安田教育研究所 安田理先生(2007年3月折込掲載)
もう「小皇帝」時代は終わり
私立中高一貫校の先生と話をしていると、最近よくこんな話が出ます。
「オリエンテーション合宿に連れて行ったら、ご飯茶碗、味噌汁椀、箸をちゃんと並べられない」「掃除させようにも、雑巾を絞れない、箒の使い方を知らない」「ミシンを動かさせたらたちまち怪我をした」
…こんなことのオンパレードです。
これまで1分1秒が貴重だっただけに、「勉強だけしていればいいわよ。あとはお母さんがすべてやってあげる」と、起床から食事、風呂、就寝までの時間管理は無論、着替えの準備から部屋の掃除まで、なんでも手を出して効率よく進めてきたことと思います。
「先を歩いてレールを敷き、子どもがその上を素直に歩いていく」という生活。子どもはまるで「小皇帝」だったのではないでしょうか。実は現在、こうした親子関係は、大学でも、就職活動でも全く同じ形で現れています。
そうならないために、時間が出来たいま、まず家のいろんな用事を子どもにさせてください。手を出すのをガマンして、お子さんに自分でやらせてください。「知識はあっても知恵はない」―いまどきの子のそうした欠点を少しでも克服させてあげてほしいのです。体を動かし、手先の不器用さを克服できていれば、中学校に進んでから怪我をすることも格段に少なくなります。知恵は、勉強面での発想力の基になります。
そうしないと、大切なお子さんは、自分では何もしない、何もできない厄介な「大皇帝」になってしまいます。