ChatGPTによると、法性(modality)は意味論的(semantics)なカテゴリで、これを表すのに英語では2種類がある。①一つが法助動詞(modal verbs)で、これは統語的分類(syntax)で、要は本動詞に助動詞を追記することで法性を表す。②もう一つが法(mood、仮定法=subjunctive mood)で、これは英語ではもっぱら形態的(morphology)に、つまり本動詞の語形変化によって法性を表す(ただし現代英語では例外有り)。どっちも意味的に表す対象は同じ「法性」とのことです。しかし語源的には、①moodは古英語のmōd (“mind, emotion, inner state”)、さらにはGermanicのmod-から、②modal/modalityは仏語のmodalité、さらにはラテン語のmodus (“manner, measure, way, rule”)、modusから、とのことで別物だそうです。
遅くなりましたが、(1)mood「法」(ラテン語)と(2)mood「気分」(古英語)についてのご質問にお答えします。ご指摘のように、両者に語源的繋がりはありません。(1)がラテン語から英文法に入った際、「え?『法』って話者の気持ちを表すもんだよね。だったら俺たち古英語にも同じような単語があるよ!」となったようです。そこで(1)が(2)の意味で使われるようになったとか…。それがだいたい1450年代のことのようです。以来600年近く、語源的なことはどれほどの人が理解しているかは分かりませんが、「気分」の意味で「法」が使われてきたようです。そもそもラテン語の文法用語というのは、いろいろ調べてみると、実はかなり「テキトー」に決められたようです。例えばvoiceは「態」ですが、いくら調べても、どうして「声」が「態」になるのか不明です。古代ヘブライ語では、「態」を「ビニヤン」と言いますが、これは「建物」の意味で、こちらも無関係。まあSとOが逆転するわけですから、「構造が180度変化する」ということで、「建物」と繋がらないでもありませんが…。
英語の先生で「『法』ってのは『気分』なんだ!」と教える先生がいらっしゃいますが、それはそれでこの600年の歴史を踏まえて話されているわけです。一言「断り」を入れればよかったのですが、「JUKEN」の記事も字数制限から毎回削りまくっていますので、こんな長々とした話は挿入するスペースがありませんでした。以後気を付けるようにします。
執筆:鈴木先生
