安田教育研究所 平松享先生(2007年5月折込掲載)
都立高校の進学実績が伸びています。都では5年ほど前から、「進学指導重点校」7校を指定して、難関大学への進学に力を入れ始めました。その成果が、昨年、今年と目立つようになりました。
今年、日比谷高校から28名の東大合格者(現役19名、浪人9名)がでました。西、国立、八王子東の3校からも、それぞれ16名の合格者がありました。下のグラフは、その4校から、東大、京大、東工大、一橋大と国公立大学医学部へ合格した人数を「重点校」の指定前後で比べたもの。棒グラフは左が現役、右が浪人で、折れ線グラフは現役合格者の割合です。指定後の学年(05年度)から、現役合格者が増加していることが分かります。05年度の現役生は、02年度に高校へ入学しました。学力低下の元凶としてヤリ玉にあげられた新課程は、その年度の小中学生からの実施で、この生徒たちには無関係のようですが、実は「移行措置」という助走期間が2年間あって、05年度現役生の場合、中2から新課程の内容で授業を受けていました。中3からは、学校5日制の完全実施で授業時間が大幅に減らされ、高校では1年から新課程のレールに乗った3年間を過ごしました。内容を整理して学習の効率化を図り、進度をアップして受験準備の期間を確保できる中高一貫校と異なり、「公立中学⇒都立高校」のルートから難関大学へ進学するのは、この学年の生徒には、そもそも無理な話でした。ところが、結果は逆でした。
なぜでしょう。この学年の先生や保護者、生徒本人から聞いた話は、驚くほど単純で似通っていました。それは「大変だと思ったので、その分頑張ろうと思った」というものです。危機に出会うと、人はこれまで以上に力を発揮することがあります。困難に打ち勝とうとする、心の力が自然に生まれるのでしょうか。
それに引きかえ一貫校の生徒には、油断があるように見えます。教材や授業がどんなにすばらしくても、知識をモノにできるかどうかはキミの心がけひとつ。大きな危機が迫っていることを忘れないでください。
平松享(ひらまつ・すすむ)
東京都出身。東京教育大学文学部卒業。1975年
イデウスホームスクール設立。塾の先生の勉強会「進路指導研究会」代表幹事。安田教育研究所副代表。都「新しいタイプの高校における成果検証検討委員会」委員。