、数学、地理歴史・公民、理科、英語で実施。首都圏の100会場で5万人が受けることを想定している。受験シーズン直前のため、現役高校生の確保が難しい場合は大学1年生も対象とする。20年度から導入する新テストでは、国語と数学では記述式問題も導入する。そのため、試行テストでは、試験内容や難易度、運営体制、トラブル対応などを検証し、採点用のマニュアルも作成する。18年度は12月に全国200か所、10万人規模で実施するという。(安田教育研)


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私立の大学占有率=合格数÷卒業生数(2016年6月22日)
昨年と比べると、「早慶上理」では、公立は11%→11%で変わらず、私立は22%→21%と低下した。 「GMARCH」では、公立は26%→27%と上昇、私立は変わらなかった。国立では大きな変動がなかった。

今春「早慶上理」の占有率が高かった学校の順に並べると、

①女子学院(197%)、②日比谷(157%)、③開成(141%)、④豊島岡女子学園(138%)、⑤麻布(137%)、 ⑥本郷(129%)、⑦筑波大学附属(128%)、⑧駒場東邦(128%)、⑨渋谷教育学園渋谷(125%)、⑩西(123%)、 ⑪世田谷学園(123%)、⑫武蔵(私立)(122%)、⑬頌栄女子学院(122%)、⑭東京学芸大学附属(121%)、 ⑮鴎友学園女子(114%)など。

女子学院(昨年170%)、日比谷(128.3%)と、 今年のトップ2校は、両校ともに前年より20%以上伸張している。 去年はランクインしていなかった筑波大学附属が上位に食い込んでいる。 15位までは、国立2校、都立2校のほかはすべて私立が占めている。

「GMARCH」の占有率の高い順に並べると、

①鴎友学園女子(147%)、②吉祥女子(144%)、③青山(132%)、④立川国際(中教)(131%)、 ⑤国立(131%)、⑥頌栄女子学院(126%)、⑦駒場(124%)、⑧新宿(118%)、⑨帝京大学(117%)、 ⑩武蔵野北(112%)、⑪世田谷学園(111%)、⑫桜修館(中教)(111%)、⑬立川(108%)、⑭国分寺(106%)、 ⑮大妻(106%)など。

去年は、鴎友学園女子(139%)、帝京大学(137%)、戸山(131%)、 吉祥女子(121%)、成城(120.3%)、富士見(120%)の順だった。

学校も順位も入れ替わりが大きい。都立中高一貫校が上位に来ている。

立川国際(中教)の母体校は北多摩高校で、1学年8クラスだったが、一貫校になって4クラスに減り、占有率が高くなった。 (「安田教育研究所」集計)


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早慶上理+GMARCH占有率…私立中堅で減少(2015年6月29日)
今春、都内の高校や中等教育学校から、「早慶上理」や「GMARCH」に合格した件数を学校ごとにまとめ、各校の卒業生数で割って求めた占有率が明らかになった。今春「早慶上理」の占有率が高かった学校の順に並べると、①女子学院(170%)、②世田谷学園(160%)、③豊島岡女子学園(134%)、④海城(135%)、⑤麻布(133%)、⑥筑波大附属駒場(132%)、⑦桜蔭(131%)、⑧開成(129%)、⑨本郷(128.4%)、⑩日比谷(128.3%)、⑪西(127%)、⑫雙葉(123%)、⑬頌栄女子学院(117%)、⑭武蔵(私)(115%)、⑮渋谷教育学園渋谷(113%)など。
15位までは、国立1校、都立2校のほかはすべて私立が占めている。

「GMARCH」の占有率の順に並べると、①鴎友学園女子(139%)、②帝京大学(137%)、③戸山(131%)、④吉祥女子(121%)、⑤成城(120.3%)、⑥富士見(120%)、⑦青山(119.6%)、⑧立川(118.8%)、⑨武蔵野北(118.4%)、⑩大妻(116%)、⑪晃華学園(115%)、⑫順天(113%)、⑬八王子東(112%)、⑭頌栄女子学院(111%)、⑮田園調布学園(110%)など。

帝京大学(昨年107%)、戸山(同94%)、成城(同90%)、富士見(同105%)、青山(同108%)、立川(同97%)など、昨年より上昇した学校が目につく。(データ提供は安田教育研究所)


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英語教員の英検取得率の実情(2015年6月29日)
文部科学省は5月25日、2014年度英語教育調査の結果を発表した。その中の教員の英語力調査によると、全国の公立中、高校で英語を教える教員のうち、 検準1級以上かそれに相当する資格を取得しているのは、高校で55.4%、中学で28.8%だった。
前年度の52.7%、27.9%からわずかに上昇したものの、2017年度までに高校で75%、中学で50%という 政府の教育振興基本計画の目標にはほど遠い値だ。


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教育資金贈与12万件に迫る…総額8000億円超(2015年6月29日)
祖父母から孫への教育資金の贈与が1,500万円まで非課税になる制度、「教育資金贈与信託」が伸びている。一般社団法人信託協会は4月28日、2015年3月末の教育資金贈与信託の受託状況を公表した。信託の契約数は118,554件、設定額合計は8,030億円。うち750億円が教育費として引き出されている。
一昨年4月の取扱開始からわずか2年で、贈与の件数は約12万件に迫り、総額は8,000億円を超えた。 今年度から対象に留学渡航費や定期券代も加わり、利用はさらに広がりそうだ。期限は2019年3月まで。


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17年ぶりに得点調整…センター試験(2015年2月10日)
今年の大学入試センター試験で「物理I」と「生物」の平均点に大きな差が出たため、科目間の得点調整が行なわれた。得点調整が行われるのは、1998年以来、17年ぶり2度目。
中間集計では「理科②」のうち旧課程の「物理Ⅰ」の平均点が69.93点だったのに対し、 新課程の「生物」が48.39点と、21点以上の差が出た。  大学入試センターでは、試験の難易度に差があったとして「理科②)」の選択科目6科目で平均点の最高点と 最低点の差が15点になるよう以下のように実施された。

調整の結果、最大で8点引き上げられる受験生もいるという。


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女子大初の工学系大学院発足(2015年2月10日)
奈良女子大(奈良市)とお茶の水女子大(東京都文京区)が、 女子大としては全国初の工学系修士・博士課程となる「生活工学共同専攻」(仮称)を2016年度、共同で大学院に設けることになった。
「工学女子」という言葉が世間で言われるようになっても、国立の女子大(この2校のみ)には工学系の修士・博士課程はなかった。

工学分野の人材育成を目指した初の連携。それぞれの付属中学・高校でも、数学や物理の授業を充実させるなどして、 優秀な「理工系女子」を送り出す計画という。

生活工学は、家政学と工学を融合させ、女性の視点を盛り込み、掃除ロボットのような日常生活に役立つ商品の開発を目指す。

奈良女子大は人間文化研究科に、お茶の水女子大は人間文化創成科学研究科に、それぞれ新設し、学位は両大の連名となる。

定員は修士課程(2年)が14人、博士課程(3年)が4人の予定。

両方の大学の教員が分担して受け持ち、講義をネット中継することで、どちらの大学でも同じように学ぶことができるようにする。


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英語の外部試験に関する連絡協議会が設置される(2015年2月10日)
大学入試改革の答申で、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の英語で外部試験の活用が議題に上っているが、このほど文科省の管轄で「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」が設置された。
30名の委員の中に、私立中学・高校のメンバーとしては 日本私立中学高等学校連合会常任理事の平方邦行氏(工学院大学附属中学校・高等学校校長)が入っている。

協議会では、4技能の総合的な育成及び適正な評価の観点から、入学者選抜における資格・検定試験の活用に関する有効性や留意すべき点について、具体的な指針案を策定する予定。下記のことなどが検討される。
  • 学習指導要領に沿った4技能の能力との親和性と測定可能性
  • 評価の妥当性(語彙レベル、目標言語使用領域、出題意図等)
  • 多様な生徒・学生の能力への適合性
  • 妥当な換算方法(例:みなし満点、点数換算等)
  • 受験のしやすさ(経済的状況に配慮した受験料、地域バランスに配慮した実施体制、受験回数等)
  • 適正・公正な試験実施体制(試験監督、情報管理等)
  • 国際的な通用性等
なお、下記のサイトで各外部テストの特徴がつかめる。(高木)

http://www.mext.go.jp/


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達成度テスト・発展レベル…今の小6生受験時から(2014年7月11日)
中央教育審議会の特別部会が、現行の大学入試センター試験に代わる「達成度テスト・発展レベル(仮称)」について、早ければ平成33年度入試から実施するのが適当とする答申素案を出した。これが実現すれば、現在の小学6年生から対象となる。
素案によると、発展レベル試験は大学教育を受けるために必要な「主体的に考える力」の把握が目的で、基礎的知識だけでなく活用力の測定を重視しており、そのため、試験内容についても、複数教科にまたがった「合教科・科目型」や、教科の枠にとらわれない「総合型」の問題を、従来の「教科型」に加えて実施することが適当としている。

また、志願者に再挑戦の機会を与えるため導入を検討している、年複数回の実施については、運営側の負担を考慮し、「1回の試験を1日で終えることを前提に、年2回が適当」とした。

1点刻みの素点による成績表示は行わず、段階別表示など複数の表示方法を示すとともに、記述式問題やCBT(コンピューターを使った出題・解答方式)の導入などについては、1年以内をめどに結論を得るとしている。

注)高校側や大学側からの意見を汲みあげたものでなければ、実施は難しいのではないか。また、教科ごとの学会の意見も無視できないし、英語は外部テストを導入するという文部科学省の方針との整合性も考え合わせなければならない。(高木)


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日本の教員の勤務時間は最長(2014年7月11日)
経済協力開発機構(OECD)が、加盟国を中心とする世界34か国・地域の「中学校の教員」などを対象に、勤務環境などを調べた「国際教員指導環境調査(TALIS)」の結果を発表。
日本の主な特徴は:
  1. 日本の教員の勤務時間が調査対象国の中で最長であること、
  2. 日本の教員は校内研修・授業研究に熱心で、有能であるにもかかわらず、自分の指導に自信が持てないでいること、
  3. 日本の校長の仕事に対する満足度は最も低いこと。
このほか、日本では女性教員の割合が少なく、参加国の中で唯一、5割以下だった。

注)公立中学の英語教師の27.9%、公立高校の英語教師の52.7%が英検準1級以上を取得しているという(毎日新聞2014/6/19)。文科省のいう準1級以上が英語教師の基準だとすると、いかにもさみしい。英語だけに限らず、教科研究に時間を使える環境にないのが日本の教育界の現状。ここをなんとかしないと問題の解決にはならないのではないだろうか。(高木)


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お茶の水女子大、来年度から4学期制…留学促進(2013年9月7日)
お茶の水女子大(東京都文京区)が学生の海外留学促進のため2014年度から、4学期制を全学部・大学院で導入することがわかった。
文部科学省によると、大学院大学を除き、国立大で全学実施は初となる。東京大が15年度末までの4学期制への全面移行を決めたほか、検討する他大学も増えており、4学期制移行の流れが加速しそうだ。

お茶の水女子大は現行の前期・後期をそれぞれ二つに分割し、各学期を約2か月間とする。6、7月の第2学期に必修科目をなるべく開講せず、8、9月の夏休みと合わせて長期の休みを学生が取得できるようにして、海外大学のサマープログラムに参加しやすくする。教員養成課程など通年での履修が必要な科目もあり、可能な科目から順次実施していく。(読売新聞)

※これは秋季入学の代替え策と考えられる。(編集部)


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大学受験へ向けて第4回:現役ランキング(2009年9月)
今回は、高校別に難関大学に現役でどのくらい進学しているのかを 首都圏中心に調べてみました。ここで使用する数字は、「進学者数」であって「のべ合格者数」ではありません。開成高校と海城高校など一部の学校はアンケートに未回答のため集計には入っていません。(この資料は、「安田教育研究所」の好意によって利用させていただいております。)
◎首都圏難関国立大学現役進学者数ランキング

ランキング10 位までと通塾している主な学校

東京大学:①筑波大学付属駒場78名、②桜蔭51名、③東京学芸大学付属47名、④麻布44名、⑤栄光学園41名、⑥聖光学園37名、⑦浅野21名、⑧渋谷教育学園幕張19名、⑨県立浦和18名、⑩女子学院18名、⑪筑波大学付属17名、⑪駒場東邦17名、⑬桐朋13名

東京工業大学:①浅野18名、②駒場東邦13名、②芝13名、④都立西12名、⑤県立千葉10名、⑤麻布10名、⑤横浜翠嵐10名、⑧攻玉社9名、⑧桐朋9名、⑧早稲田9名、⑬世田谷学園8名

一橋大学:①都立西10名、②都立日比谷9名、③渋谷教育学園幕張8名、③東京学芸大付属8名、③桐朋8名、③早稲田8名、③浅野8名、⑧都立戸山7名、⑧麻布7名、⑩都立国立6名、⑪駒場東邦5名

上位30位ぐらいまでで見てみると、難関国立3大学ともに顔を出しているのは、国立で1校(学大)、公立は5校(浦和、千葉、西、国立、日比谷0、私立は10校(麻布、浅野、渋谷教育学園幕張、女子学院、駒場東邦、豊島岡女子学園、桐朋、芝、城北、早稲田)と私立優位。いずれも中高一貫校で、男子校が7校となっています。

◎首都圏難関私立大学現役進学者数ランキング

早稲田大学:①桐蔭学園45名、②山手学院44名、③桐光学園43名、④女子学院40名、⑤県立大宮39名、⑤市川39名、⑤豊島岡女子学園39名、⑧国学院久我山38名、⑨栄東37名、⑨県立千葉37名、⑪城北36名、⑱渋谷教育学園渋谷29名

慶応大学:①渋谷教育学園幕張44名、②都立日比谷43名、②豊島岡女子学園43名、④浅野37名、⑤頌栄女子学院34名、⑤桐蔭学園34名、⑦聖光学院32名、⑧開智30名、⑨桐光学園29名、⑩東京学芸大学付属26名、⑮鴎友学園22名、⑮駒場東邦22名

上智大学:①国際基督教大学32名、②桐蔭学園23名、③栄東18名、④豊島岡女子学園15名、⑤県立大宮14名、⑤都立国際14名、⑤淑徳与野14名、⑤東洋英和学院14名、⑤カリタス女子14名、⑩桐光学園13名、⑪成蹊12名、⑯国学院久我山10名

上位30 校ぐらいで、難関私立3大学に顔を出しているのは、国立公立ともに0で、私立の桐蔭学園、桐光学園、女子学院、市川、豊島岡女子学園、頌栄女子学院の6校のみと、私立が圧倒的に強い。男子校は0です。3大学を比較すると、早稲田大学が公立数が14校と多いのに反して、慶応大学と上智大学は公立が少ない分だけ私立が多くなっていますが、女子校が多いことが共通しています。筆者が45年前に慶応大学を受験したとき、面接会場で周りに女子生徒がいっぱいいたことが思い出されます。上智大学がほかの2大学と違うのは、男子校が0で、中学のない高校単独校(国際基督教大付属,錦城、平塚学園)が3校もあることでしょうか。上智大学の場合は推薦による入学者が多いことが影響しているようです。

◎次に東京理科大とMARCHの各大学の場合はどうでしょう。

詳しいランキングは割愛しますが、2番手校からの入学者が多いといえます。

東京理科大:(①開智34名、②城北25名、③桐蔭学園22名)、明治大学(①桐蔭学園43名、②山手学院29名、③淑徳与野27名)、青山学院(①桐蔭学園36名、②山手学院26名、③桐光学園24名)、立教大学(①川越女子36名、②市立浦和31名、③薬園台28名)、中央大学(①桐蔭学園33名、川越東28名、錦城25名)、法政大学(①錦城26名、川越東20名、幕張総合20名)。

傾向としては、1.国立大学付属がなく、2.私立では御三家やその次のクラスの難関進学校はなく、上位から中堅校、および生徒数が多い学校が目につきます。3.公立高校が多数登場してくることも特記できます。

文責 高木代表


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大学受験へ向けて第3回:志望校選定に当って(2009年8月)
志望校選びには苦労しているのではありませんか。

最近の大学入試は多様性を極め、どのように志望校志望学部を絞っていいのか迷うものです。今回は、志望校選びの一般的な手順を考えてみたいと思います。ただし、志望校志望学部を選ぶのは君たち自身です。最終的には、各人各様の選び方を考え抜いてください。
ブランド名だけで大学を選ぶことは避けたい。早稲田大学と名がつけば、どの学部でもかまわないといったたぐいの選び方は、「キャリアデザイン」(社会人として生きるすべ)を考えると邪道でしょう。まず、第一に、自分が将来何になりたいのか考えてみることが必要です。「そんなこといまから分かるわけがないでしょう」、という声が聞こえてきます。だったら、現在の自分の興味や関心から手がかりを得てみてはどうでしょう。それもないという人は、ここから先を読んでも役に立ちません。読書(漫画ではありません)でもしてください。

①まずは、自分の興味・関心のある学部・学科を調べる。全国700大学には18学部系統、67の分野があります。文学部系統、外国語学部系統、人文・教養・人間科学部系統、教育・教員養成系統、法学部系統、経済・経営・商学部系統、社会・社会福祉学部系統、国際関係学部系統、理学部系統、工学部系統、農・獣医畜産・水産学部系統、医学部系統、歯学部系統、薬学部系統、看護・医療・栄養学部系統、家政・生活科学部系統、体育・健康科学部系統、芸術学部系統。この中から選ぶことになります。少しずつ絞り込みましょう。

②そのうえでA国公立か私立か、B大学の所在地は、C入試科目・配点は、D難易度は、E校風・伝統はなど、いろいろ受験情報を集めながら志望校となる候補を、最初は10校ほど、最終的には4校から5校ほどに絞り込んでいきます。志望校選びは、早め早めにするほうが余裕をもって受験に臨めます。

③それでは、どのレベルの大学を受験することになるのでしょうか。Aチャレンジ校(合格可能性40%~50%)が1校から2校、B実力相応校(合格可能性50%~70%)が2校程度、C安全圏の大学(いわゆる滑り止め、合格可能性70%~90%)が1校というのが一般的です。実際の調査でも、おおよそそのような結果が出ています。なかには、1校に絞り込むつわものもいますが、それは例外的なケースです。模擬試験は、合格の可能性を調べるものです。三大予備校のものであれば、1社のものでいいですから、継続して実力の推移を見ていくのが賢い受け方です。いくつも受験するのは避けたほうがいい。時間とお金の無駄になりかねません。

④入試の形態については、このシリーズでも継続して扱ってきました。大学入試の本道は一般入試です。指定校推薦や公募推薦、AO入試などを利用する場合は、その実態をよく調べ、納得のいく学校・学部を慎重に選んでください。

⑤茗渓予備校は、受験直前まで受験指導を続けています。多くの予備校のように、1月で指導を終えるということはしません。かりに3月に入学試験がある場合は、基本的にその試験日の直前まで指導を続けます。とくに現役生は、入試直前まで実力が伸びていくものです。私の経験でも、一橋大学の後期試験にいままで数名の合格生を送り出してきました(残念ながら後期日程の募集数が減少してきましたが)。直前まで受験生と付き合うことで、数多くの逆転劇を生み出してきました。

文責 高木代表


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大学受験に向けて第2回:AO入試は推薦入試とどこが違うか(2009年7月)
大きな違いは、AO入試では学校長の推薦が必要ない場合が主という点です。高校が推薦する受験生を選抜する入試に対して、大学主導型の入試形態といっていいでしょう。

少子化で生徒を青田刈りするレベルの大学を考えてはいない皆さんには、決して「安直(A)、お手軽(O)入試」ではありません。ここで、この二つの入試形態の違いを表にしてみましょう。
  推薦入試 AO入試



  • 学校長の推薦が主(自己推薦もあり)
  • 専願が主(併願もあり)
  • 調査書の評定平均値の基準ありが主
  • 現役に限るが主
  • 自己推薦が主
  • 専願が主
  • 調査書の評定平均値の基準なしが主
  • 現浪制限なしが主



  • 試験日は1日タイプが多い
  • 書類審査(推薦書、志望理由書)+小論文+面接が主
  • 選考は長期間型が多い
  • 書類審査(自己推薦書、志望理由書、活動報告書)+面接が主

因みに、2008年入試をタイプ別に入学者数をみてみると(文科省調査)…

国立大学(82大学377学部):
  • 一般入試84.4%
  • 推薦入試12.3%
  • AO入試2.5%

その他私立大学(567大学1542学部)
  • 一般入試48.6%
  • 推薦入試41.2%
  • AO入試9.6%
  • その他
国立大学は公募制がほとんどですが、私立の場合は、公募制、指定校制(ほぼ全入)、自己推薦の総計になっています。推薦入試実施大学は年々増え続けています。

ここで、最近決まった慶応大学の2010 年度のAO入試の要綱をのぞいてみます。

●慶応大学文学部の例
冒頭でふれた「調査書」で学力をチェックするパターンです。
  • 指定校推薦を実施しない
  • 調査書(4.3 以上)
  • 自己推薦書
  • 出願期間11 月2 日~11 月6 日
「総合考査Ⅰ」諸論文形式を採り、各種資料に対する理解力、文章構成・表現力、分析力等を総合的な視点から考査します。120分。11月22日。

「総合考査Ⅱ」与えられたテーマについて自由に記述してください。それに基づいて評価します。時間60分。11月22 日。合格発表は11月27日。120名(合格数) 。倍率今春2.57 倍。

文学部で約 800 名の合格を出していますが、その中にはこの制度を利用した120 名以外に、5つの付属校からの推薦、外国人留学生入学試験、帰国生入試、一般入試による合格者などがいます。それにしても、かなりの数であることには変わりません。

●慶応大学法学部の例
2010 年度FIT入試(AO)入試:
  • 第一次選考:「志望者調書」…これまでの足跡。「自己推薦書」…実績を示しいかに魅力的な人材であるかをアッピールする。「志望理由書」…2000 字以内。「調査書」…ただし、文学部のような基準となる評定平均は明示されていません。英検やTOEIC などの成績も有効。最近は難関大学では客観的な成績も検討材料にするケースが増えています。
  • 第二次選考:①1時間程度の模擬講義を行い、講義後に論述形式の試験を行います。試験では法律学ないしは政治学の修得に必要な理解力、考察力、表現力などを評価します。②6名程度のグループに分かれ、与えられたテーマについて討論を行います。理解力や表現力、説得力などを考査します。③個別に自己プレゼンテーションを行ってもらい、創造力、構成力、表現力、説得力などを評価します。
30名以内の合格者を選抜。出願:8月28日から9月2日。第一次選考:9 月15日。第2次選考:9 月20日。法律学科:9月21日。政治学科合格発表:9 月26日。

全般に、難関大学のAO入試の合格者は少ない。手間暇かけて募集するだけに、なんとか将来伸びる生徒を真剣に求めている姿勢が感じられます。上の例は、学力論文重視の大学ですが、筑波大学のように、自己推薦タイプの大学もあります。AOは千差万別、具体的に調べるほかありません。

文責 高木代表


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大学受験に向けて第1回(2009年6月)
先日、5月17日の日曜日に、吉祥寺校舎と府中校舎で2009 年度最初の「大学入試説明会」を行いました。第1部では、①大学入試の現状と仕組み、②2009年度入試概況および茗渓の実績を高木代表から報告し、第 2 部では「茗渓予備校の受験指導の実際」に関して、英語は佐藤英語科主任、数学は大石数学主任がそれぞれ詳細に説明させていただきました。今後も、同様の説明会を時期に応じて、テーマを絞り込みながら継続して実施することにしております。今回は、二つの校舎を合わせて50 名を超える方々に参加いただき、大いに盛り上がりました。
「KIRI」紙上においても、継続して受験情報をお伝えし、今後の学習の参考にしていただくことにしました。今回は、第1回の説明会で報告した内容を踏まえ、2010 年度の入試に向けて注意しておく点をご説明しておきたいと存じます。

①合格者の割合
大学入試は、2008 年度の文部科学省の調査によれば、一般入試合格者数 55.9%、推薦入試合格者数35.4%、AO 入試8.0%となっています。大まかには、この 3 つの類型が日本の入試の実態といえるでしょう。趨勢としては、少子化に伴い大学全入時代になったといわれますが、定員を埋められない大学が増える一方で、難関校(マーチ以上)は相変わらず難しいと思っておいたほうがいいでしょう。ちなみに、今年の茗渓の実績は、MARCHGが49 名、早慶上理が46名でした。

②センター試験
センター試験についてセンター試験は国公立を志望する場合は必ず受験しなければなりません。志望校を絞り込む段階で、センターの点数と本試験の点数の配分を必ず調べておきましょう。たとえば、東大の場合、総点 900 点を 110点に換算してしまいます。本試験重視型の代表です。センター試験は多くが 5 教科 7 科目となっています ので、国公立を第一志望とするならば、高 1 高 2 の段階で受験勉強をスタートさせないと手遅れになります。

近年、私立がセンター試験を利用するとことが多くなりました。手元にある津田塾大学の来年の入試試験一覧を見ると、試験日の早い順に、(1)AO 方式入試、(2)特別入試(帰国生等)、(3)社会人入試、(4)推薦入試(指定校制と公募制)、(5)一般入試C 方式(センター試験のみ)、(6)一般入試A 方式(大学独自入試)、(7)一般入試B 方式(センター試験+個別学力試験)と、実に様々な入試形態があります。一般的に、センター試験だけでの合格は相当高い実力が要求されます。この入試形態で滑り止めは虫がよすぎるかもしれません。大学側にとって、あの手この手で優秀な生徒を集めようとする結果が、こうした入試形態の多様化を生み出しています。ちなみに、茗渓予備校でセンター利用での合格数は極めて少ない。みんな高い私立でセンターを利用する傾向にあります。

③国公立の「個別試験」の内容
センター試験のところでも触れましたように、学習する科目数が多いので早目の学習が必要になります。茗渓予備校では数1A、数2B はそれぞれ、高 1 高2 段階で7 割以上、英語は高校2 年の間に7 割以上の得点力をつけるように 受験指導を行っています。ちなみに、茗渓の今年の国立の実績は17 名でした。

④私立大の一般入試(本試験)の傾向
ほとんどの私立が 3 科受験。ますます2極化が進んでいます。今年は、東京よりも神奈川・千葉・埼玉の高校で MARCH の合格数が多くなっています。また複線入試といって、同じ学部試験を教科数や時期・方式を変えて実施したり、全学部入試と個別学部入試の日程を変えたり、あの手この手の入試形態が存在します。次回は、推薦入試とAO入試を取り上げます。