前回からの続き

「五文型批判」の一つに「英文には例外が多く5パターンに全てを分類するのは不可能だし不毛だ」というものがあります。たしかに中学から高1にかけて多くの学校で行われる「五文型」の授業において、既習文法事項を用いて書かれた様々な文を第1文型から第5文型の5パターンに分類するという演習は、実際によく行われてはいますが...:

次の各文の下線部が主語ならS、動詞ならV、目的語ならO、補語ならC、修飾語ならMと答え、さらに文型を答えなさい。

(1)①He usually leaves for school at seven. 第〔  〕文型...

次の(1)〜(5)と同じ文型の文をア〜オから1つずつ選びなさい。

(1)I run in the park every morning....

高校リード問題集B(pp. 8-9)


しかし、五文型の授業においてこの分類作業自体は特に重要なものではありません。この類の演習はほぼ学校で習ったことをしっかり覚えているかどうかを単に確認する目的のもので、「五文型」の導入授業直後の定期試験以外においてはお目にかかることは滅多にありません。(高校入試や大学入試、模試、英語検定試験で出題されることは稀です。)

より大事なのは、以下の5点です(学校や教師によりどこまで扱うかは異なります):
  1. 英文解釈の基礎。
  2. SVOOとSVO+前置詞句への書き換え(「I gave him a present.」⇔「I gave a present to him.」など)。
  3. SVOCの各種表現(「You make me happy.」「I left the water running.」など)。
  4. be動詞以外を用いるSVCの各種表現(「He seems sick.」「He looks fine.」など)
  5. SVCとSVOの違い(「He sounds happy.」⇔「He sounded the bell.」など)。
  6. 分詞の叙述用法のSVC(「He sat surrounded by his students.」など)。
特に大事なのは英文解釈の基礎を学ぶことでしょうか。大学入試レベル以上の長く複雑な文の意味を正確に把握するには、その文の構造をS(主語)、V(動詞)、O(目的語)、C(補語)、M(修飾語)の成分へと分解・整理することが大きな助けになります。基本文型から外れる場合は、どの特殊構文(倒置、強調、省略など)が用いられているかを確認していきます。こうした作業を一般に「英文解釈」と言いますが、大事なのは第1から第5のどの文型パターンに当てはまるかではなく、あくまでその文の中において、どの部分がどういった役割を果たしているかを捉えて、文意把握の助けにすることです。

長く複雑な英文を読む際に絶対にやってはいけないタブーは、その文中で使用されている単語を個々にピックアップして和訳し、それらを頭の中で日本語として自然に聞こえるようにうまく組み合わせて意味を拙速に取ってしまうことです。これをやってしまうと、元の文の意味と大きくかけ離れたり、時には真逆の意味になってしまうこともままあります。どうしても文構造が取れない場合の最終手段としてやるのは仕方がありませんが、そうでない限りは、しっかりとS、V、O、Cの文構造を把握した上で文意を読み取ることが肝要です。

また、検定外教科書を用いる中高一貫校や進学塾でSVOO文やSVOC文が最初に授業で導入される際には、S、V他の用語の説明も同時に教えてしまいますが(公立のように後回しにしません)、この段階では重要なのは文の各部分のS、V、O、Cへの割り振り方よりも、あくまでSVOOやSVOCの文の形式自体(「I gave him a present.」や「You make me happy.」などの文)をマスターすることです。

日本の英語教育では、動詞getやmakeなどを間接目的語や目的格補語と共に用いた文は、一纏めにして「SVOOの文」や「SVOCの文」として学習することが多ですが、海外の参考書、例えば前回の投稿で触れたCambridgeのGrammar in Useなどにおいては、これらの動詞はゆるくまとめられてはいますが、基本的には個々に、バラバラに学習する形になっています。ただし、まとめ方が違うというだけで、学習する内容自体に大きな違いはありませんし、OやCといった用語も普通に用いられています。この点では、日本の英文法教育は文法事項を実に効率よく整理しているので、むしろなかなかに優れているのではないかと私は思います。

続く


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