前回からの続き)

英検の過去問集にはCDが付いていますから、これを使用してリスニング学習を行います。英検は1級から5級までレベル設定もわかりやすくなっていますので、読解や文法のように段階的・計画的に学習を進めて行くことが可能です。

リスニング問題は、普通に音声を聞いてコツコツ解いていくというだけでも良いのですが、私の授業ではディクティション(dictation)という学習法を指導しています。ディクティションとは、読み上げられた外国語の文章や単語を書き取ることです。

手順は、まず最初にリスニングのCD音声を聞いて普通に問題実施します。次いで自己採点した後、間違えた問題をいくつかピックアップして再びCD音声を聞き、その内容を全て一字一句正確に英語で書き出します。聞き取れない箇所があったら巻き戻して何度もしつこく聞き直します。何回聞いてもどうしてもわからない場所は、①空欄にするか、あるいは②耳に聞こえた音声だけでもカタカナで書きとどめておきます。そうして最後まで行ったら、今度は書き取ったものを放送原稿と照らし合わせて自分が一体どこを聞き取れていなかったかを確認します。このようにして自分が聞き取りを苦手とする発音をしらみつぶしに洗い出していきます。最後に、放送原稿を見つつもう一度CD音声を聞きなおします。

CDプレイヤーを使用する代わりに、音声をパソコンに取り込んで、VLCという無料アプリを使用するとディクティションが容易にできます。

VLC

VLC

このアプリのABループという機能を利用すると、任意の2時点間を繰り返し再生してくれるので、例えば放送内容を1文ずつや20秒単位で区切って再生を繰り返し、その箇所のディクティションができたら次に進む、ということが可能です。(手動で巻き戻す手間が省ける。)やり方は簡単で、ABループのボタンをクリックしてループ開始時点を指定し、しばらく経ったらもう一度クリックしてループ終了時点を指定するだけ(もう一度クリックするとクリアになります)。(Macの場合「メニュー>再生>2点間(A-B)ループ」にあります;Fキーに登録しておくと便利です。)

リスニングは、聞き取りというハードルがある分、放送内容自体は読解問題に比べると比較的容易になっています。だから、リスニング問題を間違えるとしたら、それは既知の単語の聞き取りに失敗していることが原因なのがほとんどです。生徒がよく聞き取れない単語の代表に「it」があります。中1の一学期に学習する基本単語ですから、誰もがその意味も、綴りも、読み方も知っているはずです。しかし、聞き取りがなかなか難しい。短い単語なので発音が前後の単語と膠着してしまっているためです。例えば「... did it.」は「ディド・イット」と区切って発音されることはまずなく、ほぼ「ディディッ」という感じに聞こえます。「実際の発話においてはこのように聞こえるのだな」ということがわかったら、以後、同じような音に再び遭遇したら、正確に聞き取れるようになれることを目指します。

また、仮に自分の耳では音声を聞き取れなくとも、前後の流れから、文法知識を頼りに脳内補完できるようにしていきます。例えば「It did....」の「It」が聞き取れなくても、英語の文は多くの場合主語から始まるということがわかっていて、それで「イ...」と微妙にでも聞こえていたのであれば、ああ、ここには「It」が入っていたのであろうと察しがつけられます。

あとは単語暗記よろしく継続して定期的に実施していくだけです。私はアメリカ留学する際、このディクティション学習を行いました。TOEFLやSAT受験対策というのもありましたが、それ以前に英語が聞き取れなければ大学の授業をまったく聞き取れないことになるわけで死活問題ですから、それこそ必死でやったものです。それくらい必死にやれば何でも上達は早いのですが、日本の受験生の場合、他にもやらなければならない科目などもたくさんありますので、なかなか大変であるかとは思われます。


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